『METAL GEAR SOLID Δ:VENOM』 ━ “足りないもの”を足さないリメイク
筐ニンゲンです。
『METAL GEAR SOLID Δ』がシリーズ化するなら、第四弾です。
これまでの記事はマガジンにまとめてますのでお気軽にお読みください。
現時点でMGS3 → PW+OPS → MG1と紡いできました。
今回はデルタシリーズ三作目でアウターヘブンとヴェノム・スネークの最期を描いた後、『MG2』へ行くのではなく、『METAL GEAR SOLID V』を挟む、そんな構想です。
今遊んでも驚くほど快適なゲームではありますが、昨今のリメイク作品を見ていると、大体2~3年おきに発売されているので、『MGSV』へたどり着くのは10年近く先になるかもしれません。
さすがに、その時には時代を感じる部分も増えているでしょう。
そうなれば、ゲームプレイやグラフィックを現代に合わせて作り直す意味も生まれます。
では、時代に合わせて新しくし、原作では実装されなかったものを補えば、それは『MGSV』のリメイクになるのでしょうか。
最初はそう思ってましたが、次第にそうは思えなくなってきました。
そんなわけで今回は、『MGSV』が抱える「喪失」に向き合うお話になります。
リメイクの副題は━

第一章:足りないもの(ゲームプレイ)
さて、早速ですが原作で足りないことはなんでしょう。
まずはゲームプレイから考えましょうか。
広大なオープンワールドに対して、拠点数が少ないのでイベントが発生しにくい。
マザーベースで思ったより交流ができないし、各プラットフォームへの移動もめんどくさい。
などなど…
結構足りないものはあると思います。
そんな中で、僕が一番足りないと感じているのは、「緊張感」です。
過去作では、画面外にいる敵を警戒しながら、足を止めて周囲をうかがって、少しずつ先へ進んでいく。
一寸先は闇。
これを体験できることが至上の喜びでした。

ところが『MGSV』では、拠点を遠くから見渡せる場所も多いので、潜入前に双眼鏡でほとんどの敵をマーキングできちゃう。
さらに、バディを連れて行けば自動でマーキングしてくれます。
もちろん、バディを連れて行かないなどの縛りプレイはできますが、MGSは本来、特別な縛りを設けなくても潜入の緊張感を味わえるもののはずなので、ちょっと違うと思うんですよね。
面白くないわけではないです。
侵入経路や時間帯、攻略方法まで自由に選べるのは、『MGSV』の大きな魅力です。
ただ、どうもプレイヤー側が優位になりすぎていて、MGSとしては退化してしまっている気がする。
そう、『MGSV』は足りないのです。
━ではこういうのはどうでしょう。
例えば、初めて潜入する拠点は、マップ上で大まかな形しか分からないようにしておきます。
敵兵を尋問したり、拠点内の資料を手に入れたりすることでマッピングを進め、ようやく形が判明し、潜入ルートを模索できるようになる。
さらに、バディのマーキング性能も大幅に範囲を狭めてナーフしましょうか。
付けたマークは時間が経つと剥がれるようにします。
高台から一度偵察してルートを決めれば、後は楽々♪とはいきません。
潜入しながら情報を集め、状況に合わせて進路を変えていく。
これなら、足りなかった緊張感とルートを模索する自由を両立できるはずです。

ゲームプレイについては、深掘りしすぎると全5回とかになりそうなので、ここで自重します。
今回、最も悩んだのは、ストーリーに足りなかったものをどう扱うかです。
第二章:足りないもの(ストーリー)
ストーリーについては、多くの人が不完全燃焼だったのではないでしょうか。
第一章でスカルフェイスへの復讐をあっさり果たしてしまい、物語の最大の目的は早々に達成されます。
その後も声帯虫、燃える男、ヒューイ、クワイエット、イーライと問題は続いていくのですが、どうにも何かが欠けているようで、いまひとつのめり込めない。
極めつけは、第二章に並ぶ高難度ミッションによる水増しです。
正直、この辺りは迷走してる?とも思いましたし、もっと色々なものを欲しがっていました。

