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期待90%で行って、買わずに帰った。Ray-Ban Metaを発売直後に触ってわかったこと

日本で発売されたばかりのAIグラス「Ray-Ban Meta」を、体験会で触ってきた。

有給を取って、予約のQRコードを握りしめて。

先に、この記事の立ち位置を書いておく。私は買わなかった。でも「ダメだった」という話ではない。

むしろ逆で、こんなに考えさせられたガジェットは初めてだった。良かったところは本物だったし、ダメだったところも本物だった。

そのうえで「今の私は買わない」と判断した。

買うか迷っている人が、自分の判断に流用できる材料として読んでほしい。

ちなみに私は、メタ90・レイバン10くらいの期待比率で行った。欲しかったのはテクノロジーで、レイバンというブランドにはほとんど関心がなかった。

その前提で読むと、以下の評価のクセも伝わると思う。

結論:今の「AIグラス」としては待ち。ただし「記録する道具」としては本物

長く読む時間がない人のために、先に判断軸だけ置いておく。

  • かけ心地・軽さ:期待以上。これは誰がかけても良いと感じるはず

  • 音声AI:現状は厳しい。問いかけて返答まで2〜3秒。会話としては使えない

  • カメラ:画質は普通。でも「自分の目線で日常を残せる」体験は、撮るという行為そのものを変える

  • 見た目:文句なし。テクノロジーなのにファッションとして成立する、ほぼ唯一無二の存在

  • 楽しさ:今までにない日常の記録を、ファッションごと身につけられる。ガジェットとして純粋にワクワクする

  • 私の判断:AIに期待するなら今は待つ。記録用と割り切れるなら、今買う価値はある

以下、ひとつずつ理由を書く。

良かった:軽さは、思っていた以上だった

顔にのせた瞬間、いい意味で裏切られた。

軽い。電子デバイスを背負っている感覚がまるでない。

多少の重さはあるはずなのに、それが高級感の中に静かに呑み込まれていて、「重さ」として不快に立ち上がってこない。

これは私の主観の補正ではなく、おそらく誰がかけてもそう感じる。

スマートグラスと聞いて身構える「ゴツさ」「メカっぽさ」を警戒している人ほど、いい方向に驚くと思う。かけ心地は、文句なしだった。

フレームはWayfarerを試した。少しずり落ちる感覚を正直に伝えたら、別売りの支え(シリコン鼻パッド)を勧められた。

これをつけるとフィット感が一段上がる。

顔の形に不安がある人は、本体だけで判断せず、シリコン鼻パッドとセットで試着するのをおすすめする。

厳しい:音声AIは、いちばん期待した部分で、いちばん萎えた

ここが私の判断を決めた。

「ヘイ、メタ」と呼びかけて、いくつか試した。

返答が返ってくるまで、体感で2〜3秒。

文字にすると短く見える。でも、目の前の人に話しかけて2〜3秒沈黙されることを想像してほしい。

会話のテンポとしては、明確に遅い。「動画撮って」のような単純な命令は通る。

でも、AIアシスタントとして自然に会話する、という体験には程遠かった。

いろいろ呼びかけて試したが、残ったのは「今は使えない」という印象だった。

これは私の端末固有の不調ではなく、構造的な話だと思っている。

Ray-Ban Metaに載っているMeta AIは、現時点では最先端のAIモデルから一歩遅れた世代がベースになっている。

ハードの完成度に、頭脳が追いついていない。

テクノロジーを浴びに来た私が、その核心でいちばん冷めたのは皮肉だった。

なお、日本語のリアルタイム翻訳は、この夏に対応予定とされている。

つまり体験会で触れる今の段階では、目玉機能のひとつがまだ動かない。

「夏に来るから」を根拠に今フルプライスを払うのは、未完成の部分にも先払いする判断になる。

ここは人によって評価が割れるところだと思う。

ただ、誤解されたくないので書いておく。これは「メタはダメだ」という結論ではない。

今の物足りなさは、裏返せば伸びしろだ。

ソフトウェアのアップデートで応答速度が改善する余地は大きいし、世代が変われば一気に化ける可能性もある。

そもそもメタは、Llamaのような強力なAIを無償で世界に開いてきた会社で、私自身その恩恵を受けている。

だから私のこの記事は、批判ではなく「次への期待」として読んでほしい。

今は待ちだと判断しただけで、見限ったわけではない。

ここが楽しい:カメラは普通。でも「目線で撮れる」が、日常を書き換える

画質そのものは、率直に言って普通だ。

スマホで撮るのと比べて、画質で感動することはなかった。

でも、ここがこの記事でいちばん伝えたい部分かもしれない。

画質の話を超えて、このグラスは「日常の記録」という行為そのものを書き換えてくる

考えてみてほしい。これまで写真や動画は、撮ろうと思った瞬間にスマホを取り出して、構えて、画面を見て、ようやくシャッターを切るものだった。

その一連の動作の間に、目の前の「その瞬間」はもう半分終わっている。

子どもがふと見せた表情、街角で目を奪われた光、誰かと笑い合った一秒。スマホを構えた時点で、空気が変わってしまう。

このグラスは、それをまるごと飛ばす。

