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ウィスラーに学ぶ、国際スキーリゾートの底力——ニセコ・白馬・妙高は生き残れるか

はじめに

この記事は、先日見た白馬村内で土地を購入し宿泊事業を立ち上げた20代の方が「今後も白馬ドリームはあるのか?」と問いかけていた動画のアンサーです。
私はインバウンドに人気のエリアは誰かが必ず投資するので、正反対の小さいスキー場に対して注力することが多いです。しかし、リゾートから村営スキー場まで上手く価格階層を作っていかないと2極化が進み全体としては大変なことになると予測しています。
ここでは、ひとまずリゾートはほっておいても大丈夫と考える根拠を示します。

ウィスラーのこれまで

カナダ・ウィスラーは、2008年のリーマンショックで不動産価格がピークから5年で平均23.5%下落したという。それまで市場を支えていた米国シアトル方面の買い手は、カナダドル高で締め出された。国際的な買い手の比率も縮小し、地元ブリティッシュコロンビア州の買い手が中心の市場に一時的に様変わりしたそうだ。

それでも、ウィスラーというスキーリゾートそのものは、規模の縮小をしてこなかった。それどころか、1986年にイントラウェストがブラックコム山を買収し、1997年にウィスラー山も買収、2003年に統合。そして2016年には北米最大の運営会社ベイル・リゾーツが14億ドルで買収し、Ski Magazine誌の北米No.1リゾートとしての地位を確立している。資本は複数回総入れ替えになり、顧客国の構成も時代ごとに変動したが、リゾートとしての格付けと規模は、暴落のたびにむしろ拡大してきたことになる。

もちろん、年ごとの入込(来場者数)は環境や天候で増減する。直近の2023-24シーズンも、記録的な少雪でウィスラー・ブラックコムの来場が大きく落ち込んだと運営会社が報告している。ただこれは天候要因による一時的な波であって、ゲレンデの規模やリゾートとしての格付けが縮んだわけではない。

ここから学べるのは、ウィスラーの資産が「誰が所有しているか」ではなく「そこに何があるか」で決まっていたのではないか、ということだ。年間平均11.6メートルの積雪、3,000ヘクタール超のスキー可能エリア、1,600メートルの標高差。これは資本の都合とは無関係に、そこに居座り続ける資産である。資本が入れ替わっても、この資産を目当てに次の資本と次の客層が現れ続けたのだろう。

では、ニセコ・白馬・妙高はどうだろうか

私は観光や不動産の専門家ではないので、ここから先は素人の仮説として読んでいただきたい。ただ、このウィスラーの物語を日本のインバウンド人気エリアに当てはめてみると、いくつか気づくことがある。

まず雪質・雪量という核となる資産で見ると、ニセコの年間平均降雪量は14〜15メートルとされ、ウィスラーの11.6メートルを上回るらしい。白馬・妙高も日本アルプス・妙高連峰の標高を背景に、世界的に見て遜色ない雪を持っている。「資源の耐久性」という一点では、日本のスノーリゾートの価値は北米に劣らない、むしろ高いのではないかと私は思う。

資本の入れ替わりという観点でも、ニセコは既に一度、この試練を経験している。東急・西武がバブル期に開発を主導し、バブル崩壊とともに撤退、香港資本が引き継いで今日の姿になった。直近でも、中国系企業による大型リゾート開発が資金繰り悪化で頓挫し「ニセコバブル崩壊」の見出しが躍ったが、これも資本の入れ替わりの一局面と捉えれば、ウィスラーが辿った道と同じ型なのかもしれない。資源価値さえ失われなければ、次の資本は現れるのではないか。

中国は「敵」ではなく、補完関係になれるのではないか

意外に思われるかもしれないが、中国の存在はむしろ日本にとって追い風になっている可能性がある。中国では2014年に5施設しかなかった室内スキー場が、2024年には59施設まで急増したという。ただこれは「代替」というより「入口」として機能しているように見える。札幌市は中国の室内スキー場大手BONSKIと提携し、市内のスキー場で同社利用者向けのスキースクールを開設する計画を進めている。中国国内ではスキー指導者が慢性的に不足しており、日本人インストラクターに「1シーズン丸ごと中国で指導してほしい」という高額オファーが来ることもあるそうだ。中国の富裕層が本場の雪と指導を求めて日本へ渡るという構図は、既にできつつあるのではないだろうか。中国はアジア市場において敵というより、補完関係になれる相手だと私は考えている。

一方、長年山岳リゾートの雄であった欧州アルプスは、気候変動によって構造的な危機に直面しているようだ。アルプスの平均気温は産業革命前から約3度上昇し、これは世界平均の2倍のペースだという。学術研究では、今世紀末までに欧州スキーリゾートの約71%が存続の危機にさらされるという予測も出ている。フランスアルプスでは既に200以上のスキー場が雪不足で放置され、議会が契約打ち切りを決議した事例まで出てきている。

摩擦は「弱さ」の証拠なのだろうか

ニセコ・白馬では地価高騰や住宅不足といった摩擦が生まれている。ただこれは、成功している国際リゾートに共通するコストなのかもしれない。ウィスラーも「世界最高峰のスキーと、住民を置き去りにする不動産高騰という二重人格」と評されている。バルセロナや京都のオーバーツーリズムも似た構造を持つ。摩擦の存在は、その土地が失敗している証拠ではなく、むしろ資産価値が高いことの裏返しなのではないか、と考えている。

それでも残るリスク

もちろん、無条件に楽観できるわけではないとも思う。為替が大きく反転すれば、複数国に分散した客層でも同時に来にくくなる可能性は残る。また、2008年のドバイのように、顧客国は分散していても資金の出し手が世界共通の金融環境(世界的な金利上昇や信用収縮など)に同時に晒されれば、複数国の資本が同時に引く事態も起こり得るのではないか。これは特定国との関係悪化とは別の、グローバルな資本サイクルそのもののリスクであり、今のところ有効な防御策は私にも見えていない。

ウィスラーから学べるのは、「資源が本物であれば、資本や顧客国が何度入れ替わっても、リゾートそのものは生き残るのではないか」ということだと思う。ニセコ・白馬・妙高が持つ雪質・雪量という資産は、その条件を十分に満たしているのではないだろうか。問われているのは、この資産を活かし続けられる運営体制と資金調達構造を、誰がどのように構築しそれが地域にとってどのような恩恵をもたらすのかなのだろうと考える。


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