そしてやはり、幻のEp51「蝿の王国」が本編に実装されなかったのは、とても惜しい。
完成度30%とはいえ、特典映像であそこまで見せられてしまえば、実際に遊びたいと思うのは当然でしょう。
では、リメイクでEp51を正式に実装し、第二章の高難度ミッションを廃止して、新しいエピソードを足していけば、それで解決するのでしょうか。
最初はそれが妥当だと思っていました。
ところが、考えれば考えるほど、「それは本当に『MGSV』なのか?」という疑問が大きくなっていったのです。
先ほども言った通り、原作では語られないことが多かったですよね。
例えばほとんど語られなかった「燃える男」をもっと掘り下げようとすると、第三の子供や「報復心」の話まで手を入れなければならなくなります。そうなるとなんとなーく処理されてしまったスカルズの扱いも気になってきたりします。
それを"語るため"に新しい敵なんか考え始めたら、もう止まりませんでした。

足りなかったところを埋めようとしていたはずなのに、気づけば原作をしっちゃかめっちゃかにしてしまってました…。
それは「足りなかった部分を補った完璧な『MGSV』」ではなく、「『MGSV』みたいなもの」。いわば二次創作です。
じゃあ、ここは手を出さないの?でもそれだとリメイクと言えるの?
━この埋められない穴について考えすぎて、中々まとめられませんでした。
なので、第二章の穴を埋める構想はいったん諦めます。
行き詰まりすぎて、いい案がまったく出てこなくなってしまいました。
第三章:余白を足す
では、どうしましょうか。
━そうだ!逆に余白を足してみよう!
足りなかったのは、物語じゃない!ヴェノムが真実を知った後もBIGBOSSとして生き続ける、その残酷な時間をプレイヤーが過ごすことだったのです。
まず大前提として、Ep51「蝿の王国」は正式にプレイできるミッションとして第二章に実装します。これはもう、やりたい!
ただし、Ep46「世界を売った男の真実」より前に配置します。
(Ep番号が前後してややこしくなりますが、ご了承ください)
「蝿の王国」でイーライは、自分の人生が最初から決められていたことへの怒りをヴェノムへぶつけます。

この時点のヴェノムは、まだ自分をBIGBOSSだと思っているので、その怒りを真摯に受け止めます。

そして、「蝿の王国」が幕を下ろしたところでEp46(仮)の解禁です。
こうすることで、今度はヴェノム自身が、自分もまた「自分ではなかった」と知ることになるのです。
原作のEp46では、本物のBIGBOSSからのメッセージを聞き、ヴェノムが自分の正体を知った直後に「OPERATION INTRUDE N313」が発動してヴェノムは暗闇へ向かっていきます。
背景のチラ見えロゴがアウターヘブンのものへ変わっていたり、部屋にMSXが置かれていたり…。当時は鳥肌がすごかったですよ。
そもそも僕は、それまでヴェノムが影武者だなんて疑ってもいなかったので、衝撃が強すぎましたね。
あの演出には色々な受け取り方があると思います。
僕は初見時、ヴェノムがアウターヘブンで最期を迎える直前に真実を知ったように解釈していました。
ですが、何度も見返してるうちに、鏡を割ったところで時間が一気に飛んだのではないかという解釈に変わりました。
ここは僕の妄想を語る場所なので、その解釈を正とします!
Ep46(仮)では、ヴェノムが自分はメディックであり、BIGBOSSの影武者として用意された存在だったことを知る。
本物のBIGBOSSからのメッセージを聞き、その事実を受け入れウォークマンからテープを取り出し、そこでミッション終了です。
こうすることでヴェノムは、真実を知ってから約10年、自分がBIGBOSSではないと分かっていながら、それでもBIGBOSSとして生きていかなければならなくなります。
そんな残酷さを、プレイヤーに感じさせたいのです。
いや、別にドSだからとかそういうわけじゃないですよ。

発売から間もない頃、感想を色々と漁っていると「BIGBOSSって悪に堕ちてなくない?」という声が結構ありました。
確かに原作では、ヴェノムが真実を知ったのはどの時期だったのかなど、軌跡が描かれていないので、BIGBOSSが彼に何を背負わせたのか、その残酷さは見えにくかったと思います。
でも、このようにムービーを分けることで、BIGBOSSは自分が再起するために、一人の人間から人生を奪い、利用した。
そして真実を知った後も、その役割を演じ続けるしかない立場へ追い込んだことが、はっきり見えるでしょう。
そこまで突きつければ、「BIGBOSSは悪に堕ちていない」とは、もう言えなくないですか?
あのキャッチコピーにも、別の重みを持たせられると思うのです。

