『オルガン』翻訳チャレンジ 第一節注釈編
これは第一節の注釈編よ。本編と併せて読んでちょうだい!
「注釈番号」「どう訳したか」「原文での綴り」の順で表記してあるわ!
1. シャルルマーニュ(Charlemagne)
(〜814年)カール大帝とも。フランク国王、ローマ皇帝。現在のイタリア、フランス、ドイツのあたり、西ヨーロッパを統一した。中央集権国家を作り、学芸を盛り立て「カロリング・ルネサンス」と呼ばれる古典文化復興運動を推進した。
2. サクソン人(les Saxons)
北ドイツ出身のゲルマン系部族。ザクセン人とも。2世紀頃から異なる部族を吸収し成長した。一部がブリテン島に渡り、アングロ・サクソン人になった。キリスト教を受け入れず、伝統的な神を信仰した。シャルルマーニュは772年からザクセン人征服戦争を起こし、捕虜の大量虐殺や強制移住を経て802年に終結、キリスト教に改宗させられた。
3. フランク族(franc)
ライン川右岸出身の複数のゲルマン系部族の総称。民族大移動期にガリアに進出し、フランク王国を建てた。
4. サント(Xante)
フランス南西部の町。革命期の1793年、王政、封建制、迷信を連想させる地名を改名する命により、XainctesからXanteに変更された。現在ではSainteと綴る。
5. ピカルディ(Picardie)
フランス北部の地域。ヴァロワ家はここ出身。
6. ソルニ(Sornit)
モデルになったのは国王警備隊最高司令官だったブリザック公爵Louis Hercule Timoléon de Cossé(1734年〜1792年)。ルイ15世の死後、デュ・バリー夫人の愛人となった。ルイ15世、16世に仕え、ギロチンにかけられたが、その首はデュ・バリー夫人の家の窓に投げ込まれたという。
7. アデリンド(Adelinde)
モデルになったのはデュ・バリー夫人(1743年〜1793年)。
8. エルミット(Hermite)
世間から離れて暮らす隠修道士や世捨て人のこと。人名ではないが、訳者の趣味であえて人名ぽく読み方そのままで日本語訳した。
9. ランスベルゲ(Lansberg)
フィリッペ・ファン・ランスベルゲ(1561年〜1632年)のこと。オランダの天文学者。惑星の位置を予測した。
10. 聖ロクス(Saint-Roch)
(1295年〜1327年)フランス出身。ローマ巡礼中、当時流行していたペストの患者を看病した。彼が患者の額に十字を切ると、たちどころに回復した。彼自身もペストに感染し、生死の境を彷徨ったが、犬が傷を舐めたり、食物を運んできたりしたために治ったという。その後、故郷に戻ったが、フランスは戦争中だったために、ロクスを知る人がおらず、スパイと誤解され獄死した。伝染病よけの守護聖人であり、絵画ではパン咥えた犬と共に、傷を負った足を見せた姿で描かれる。
11. アモル(Amour)ローマ神話の愛の神。英語圏ではキューピッドと呼ばれる。
※ローマ神話とギリシャ神話の違い…元々は別だったが、類似性が多かったことから、ローマ神話の神々にギリシャ神話の神々を対応させていった。同じ神でも、二つの呼び方があることもあれば、どちらかにしか登場しない神もいる。ギリシャ神話は古代ギリシャ語、ローマ神話はラテン語で語られた。
12. アポロン(Phébus)
原文ではアポロンの別称・称号であるポエボスの名で表記されている。ヨーロッパの詩では太陽の比喩として、ポエブスという名とその二輪戦車が使われる。
13. ケルビム(les Chérubins)
旧約聖書に登場する天使の一種。智天使。四つの顔と四つの翼を持つ。ルネサンス期の絵画では赤ちゃんの顔から翼が生えた状態で描かれる。
14. アンピレ(Empirée)
四層になった天界の最上層で、神々が住む場所。
15. ナルボンヌ(Narbonne)
フランス南西部、スペイン国境近くの町。かつてはローマに続く街道や港があり、政治的にも経済的にも重要な地であった。
16. ブルターニュ(Bretagne)
フランス北西部の半島。ブルターニュ公国あったが、1789年に解体。フランスの州になったが、カトリックの信仰が強い地域であり、王党派の抵抗運動の中心にもなった。
17. ペロンヌ(Péronne)
フランス北部の町。
18. ガリア(Gaulois)
紀元前、フランス、ベルギー、スイスとオランダ、ドイツの一部を、古代ローマ人がガリアと呼んだ。のちにフランスのことを指すようになった。
