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幻獣戦争 1章 1-3 嵐を呼ぶ天才⑥

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序章 1章 1-3 嵐を呼ぶ天才⑥

「それが……まだ手が回っていないそうです。そうそう、貴方が撃破した幻獣が居た地域は浄化の必要がなかったみたいです」
「俺が祝詞を加えて魔弾にしたからか」
 バツが悪そうに答える一樹に俺は仮説を述べる。
「使われた弾頭が新型で、魔弾の威力を格段に上昇させてしまったのではないのか。と封魔部隊はそう分析しているようです」
「なるほどな。それで手が回っていない地域というのは麗奈の方か?」
 一樹の情報に俺は頷き訊き返す。

「そうです。熊本県中心部に近かったせいで被害が酷く、祈祷より復旧を優先して欲しいと県からの要請で一旦おかれている状況です」
「殲滅したからといって放置していても良いわけじゃないんだがな」
 一樹の回答に俺はそうボヤく。何となく嫌な予感がするな……
「報告されている要塞の観測レベルだと、周辺の幻獣警戒レベルは3との事です」
「そうか。まだ安全という事か……その情報に期待しておこう」
 察して報告する一樹に俺は一言付け加え頷く。

 軽い雑談をしている間に大矢野演習場が見えてきた。演習場に着き管理棟傍の野戦演習場に俺達は着陸。管理部隊に問い合わせする。
 予想通り神代博士達がおらず、俺達は合流するまで休憩することにした。大矢野演習場は言葉の通り演習場で、他の基地と変わらない作りではあるが、管理部隊が隊務を行う管理棟。射撃演習を行う平地地帯の野戦演習場と、教育隊が自活演習で利用する森林地帯の自活演習場が区画分けされている。管理棟は基地の中央部にありその東側区画が野戦演習場で、中央部北西側区画の森林地帯が自活演習場となっている。

 程なくして博士達を乗せた車両群が着いたようで、続々と野戦演習場に車両が侵入してきた。こちらが既にいる事に気づいているのか、俺達の機体の傍に横付けしていく車両に乗るスタッフ達は迅速だった。博士が無茶を言ったのか、演習場を管理している部隊も準備に駆り出されているのが機体のコックピットモニター越しでもわかる。しばらくして機体に通信コンタクトが送られてきた。

 受諾し回線を開くと博士がコックピットモニターの一部に表示される。
「お待たせ。こっちに機体をもってきてちょうだい」
 準備を終えたのか、博士がそう指示してきた。俺達は、野戦演習場に急遽設営された仮設ベースのテント傍に横づけてされている運搬トレーラー近くに機体を待機。機体から降りて博士達の居るテントへ出向いた。
「てっきり後ろをついてくると思っていたわ」
 テントに来て早々博士は俺達にそうのたまう。

「ははっ、さすがに道路破壊しながらここまでくるわけには行きませんよ」
「失礼ね、大丈夫なように設計してるわよ」
 俺の代わりに隣の一樹が笑いながら答えるが、博士はそう言ってぶーたれる。
「知っているか? 公道を走るにはナンバープレートが必要なんだぞ。あんたの新型10式にナンバープレートはついているのか?」
「何よそのくらい! もみ消せばいいじゃない!」
 わざとらしく待機している新型10式を指さして言う俺に、博士はそうまくしたてさらに拗ねるそぶりを見せる。

「おい、あんたはそれで良いかもしれんが、もみ消す側はたまったもんじゃないんだぞ。俺はあんたらの代わりに、『比良坂君! 君はその階級になって道路交通法も守れないのかね?』とか、田代さんに嫌味を言われて、ぼろくそに説教されたくないね」
 俺は肩をすくませ本部長のモノマネをしてみせた。
「あははは、本部長ならそう言いそうですね」
 俺のモノマネが面白かったのか一樹は笑いながら同意する。
「――その様子なら試験を始めても大丈夫そうね」
 何かを気にしていたのか、俺の反応に含むように笑みを浮かべ博士は言う。

「ああ。俺達はいつでも良いぞ」
「そういえば、新型の呼称は決まっているのですか?」
「まだよ。何か案があるかしら?」
 気になっていたのか一樹が訊くと、博士は問い返して俺を見る。
「……ミカヅチでどうだ?」
 少し考え俺はそう提案した。74式の呼称はカグツチ、90式はミヅチ、10式はノヅチと来ているからな。
「オッケー。それを採用しましょう」
 博士はあっさりと同意する。
「では、名前が決まったところで試験は何をするのですか?」
「兵装一式よ。今から換装するから楽しみにしておいてちょうだい」
 改めて質問する一樹に博士はニヤリと笑みを浮かべ答える。

 新型10式ミカヅチの換装作業が終わり、早速俺達は射撃試験に移った。外装は乗ってきたミカヅチの本体に、大型のスラスターが付いたバックパックが背中に取り付けられ、足回りも通常のスラスターに代わり、装甲付きのスラスターが取り付けられ、足回りが大幅に分厚く強化されている。腰回りにはスラスターから伸びた新デザインの一六〇ミリ滑空砲が2丁装備され、胸や腕周りにも増加装甲が追加。腕にはオプションパーツが取り付けられるようにアタッチメントが増設されている。極めつけは両肩部に装備されたガトリング砲だ。かなりの重量増加だが、推進力は装備がない時のおよそ3倍に上昇している。さらに新型神霊機関のおかげで、動力も旧来の10式ノヅチの10倍を超えている……道理で色々装備がつけられるはずだ。

 俺はコックピット内でスペックを確認しながら、トレーラーに置かれているオプションのライフルを受け取る。形状はアサルトライフルに似ているが、砲身の所々にマズルブレーキのようなものがつけてある。これは一体?
「それじゃ、装備の説明に移るわ」
 通信コンタクトを送ってきた博士がコックピットモニターに表示され、俺は一樹と回線を共有し清聴する。
 

ここまでお読み頂きありがとうございます! 

次回に続く


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