幻獣戦争 1章 1-3 嵐を呼ぶ天才⑤
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序章 1章 1-3 嵐を呼ぶ天才⑤
食堂で昼食を終えた俺達は再び格納庫へ戻り、神代博士を探す。博士達は格納庫搬入口付近に居たようで、塗装が施されていない戦車形態の10式戦略機と、スタッフに指示を送る博士の背中が遠くからでもわかった。俺は忙しそうな博士を見つつその後ろにあるテスト機に目を向ける。本来の10式より多少大型化しているようだが、90式ほど大型ではない。しかし、移送車両に乗せていないのは何故だ?
「博士! 準備の方は大丈夫ですか?」
隣にいる一樹が博士の背中に声をかける。博士はこちらに気づき顔を向けた。
「ええ、もうちょっと待って頂戴。今最終チェックと準備しているところよ」
博士は手短に答え、別のところに指示をするのかそのまま去っていった。
「あれだな、まさに作り立てな感じだな」
「10式の試験やっていた頃を思い出しますよね」
俺の言葉に一樹はそう懐かしむ。
「そうだな」
俺にとってその思い出はまだ心を抉る要因でしかなかった。しばらく時間を持て余していると、再び博士が帰ってきた。
「おまたせ。早速だけど乗って頂戴」
「わかった。しかし、どうするんだ?」
博士はそう言って新型の10式を指すが、俺は計画を訊ねるつもりで聞いた。
「これから大矢野演習場に行くわ」
「なるほど、乗って持って行けということですか」
博士の意図を察してか、予想外の回答に一樹は苦笑いを浮かべる。これはあれか、運ぶついでに操縦に慣れろという事か。中々に鬼畜なこと言う女傑だな……
「そうよ、一石二鳥じゃない?」
子供が妙案を思いついて褒めて欲しいような笑みを浮かべ、博士は俺達に訊き返してきた。
「そうだな。さすが天才だ」
「兵装はこっちで運搬するから現地で合流しましょう」
こちらの思いを察することなく告げると、脱兎のごとく博士は消えていった。俺達はため息をつき新型の10式に乗り込んだ。
結局俺達は基地航空管制に連絡を取り人型へ形態を変え、空路で大矢野演習場まで向かうことにした。そのまま公道を走ることも考えたが、道路を破壊してしまう可能性が高い。この階級になって、道路破壊というくだらない事案で激怒状態の本部長に呼び出され説教をくらうのは避けたい……あの人説教は長いからな。それに、道路を使う場合別組織への連絡も必要なる。それらを考えると空路が無難だという意見で一樹と一致。俺達は整備区画から滑走路に移動して大矢野演習場に出撃した。
「しかし、空路で行くと僕らの方が先につきそうですね」
「そうだな、早めについて休ませてもらおう」
道すがら一樹が無線越しに語り掛けてきた。俺は無線越しに答えモニターの計器類をチェックする。
「なんだ。こいつはまだ天照に繋いでいないのか」
俺は天気の確認をしながら呟く。演習場付近は晴れのようだ。
天照とは正式には全地球型広域戦略情報共有管制システムと呼ぶ。GPSを大幅に改造して開発されたもので、衛星に精霊が宿っており戦況や地理、戦域情報を軍全体レベルで共有することが出来るシステムだ。
開発したのは国連ということになっているが、実際の所は日本が改造を引き受けており、八百万の神々が宿っているため天照という名が使われている。
「そうですね。現地で繋ぐのではないでしょうか?」
「そうか……一樹、この前の合志で発生した幻獣の浄化作業は終わっているのか?」
相槌する一樹に俺はそう確認する。幻獣が現れた地域は厳密に言えば幻獣の残滓で汚染されている。そのままの環境でも生活はできるが、時間を置くと幻獣の発生源となる。幻獣に汚染された地域は、別名悪しき夢の由来通り悪夢に苛まれる地域と変貌する。放置しておくと幻覚や幻聴に侵された人間が発狂して自殺するなどの狂乱がおきて、最終的にそれらを糧として再び幻獣が出現する。しかも、残滓と化した幻獣は発生源よりも離れた場所に移動することもあるため実に厄介なのである。
そのため戦闘終了後、霊的な能力持った俺達とは違う封魔部隊と呼ばれる専門の部隊が、祭壇を作り祝詞をささげ祈祷。精霊の力を借りて浄化するのだ。
次回に続く
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