第四章:「言葉」というのは面白い
「第三章:共生(PEACE)」
原作の内部データに、このタイトルカードが残されていたことは有名ですね。
しかし、なぜ「PEACE」を、そのまま「平和」として表現しなかったのでしょう。

僕はこの二つを、彼らのもとへ歩み寄ってきたものが「PEACE」で、それでも彼らが選んだものが「共生」だったと受け取ることにしました。
スカルフェイスへの復讐はあっさりと終わり、声帯虫による危機も乗り越えた。ヒューイにはボートを用意してあげたし、「蝿の王国」を実装することで、未回収だったイーライとサヘラントロプスの問題にも決着がつきます。
ダイアモンド・ドッグズが戦い続けるために掲げていた免罪符は、もうありません。
しかし、ヴェノムは自分がBIGBOSSの影武者であることを知ってしまいました。
それはつまり、これからも活動し続けなくてはならないという一種の呪いでもあります。
復讐を遂げ、その後に残った問題まで片づけたからといって「じゃあ解散!」とはならないでしょう。
ヴェノムは、BIGBOSSという"絶対"があるので、平和に歩み寄ることはできない。
その代わりに、役割や戦争を抱えたまま、それらと共に生きていく。
彼が辿り着くのは、戦いから解放された「PEACE」ではなく、戦争との「共生」なのです。

━では、それをどう表現しましょうか。
先ほどから言ってるように、新しい何かを用意して穴を埋めるのは悪手だと思っています。
手づまりじゃん。
そうなんです…。
だったら、何も始めなければいい!
画面に「第三章:共生(PEACE)」と表示された後、一つ二つほど無線を挟んで、いつものプレイに戻ります。
プレイヤーはこれまでと同じように現地へ向かい、兵士や資源を集めたり、SIDE OPSをこなしたりしていく。
MAIN OPSは発生しないが、現地兵を始末したり、さらったり、戦地へ介入して、目的もないまま戦い続ける。
第三章では、その"空虚な時間"をプレイヤー自身に過ごしてもらいます。
そうした空虚な時間を過ごしているうちに、少しずつマザーベースに違和感が生まれていきます。
帰還するたびに、マザーベースの雰囲気が変わっている。
兵士たちが自分たちの居場所を「国」と呼ぶようになり、見慣れたダイアモンド・ドッグズの部隊章をあしらった旗も、段々と取り外されていく。
武装も段々と物騒なものになっていきます。
そう、プレイヤーがこれまで通り遊び続けた結果として、ダイアモンド・ドッグズが少しずつ”何か”へ変わっていくのです。
そして、ある程度の時間を過ごした後、ヴェノムは司令執務室へ戻ります。
(言い忘れていましたが、リメイクではACCではなく、マザーベースに自由に動き回れる司令執務室を設けてほしい!)
ここからムービー開始です。
机の上には、Ep46(仮)でしまったBIGBOSSからのメッセージが収録されたカセットテープが置かれています。
ヴェノムはそれを手に取り、裏返します。
B面に記されているのは━

その瞬間、光景は原作Ep46の「あの部屋」へ移ります。
あとは原作通りです。
ヴェノムはカセットをSDC-500に差し込み、データを読み込ませ、暗闇へ消えていく。
その後は年表、恒例のタイトルロゴが表示された状態で行われる会話、そしてエンドロールです。
正直、この構成を思いついた時、我ながら天才か?と思いました。
(嘘です。言いすぎました。)
原作の演出を残しながら、ヴェノムが真実を知った後の時間をプレイヤーに過ごさせる。
そして、目的もないまま戦い続けた結果、ダイアモンド・ドッグズがただの戦争屋へ変わっていく。
PWで懸念されていたことを可視化させ、「BIGBOSSはなぜ悪に堕ちたのか」を突きつけるのです。

最後に
さて、これで僕が『MGSV』に足りなかったと感じていたものには、それなりに答えを出せた気がします。
でも、これはあくまでも「僕の願望」であって、「正解」ではありません。
何を補い、何を欠けたまま残すべきなのか。
そこに答えを出せない以上、少なくとも今の僕には、『MGSV』のリメイク案を完成させることはできません。
ということで、この天才的な終わらせ方だけはどうしても話しておきたかったので、語らせていただきました。
次は『METAL GEAR 2 SOLID SNAKE』のリメイク案でお会いしましょう。
