122.0 基礎編 / 言語 / 貴手 ate と 満手 mate vol.1
あてとまて、独特な音の響きですね...。
こんにちは、加来各論です。
そんな訳で今日は古の手の呼び名にまつわる話です。
貴手 ate あて / 右手、貴い手。器用な手。
満手 mate まて / 左手、満たす手。押さえる、補助。
真手 mate まて / (両手をつかって)丁寧に・じっくりと。東北方言、までい madei の語源。→ 大切に扱う。
両手 morote もろて / 両手 → 異論なく
関連するところで...
弓手 yunde ゆんで / 弓を持つ左手
馬手 mete まて / 馬の綱を引く手
鞍手 kurate くらて / 馬の鞍を持つ手、福岡の地名

弓で戦うのが主流。
貴手 ate と満手 mate も動作や用途と直結する呼び名かな。
右手 / 利き手、字・絵を書く、刃物を使う、物を投げる
左手 / 右手の補助、物を押える
私は左利きだから違うと思う方もいるかも知れませんが一般論として単純化して話させてもらいますね、どっちが優位とかそんな話してもプラスのスパイラルになりそうもありませんし。思いとしては店主の話を元に読者の皆さんにプラスに繋げて欲しいだけです。
ちなみに丸いドアノブとドアの開き方向に意味があることをご存じでしょうか?

アールヌーボーな扉
ドアノブを右に廻して引くと右ヒンジのドアが手前に開く。
これは右手を使う前提での人体機能の写しです。右手を前にのばして手を右に回転すると手の位置は身体に近づき、逆に左に廻すと身体から遠のきます。この身体の骨格特性にドアノブの回転方向とドアの開き方向を合わせている訳です。設計者がこれを知らないと使いにくい扉になりますが、廊下に面した扉では歩行者に当たらないように内開きにする配慮が必要です。人体機構より安全性を優先した意図された設計になります。
右利きの人優先に設計されていますから自然ですが、左利きの人は使いにくい不自然・違和感を感じるシーンが多いかも知れません。文字の方向、はさみもそうですね。発案者が右利きだったという理由もあるでしょうね。

金象嵌入り植木鋏
ハイレンジは数百万円也
以上が店主がよくやるリバースエンジニアリング、在るものを見ながらどういう思想で設計されたのかを読み解く知的パズルです。機械設計領域で一般的な作業ですが、ヒトの作った造形にはすべて何らかの理由があります。不可視を可視に昇華する作業。製作者・製作物への敬意を持つとレコードが降りて来るんですね、何十年もやってますから店主の得意分野です。
話を戻して...
貴手 ate あて / 右手
満手 mate まて / 左手
ateにmが付加された様にも見えます。まの意味を探ってみます。
真実・本物 / まごころ、まこと
純粋な / まっ白、ま澄、まじめ
立派な・美しい / まなご(愛子=可愛い子)、まかじ(真舵=立派な舵)
空間、時間、仕切り / 窓、客間、間合い、ひま、いとま
目 / まなこ、まぶた、まなじり、まばゆい
総括して間、真、目。
工業系だと研磨のまはじっくり時間を掛けて仕上がりを見ながら両手で磨き上げる姿が浮かびます。最初の研磨は銅鏡・銅剣・玉・勾玉辺りでしょうか。

宗像大社 神宝館にて
そういえば赤ちゃんが最初に発生する言葉は「んま」とか「まーまー」ですね。よく連呼してます。赤ちゃんって自分の手を不思議そうに見る時期がありますね、手の機能確認する様に裏表を交互にじーっと見てます。医学用語でハンドリガード、訳せば手の自己認知でしょうか。最初に不思議・疑問として認知するのが自分の手の様です。

面白くなってきました。
古代の概念として右手を作業する貴い手、左手をそれを支える満ちる手と考えていたようです。茶碗を持つ様子にも重なります。左手の茶碗に満たしたお米を右手のお箸で頂く。右手がなければ食べられませんから尊い手、貴手となる。そんなイメージでしょうか。

機能で考えるとこんな連動もあり得るかも...
満手 まて → 満ち手 みちて →持ち手 もちて
ものづくりにしても左手を添えて右手で細工という行為を崇高に捉えて食事の作法に落としこみ日本人の器用さ養成ギブスとして文化に埋め込んだともいえるかも知れません。ナイフ、フォークよりも箸使いの方が手にとっては繊細ですね。職人や脳を育てるには箸の方が繊細な刺激が入り優位性がありそうです。
器用系でいうと書道なんかありますが店主も子供の頃通いましたがセンス無いみたいです。書道再チャレンジするのもアリかも知れませんが...。
和歌山神社を始め全国の手足の守護謳う手足神社の古い祝詞や伝承に あて、まて という言葉が残ります。技能職人系ですね、連想するのは武家・大工・石工・鉱物職人辺りでしょうか。熊本の甲斐神社(足手荒神)は九州の手足守護の総本社的存在です。天皇家もキリストも大工の血筋ですね、偶然でしょうか?
あてxまて関連で動作展開してそうな言葉とイメージとしては...
あてが外れる / 金づちを振り下ろしたが空ぶって木に傷が入る悲しみ
酒のあて / 左手でおちょこの酒を飲み、右手で摘まみをつつく
当てる / 諦めないで掘り進めて良かった、金が出た!
宛先 / 船上で文を結んだ弓矢を放ち相手に届ける
待て / 刀に添える左手を示すことで戦意がない事を伝える
待て / 更には両手を使えば丁寧な表現となり、ビジネスシーンも円滑に
まち / 左手の固定のイメージから移動しない町、街に転化?
町って字は田んぼの角ですね、つまりは合流地点 meeting point
まち合わせ / 動かないポイントに集合する
客観的に総括すると
右手 / 動 / 行き先が定まった動き・外向的アプローチ
左手 / 静 / 動かない・動かさない・内向的アプローチ
なかなか興味深いですね。
店主の話は長いので一旦休憩を挟みます、15分後にまた席についてください。
後ろにお茶を用意してますから、ご自由にお召し上がりください。

八女茶喫茶 茶楼蒼にて
※写真は東大寺の貴手と満手です。
