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2000字で、地球を救うスぺオペ練習   #流れ星の手紙

「流れ星に願いごとをすると、…願いが叶う」って、
空を見上げるたび、心のどこかで信じていた。それは、子どもの頃からの素敵なおまじない。

でも、あの日、私の元にやってきた星は、少し違いました。 私の願いを叶えるためではなく、『願い』を私に託すために落ちてきたのですから。

その夜、私はベランダでぼんやりと月を眺めていました。
すると、きらっと瞬き夜空をすべる一筋の光のライン。あっと思う間もなく、その光はまっすぐこちらへ近づいてきて、カシャン…と小さな音を立て、私が大切に育てていたハーブの植木鉢に飛び込みました。

驚いて駆けよると、砕けた鉢と土の中から、淡い青白い光がこぼれています。そっと土をかき分けると、そこにいたのは、私の手のひらにすっぽりと収まってしまうほど小さな男の子でした。
背中にはガラス細工のような小さな羽が生え、宝石みたいに大きな瞳の中をして、体には読めない文字が書かれていました。

「……こんにちは」
鈴を転がすような声は、とても流暢な日本語でした。あまりの出来事に言葉を失う私をよそに、彼は少し申し訳なさそうに眉を下げて、早口で話し始めます。

遠い銀河の中心で、時空の『糸』がほつれてしまったこと。
その影響が、もうすぐこの地球にも及ぶこと。そして、その綻びを繕うために、純粋な人間の心が放つ“共鳴波”という力が必要なのだ、と。
彼はオリオン星系の『星守り』。星々の平穏を守るのが使命なのだと、小さな胸を張りました。

あまりに壮大なお話に、夢かと疑いました。けれど、私の手のひらに乗った彼から伝わってくる、じんわりと温かいぬくもりと、瞳に宿る真摯な光に、嘘なんてひとかけらも感じられなかったのです。

その夜から満月までの数日間、私と小さな星守りとの、不思議な共同生活が始まりました。
街で一番人気のかき氷を、目をきらきらさせながら頬張る姿は、まるで無邪気な子どものよう。けれど、時折ふと見せる寂しげな横顔に、私は胸がきゅっと締めつけられるのでした。

「僕たちの故郷では、『星巡りの季節』という、ごく短い間だけ、誰かを好きになることが許されるんだ」

公園のベンチで並んで夕日を眺めているとき、彼がぽつりと教えてくれました。
普段は、恋をする時間も、その概念すらもないのだ、と。彼の故郷のお話を聞くたび、遠い夜空の向こうに、切ないほどの想いが募っていきました。

そして、約束の満月の夜。
街を見下ろす丘の上で、私は彼から受け取った小さな腕輪をそっと指にはめました。
「目を閉じて。あなたの心が、宇宙で一番きれいな音色を奏でるのを、僕は知っているから……」
彼の声が、優しく身体に染み込んできます。

言われるがままに瞳を閉じると、心の奥底から温かい光の粒があふれ出し、世界の空気が七色に震えるのを感じました。彼と私の心が、ひとつに重なった瞬間、まばゆい閃光がすべてを包み込み、私の意識は静かに遠のいていきました。

目覚めたとき、空は優しい朝焼けに染まっていました。
頬をなでる風は穏やかで、世界がほんの少し、優しくなったような気がします。
「成功したよ。地球は救われた」 隣で聞こえた声は、なぜだか少しだけ掠れていました。振り向くと、彼の身体が足元からゆっくりと透き通っていくのが見えます。

「どうして……?」
私の問いかけに、彼は寂しげに、でも愛おしそうに微笑みました。 「時間切れ、なんだ。僕はもう、ここにはいられない」
そう言うと、彼の姿は完全に光の粒になって、その代わりに、私の手のひらには、小さな星の指輪だけが残されていました。

「また、会える?」 涙声で尋ねる私に、彼はふわりと近づき、耳元でいたずらっぽく囁きます。
「もちろん。もしまた会えたら、今度は僕から君にプロポーズしてもいいかな?」 その言葉を残して、彼は夜が明けたばかりの空へと、溶けるように消えていきました。

あれから、三年。

春の穏やかな夜、私はあの日のようにベランダで月を見上げていました。
すると、ポケットに入れていた星の指輪が熱を帯び、震え始めます。
はっとして空を見上げると、見慣れたオリオン座のそばに、今までなかったはずの新しい星が、ひとつ強く輝いていました。
そのとき、優しい風が私の髪を揺らし、耳元で懐かしい声が囁きました。

「元気にしていましたか、再会が少し遅くなってしまいましたね」

あの日、二人の心が起こした奇跡は、離れた時空さえも繋いでくれました。別れは永遠ではなかった。ただ、ほんの少しだけ、距離が遠かっただけ。

私は夜空に瞬く新しい星に向かって、そっと微笑みかけました。「おかえりなさい。ずっと、待っていたの…遠距離恋愛もよいかな。…手紙、書くね」

その声に応えるように、ひときわ優しい光が、またたくのが見えた気がしました。


※ 最近、また、スペースオペラぽいのが書きたくなっていたところ、
素敵な「お題」を頂けたので、チャレンジしてみました。
スぺオペを書くつもりが、いつものラブコメになってしまいました。
タイトルやタグから来ていただいた方、ごめんなさい。
次回こそ、きっと……。もういちど、チャレンジさせてください~。

  #3つのお題に空想のひらめきを 【第14回】


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