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幻獣戦争 1章 1-3 嵐を呼ぶ天才③

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序章 1章 1-3 嵐を呼ぶ天才③

 自衛軍芦屋基地。北九州に位置するこの基地は九州要塞第二戦闘師団の根拠地であり、東南ラシア方面の国境防衛の要衝でもある。この日、桜井朱雀、井上霞、星野真那の3名は、基地の中でも特にセキュリティレベルの高い特別会議室に呼び出されていた。

 特別会議室とは、機密レベルの高い情報を外部に漏らさないために作られた会議室で、防諜は勿論、基地内のネットワークからも独立している部屋である。中は至ってシンプルな造りとなっており、広さとしては40平米程度で専用の長机と椅子が長方形状に配置されている。

 3人は部屋の後方に位置する席に座り、呼び出した人間を待っていた。
「副司令、何の用だろう?」
 席の一番左に座る、何処か優し気な雰囲気を漂わせるスポーティな髪型の朱雀が呟く。
「ここ最近で何かやらかした記憶はないが……霞はどうだ?」
「あたし? えっと……多分バレてはいないと思うけどぉ……」
 朱雀に続き真ん中に座る、ややキツメの雰囲気を漂わせるショートカットの真那が呟き、一番右に座る、ふんわりとした雰囲気を漂わせる、セミロングの霞が不穏当な言葉を口にする。
「うーん。ここに呼ばれたという事は相当な何かだと思うけど……なんだろう?」

「おう。そろっているな。関心関心」
 会議室に入ってすぐいつもの3人が居る事に俺は安堵する。まだ情報は伝わっていないようだ。朱雀の言葉から察するに呼ばれた理由を探してたところだろう。俺はあいつらと対面になるように席に着く。
「あっ、けいれー」
「そのままで良い」
 堅苦しいことが嫌いな俺は立ち上がろうとする朱雀達を制止する。

「副司令、僕らに何か重要な任務でもあるのでしょうか?」
「そういう類のものじゃないから安心してくれ。情報が情報だからここに来てもらった。言っておくが井上がくすねている弾薬の件でもないぞ」
 俺が冗談交じりに言うと、井上はビクッと肩が揺れ顔を赤く染める。
「あはは……バレちゃってましたかぁ」
「お前さん、巧妙にやっているつもりだろうがわかりやすすぎるんだよ。天宮の心配をしたいのはわかるがな」
「霞の件じゃないなら何でしょうか?」
「ああ。それなんだが、お前さん達のボスが復帰したらしいぞ」
 星野の問いに俺はそう言ってやった。こいつらは比良坂の元部下、と言うか教え子と言うべきなのか?

「ボス? ……えーと、一樹隊長なら確か鹿屋基地に赴任していたはずですが?」
「おいおい。そいつは冗談か? それともお前らの教官と言ってやった方がわかりやすいか?」
 朱雀の的外れな言葉に俺はそうツッコんでやった。まったく星野みたいなこと言いやがって。
「はっはっは。副司令、冗談はやめてください。あの人は復帰しませんよ」
「復帰してくれたら嬉しいですけどぉ――教官はもう戦えるような状態じゃないですよ」
「二人の言う通りです。だいいち誰が説得したんですか?」
「お前ら、先日合志で発生した幻獣の件は知っているか?」
 三者三様の反応に俺はある種納得する。うちの司令と同様で、あいつもやる気を失う事件が多すぎたからな。

「はい。また麗奈ちゃんが要塞の弾薬庫空にしたって。それとどういう関係が?」
「それなんだよ。どうも運悪くあいつが居たらしくてな。たまたまその時にボス幻獣を撃破したんだとさ」
 霞の言葉に俺はそう補足する。
「――っ!? いやでも、それでも復帰はしないと思うんですがどうしたんですか?」
「入ってきている情報によると、どうも情報部が一枚噛んでいるらしい。まあ、詳しい話はともかくだ。お前さん達を呼んだのは他でもない。あいつの元に行ってやれ」
 朱雀の言葉を軽く流して俺は3人の背中を押す。辞令は直ぐに届くだろうが待たなくても良い問題だ。

「いやでも、そんな急に抜けてしまったら隊務に支障をきたすのでは?」
「バーカ。お前ら3人が抜けた穴くらい面倒見てやると言っているんだ」
「わかりました。心遣い感謝します! 二人共行きましょう!」
 俺の言葉に井上が素早く立礼する。こういう時だけは判断が的確だな、こいつ。
「そうだ。こういう時は井上くらい素直で良いんだよ。それに俺としては穀物庫をあらすネズミを厄介払い出来て有難い限りだしな」
俺がそう皮肉ると井上は顔をまた赤くする。まったく、こいつは揉み消す方は堪ったもんじゃないんだぞ。

「ありがとうございます副司令」
「心遣い感謝します!」
 朱雀と真那が続いて立礼する。
「ああ。早く行ってやれ。戦略機も持っていって構わんぞ」
 俺がそう付け加えると3人は頭を下げ退室していった。
「本当に世話の焼ける奴らだったな……しかしまあ、あいつはいつやる気を出すかな」
 英雄の再登板。これが意味するところは人類にとって吉なのか、あるいは凶なのか。それを知る術は俺にはない。ただ、俺達自衛軍に大きな変化をもたらすのは間違いない。ひょっとすれば俺達も忙しくなるかもしれない。

「まあ、俺はいつも忙しいか」
 俺は誰も居なくなった部屋でボヤキ部屋を後にした。

ここまでお読み頂きありがとうございます! 

次回に続く


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