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幻獣戦争 1章 1-2 不在の代償⑨

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序章 1章 1-2 不在の代償⑨

 舞人と別れた後、俺は作戦本部長室を訪れていた。田代作戦本部長に進捗状況を報告するためだ。俺達はお互いに応接用のソファに腰を掛け、俺は本部長の言葉を待っていた。
「しかし、随分と無茶をしたもんだな。関西と関東から物資の供出とは、奴さん達渋らなかったかね?」
 本部長は応接用テーブルに広げられている資料を確認しながら対面に座る俺に問う。

「そうでもありません。少し揺さぶっただけです。それにこちらの要求している量はつまるところ奴らが持っている総量の3割程度です。向こうの生産拠点の多さからすれば、ひと月もすれば元通りですからね」
「それはそうだが……まあ、野暮な話だな。しかし、内閣は本当に学度動員を議会に提出する気だったとはな。正直あきれて何も言えんよ」
 あっけらかんと答える俺に本部長はため息交じりにぼやく。

「ええ、まったく。学生を煽って動員しても碌なことにはなりません。未来ある若者の将来を優先して奪うなど正気の沙汰じゃない」
「そうだな。それに、そんな事をしてしまうと君という死神がやってきてしまうからなぁ」
「私は死神のように手を下しませんよ。ただ、相手が勝手に死ぬだけです」
 冗談交じりに言う本部長に対して俺はしたり顔で答える。
「はっはっはっは。怖い怖い」
「ところで比良坂君達の機体についてだが……新型の神霊機関とやらは大丈夫なのかね?」
 本部長は軽く笑い咳払いをすると話題を変え、改めて俺に質問する。

「はい。報告によれば封魔鉄に精霊達の死骸、『メタンハイドレート』を加えた結果、封魔鉄が新しい霊力生み出すエネルギー物質に変化したそうです」
「ふうむ。にわかには信じられないが」
 俺の報告を聞きながら顎に手をやり、本部長は呟き該当資料を手にとり目を通す。
「報告では新たな封魔鉄は、ほぼ無尽蔵にエネルギーを放射し続けるとのことです。これを神霊機関の新たな動力にすることでパイロットに負担をかけた初期稼働をより低減させ、加えて機体の大幅な性能向上が見込めます」
「それを彼らが乗る10式に搭載するわけか」
 本部長は俺の報告に納得して頷き資料の頁をめくる。

「はい。その新型神霊機関の先行タイプを搭載させ、得られたデータを基に最終的には自衛軍全体に配備します。それからもう一つ、変質した封魔鉄は従来の封魔鉄より強度が増し、幻獣に対して大幅な攻撃力を備えていることが確認されています」
「試したのかね?」
 そう補足すると、本部長は資料から目を外して俺を見て問い返してきた。
「はい。比良坂陸将が試してくれました」
「――そうか。あの74式は新型弾頭の試射試験前の車両だったな」
 俺の回答に、忘れていたと、思い出して本部長は呟く。
「彼が祝詞を加えたのも増加の一因でしょうが、それを差し引いてもかなりの威力になっています」
「そうか。しかし、うちの技術部はえらく優秀――神代博士達か」
 俺の言葉に本部長は驚くそぶりを見せるが、すぐに天才が居たことに気づいたようだ。

「はい。神代姉妹、創造の神を宿らせた彼女達をやる気にさせるには苦労しましたよ」
「最近の人事異動は全部そのせいかね?」
 うんざりしている俺の反応を見て、本部長は気になっていたのかそう質問する。
「はい。彼女達の無茶ぶりには骨が折れました」
「その成果が10式と空母加賀の改造か」
 本当にそうだ……これか先もあの天才達の好き勝手にさせなければいけない事実があるだけで、俺の胃に穴が空きそうになる。そんな俺を気にせず再び報告資料に目を戻して本部長は呟く。

「はい。新型神霊機関の完成に目途が立ったことにより、超大型の戦闘母艦の実現が可能になりました」
「だが間に合うかね? 四国攻略までに」
 抜かりはないかね? と本部長は問う。
「それはこれからの方針次第でしょうが、恐らく大丈夫かと」
「そうか……ここまでやって勝てなかったら人類はいよいよ終わりかもしれんな」
 予想の範疇でしかありませんが、と、付け加え俺は答える。あいつの方針次第だからこればかりは確実な事は言えない。本部長は難しい顔をして、読み終えた資料を応接用テーブルに置いた。

「必ず勝ちます。舞人ならやってくれます。それに新型の神霊機関と新封魔鉄。この情報を欧州に流してやればまだしばらく欧州戦線は持つでしょう」
「連邦と連合には渡さないのかね?」
「今これを彼らに渡したら総力をかけて全てを奪いに来るでしょうな」
 本部長の疑問に俺はあっさりと返答する。
「それだけひっ迫しているという事か……」
「自国の領土が殆ど無くなってしまっている国と、自国が核の放射線で汚染されている国です。何をしでかすかは容易に想像できる」
 本部長の言葉に俺は敢えて私見を述べた。両国共に最悪の状態に陥っているのは、誰がみても明らかで、その状況で起死回生の手を差し伸べれば奪いに来るのは必然だ。

次回に続く

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