この裏切りは、君を守るため 第18話
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第2章 さまよう心
7 クレイの告白
──必ず君を守る。
ファンローゼは唇を震わせた。
奇妙な既視感にとらわれる。
ああ、まただわ。
前にも同じ台詞を聞いたことがあるような錯覚。
「ファンローゼ、大丈夫?」
ファンローゼは我に返り顔をあげた。
目の前には、心配そうな顔で自分を見つめるクレイの姿。
「ごめんなさい、何でもないの」
「不安な気持ちは分かるよ。そうだね、思わず無理を言ったけれど、君が嫌なら無理強いはしない」
クレイは静かに背を向けた。
「待って!」
ファンローゼの呼び止める声に、クレイは振り返る。
「私……エティカリアに行きます」
「無理しなくていいんだ。僕もつい衝動的になりすぎた。確かに危険がないとは言いきれない」
「いいえ、私、自分が何者か知りたいの」
時折、胸をかすめていく懐かしいような記憶。
その失った記憶の欠片を、少しでも拾い集められるなら。
「なぜ、エスツェリア軍から追われているのか。三年前、私の身に何があったのか。すべて確かめたい」
クレイの手がそっとファンローゼの頬をなでた。
「ファンローゼ、好きだ。愛している」
突然のクレイの告白に、ファンローゼは目を見開く。
「初めて君と出会った時から、君のことが気になって、いつしか君に恋心を抱くようになっていた」
頬をなぞるクレイの指先が軽く耳朶に触れる。
胸がとくんと鳴った。
目の前にはクレイの真剣な顔。
くすぐったさにファンローゼは肩をすくめ頬を赤らめた。
「クレイ……?」
逃げようと身体を引くが、腰に手を回され抱きしめられる。
「君の心臓の音が聞こえる」
「や、やめて、離して、クレイ……」
「いやだ」
「クレイ、どうしたの?」
細身だと思っていたクレイの身体は意外にも筋肉質で、改めて男の人なのだと意識する。
腰に回された手も力強い。
いつものクレイではない、まったく知らない人のようで恐い。
触れるか触れないか程度の柔らかさで、頬をなぞる手が首筋へと落ちる。その手があごにかかり、上向かせられた。
クレイの端整な顔が間近に迫る。
親指で軽く唇をなぞられる。
「僕には君だけだ」
吐息混じりに囁かれ、ファンローゼは背筋を震わせた。
互いの息が絡むほどに触れそうになる唇。
唇を塞がれそうになったその刹那、ファンローゼは顔をそらした。
沈黙が二人の間を流れた。
「ごめんなさい……私……」
「いや、僕のほうこそ」
そう言って、クレイの身体が離れた。
ファンローゼは申し訳なさそうにうつむく。
「君をエティカリアに連れて行く。必ずクルト氏を見つけてみせる。大丈夫、何があっても君のことを守るから、僕が必ず」
「ありがとう。私、助けられてばかりで何も……」
弱々しく呟くファンローゼに、クレイは柔らかい微笑みを浮かべた。
「とにかく行ってみよう」
エティカリアへ──。