19. フォリー(Folie)
直訳すると「狂気」だが、呼称として出てきているので人名のように訳した。
20. ストア哲学(stoïques)
紀元前3世紀の古代ギリシャで、ゼノンを祖とする。情念に乱されない理性に従う生活を理想とし禁欲主義的だった。
21. グレゴリオ聖歌(plain-chant)
9世紀から10世紀に、フランク人たちの間で発展した、カトリック教会の聖歌。無伴奏で歌われる。歌詞はラテン語。
22. ブケファロス(Bucéphale)
アレクサンドロス大王の愛馬。黒い馬で、額の星が牛の角の形をしていた。気性の荒い馬だったが、戦いで戦死。アレクサンドロス大王は丁寧に埋葬し、その地に新しい都市を開いた。
23. ルイ9世(Louis IX)
(1214年〜1270年)敬虔なキリスト教信者だったため、聖王ルイ、敬虔王と呼ばれる。貨幣の統一など内政に力を入れたため、フランス王国が発展した。一方で、二回の十字軍遠征を行ったが、一回目のエジプト遠征では捕虜となり、二回目のチュニス遠征ではチフスに罹り病死した。その後、列聖された。
24. シャルル5世(Charles-Quint)
(1338年〜1380年)賢明王、税金の父と呼ばれる。王太子時代から、百年戦争に敗北し捕虜となった父王ジャン2世に代わり、政治を取り仕切った。税金の基礎となる徴税を行なった。理性的な戦術、外交により、父が失った領土の多くを回収した。読書家であり、教養のある人物だったが、占星術を信奉し、教会と対立することもあった。
25. フランソワ1世(François)
(1494年〜1547年)フランス・ルネサンスの父、騎士王と呼ばれる。レオナルド・ダ・ヴィンチなどの芸術家たちを保護したり、ヘブライ語、古代ギリシア語、数学などの研究に力を入れ、美術や文芸を発展させた。ハプスブルク家が治めるドイツ、スペインと対立、戦争を繰り返した。2m超の大男で筋骨隆々な自由奔放な人柄。
サン=ジュストはフランソワ(おそらく1世だと思って訳した)が小姓に服従させられたと描写しているが、そういうエピソードが見つかりません。別のフランソワなんですか? 有識者、教えてください。
26. アンリ2世(Henri II)
(1519年〜1559年)フランソワ1世の次男。フランソワ1世がハプスブルク家と始めたイタリア戦争を終結させる。妹と娘がそれぞれ結婚することとなり、その祝いで行われた馬上槍試合で右目を突かれ、それが原因となって亡くなった。王妃はメディチ家のカトリーヌ・ド・メディシスだが、ディアーヌ・ド・ポワチエと愛人関係にあった。
27. ディアーヌ(Diane)
(1499年〜1566年)フランソワ1世の時代に宮廷に入り、アンリ2世の家庭教師を務めた。その後、愛妾となり、アンリ2世がカトリーヌ・ド・メディシスを妃として迎え入れてからも、25年に渡り影響力を持ち続けた。
28. トリエント公会議(Conseil de Trente)
1545年〜1563年にかけて開催された公会議(公会議とは、カトリック教会の司祭たちが集まり、教義や教会法について話し合う最高者会議のこと)。プロテスタントが台頭し、宗教改革の真っ只中で、両派の和解のために始まったが、結果としてプロテスタントへの強固な姿勢を明確にすることとなった。
29. シクストゥス5世(Sixte le Cinquième)
(1520年〜1590年)第227代ローマ教皇。即位式には天正遣欧使節も参加した。無法地帯だった教皇領の治安回復とローマ教皇庁の財政を立て直した。
30. ピイス(Piis)
おそらく劇作家のPierre-Antoine-Augustin de Piis(1755年〜1832年)。アフリカ人の母を持つ。植民地の軍隊に所属するはずが、虚弱だったため、パリの大学に進学した。有名作のパロディ劇を書き、パリに劇場も創設した。
31. エリヤ(Élie)
聖書に登場する預言者。火の車と火の馬が現れ、つむじ風に乗って天にのぼる描写がある。
32. パエトン(Phaéton)
ギリシャ神話の登場人物。父・アポロンの太陽の戦車に乗って、天に登ろうとしたが、操縦に失敗して大地に火災を起こした。
33. デルフォイ(Delphes)
ギリシャ中部の聖域。古代ギリシャでは「世界のへそ」とされた。アポロン神殿があり、紀元前590年から巫女たちによって伝えられる神託はギリシャ人にとって真実とされた。