自分が見ている、その目線のまま、視界をそのまま切り取れる

片目側からの撮影ではあるけれど、構図を意識する必要すらない。子どもと手を繋いだまま。

傘をさしたまま。相手から目を離さないまま。撮るために立ち止まらなくていい。

これは「いい写真が撮れるカメラ」ではなく、「今までなら記録すらされずに消えていた日常を、残してくれる装置」だ。

スペック表には絶対に載らない、この一点にこそ、私はいちばんワクワクした。

家族の記録に使いたい人にとっては、ここが唯一にして最大の購入理由になりうる。

そして正直、これだけのために欲しいと思わせる力が、確かにあった。

接客で「お、そう来たか」と思ったのもこの場面だった。撮った直後の写真を、その場でiPhoneに映して見せてくれたのだ。

スペックの数字より、目の前のサンプルのほうが納得感がまるで違う。

遅くて萎えたAIの隣で、人間の店員のひと手間が、製品の価値をちゃんと橋渡ししてくれた。

皮肉だが、これも一次体験として書いておく。

見た目:カッコいい。ただし、それは「レイバン」のカッコよさだった

充電ケースを含めて、見た目は文句なくカッコいい。

でも鏡の前でわかったのは、このカッコよさの出どころが、テクノロジーではなくレイバンというブランドの蓄積のほうだ、ということだった。

メタに期待して行った私が、いちばん良いと感じたのがレイバン由来の部分だった。

期待比率は、店を出る頃には逆転していた。

手の中にあるのは2026年のハードウェアなのに、どこか一世代前の感触がある。

それはたぶん、ガワ(レイバン)の完成度に、中身(メタのAI)が追いついていないからだ。

「AIデバイス」というより「ブランドサングラスにAIが乗ったもの」として完成している、という言い方がいちばん近い。

でも、これを欠点として書くのはフェアじゃない。

むしろここにこそ、このグラスの楽しさの核心がある。

世の中のスマートデバイスの大半は、「いかにもガジェット」という顔をしている。

腕時計型も、イヤホン型も、どこかメカニカルで、ファッションに溶けきらない。

ところがこのグラスは違う。

かけているだけで様になる。テクノロジーを身につけているのに、ファッションとして成立している

これは現状、ほかにほとんど例のないことだ。

毎日かけたくなる、人に見せたくなる、かけている自分が少し好きになる——ガジェットにそういう感情を抱くこと自体が珍しい。

日常を記録してくれて、しかも見た目で気分が上がる。この二つを同時に満たすデバイスは、今のところこれくらいしか思い当たらない。

唯一無二、という言葉を使っていいと思う。

補足:接客と、体験会の実際

体験会は予約制で、当日はQRコードを見せると待ち時間ゼロで始まった。

特設ステージのような大げさなものではなく、売り場の一角で、通常の客と変わらない距離感で進む。

気負わず行ける。

接客は良かった。私は40〜45分、担当の方と話した。最後は私のほうが切り上げたほどだ。

かなり予習をして行ったので説明の中身に新発見は多くなかったが、それでも心地よかった。

押し付けがましさがなく、こちらの興味に合わせてくれる。

詳しく知りたい人ほど、店頭で触る価値があると思う。

だから、私はこう判断した

整理する。

AIアシスタントとしての完成度に期待しているなら、今は待ちでいい。

音声の応答速度は実用に届いていないし、目玉の日本語翻訳もこの夏待ちだ。

加えて、この分野は各社の動きが速く、今後より新しいAIを載せた選択肢が増えていくことも見えている。

買い替えサイクルの谷で、いま急いで飛び込む理由は薄い。

裏を返せば、半年後にはメタ自身も含めて状況が大きく変わっている可能性が高い、ということでもある。

逆に、「自分の目線で家族や日常を記録する道具」と割り切れるなら、今買う価値は十分にある。

軽さとかけ心地は本物だし、目線で撮れる体験は他にない。サングラスとしての完成度も高い。

AIに期待するか、記録に期待するか——この一線で、自分がどちら側かを決めれば、判断はそんなに難しくない。

私の場合は、欲しかったのがAIのほうだった。

だからグッと我慢して、買わずに店を出た。後悔はしていない。

秋に、もう一度見に来るつもりだ。

最後に、これだけは本音として書いておきたい。

私は買わなかったが、この製品を低く見ているわけではまったくない。むしろ逆だ。

「AIグラスとは何か」「自分はテクノロジーに何を期待していたのか」を、ここまで考えさせてくれたガジェットは、私にとって初めてだった。

買うか買わないかで一日中悩み、買わなかったあとも頭から離れない——そんな製品はそうそうない。これはAIグラスという市場全体を刺激する、現時点での最大の傑作だと思う。

だからこそ私は、この製品の「次」に本気で期待している。

今日触れた物足りなさは、業界がこれからどれだけ伸びるかの予告編だった。

——ちなみに、買わずに店を出たあと、私は梅田の地下街で、すれ違う人の顔ばかり見て歩くことになった。

AIには笑いかけられなかったのに、街には笑っている人がいた。

その話は、別の記事に書いた。

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