見出し画像

子どもが好きで授かったわけではないと気づいた1年前の私へ

1年前の今ごろ。私は35年間生きてきて、初めて見る自分の体型に戸惑っていた。席を譲ってもらうことを強要しているようでなんだか申し訳なくて、ピンク色のマークをつけては隠しながら家と会社を往復する日々。


それまで自分とは関係のない世界のものだと思っていた「不妊治療」を経て、やっとの思いで命を授かったのだから……妊娠があたりまえじゃないこともわかったし、感慨深さもあったし、もちろん嬉しかった。

でも当時の私はこんなことを書いていて。


「痛いのが怖い」とか、「仕事どうしよう」とか、「いろいろ生活変わってしんどそうだな」とか。自分のことばかり心配してる自分に気づいて。

私って子どもへの想いが薄くない……?

そこで初めて、自分の薄情さを突きつけられた気がした。こんな状態で私は母になれるのだろうか。そもそも私は子どもが好きなんだろうか。

あらためて考えてみると、もともと「自分は自分でいたい」願望が強い私にとって、妊娠・出産とは「せっかくなら経験しておきたいこと」だったのだと思う。

子育てすれば人生を2倍楽しめそうな気もするし。せっかく経験できるチャンスがあることを経験しないなんて、なんだかもったいない。

子どもが好きだから、ではなく「自分の人生を充実させるため」という理由で子どもが欲しいだなんて……どこまでも自分本位すぎる。

車の運転免許なら、挑戦してみて失敗したらまた受け直せばいい。結婚だって夫みたいに、またやり直せるチャンスがあるかもしれない。

でも、妊娠・出産はそうはいかない。命が誕生するのだから。

そう思うと、私には子どもが好きな気持ちがちゃんとあって、覚悟あって、その道を歩もうとしているのか?

だんだん自分に自信がなくなっていった。


そう、たくさんの人たちからおめでとうの言葉をもらう日々の中で、私は「子どもが好きだから欲しい」わけではないことに気づいてしまったのだ。


まだ彼とも彼女ともわからない人をお腹に抱えていた自分へ。産むときの痛さや仕事の引き継ぎのことが一番心配で、それ以降の想像なんて本当の意味ではできていなかったあの頃の自分へ。今日は手紙を書いてみたいと思う。



2024年7月の私へ

予定日まであと3ヶ月というところですね。

食堂でお昼を食べ終わった直後にミニドーナツの袋を膝の上に置いては、周りに引かれるほどバクバク食べていた自分じゃないみたいな日々も落ち着いて。誰がどう見ても妊婦らしい妊婦になってきた頃かな。

食べづわりなんて言葉知らなかったから、何かに取り憑かれたように食べる自分はなかなか怖かったよね。お疲れさま。

たまひよの雑誌を読んでイメージトレーニングしながらも、「普通分娩」と「無痛分娩」のどちらにするかの決心もまだついてなかった頃か。

痛くないほうがいいに決まってるのに、「いろんな方向から検討して自分の希望を決めろ」なんて急に決断迫られても困るよね……と、今でも思います。婦人科の先生にはおすすめしないと言われたけれど、同世代の友人ママたちは無痛を選んでる人が多くて、そりゃ混乱するよね。


結論から言うと、あなたは無痛を希望しながらもタイミング的に叶わず、普通分娩で産むことになります。どこかで覚悟してるだろうから、あまり驚かないかな。

今のあなたは、産むときの痛さに耐えられるのか?ということが何よりも心配だと思うけれど……意外と耐えられるし、これ以上ないくらいのスピーディーな安産になるからそこは安心してください。

あ、彼か彼女かわからなくてまだ呼び方も悩んでる頃だと思うけど、女の子だったよ。って、楽しみにしてるのにネタバレごめん。数日後にはわかるはずだから許して。

名前は今、メモアプリに箇条書きしてくれてる中から決めさせてもらいました。候補出しありがとう。


あなたの娘は生まれてなんともう9ヶ月も経ってしまって、今のあなたには全く想像のつかない世界線で私は生きてます。あなたの世界ではまだこの世に出てきてもいないのに、私の世界ではもう立って動き回ってるんだから……人間ってすごいです。

あなたの娘は生まれて以来、「いい子だね」と言ってもらえる機会が多くて、他の人のいろいろな話を聞くと手がかからない方なんだろうなとも思うけど……そんな私たちにもいろいろ、ありました。


信じられないと思うけど、生まれてすぐの頃は自分の子どもなのに人見知りすることになるよ。

病院には授乳室ってところがあって、そこにみんなおっぱいやミルクをあげに行くんだけど。他のママたちはもう長い付き合いのマブダチかのように「ミルク飲もうね〜」って普通に声をかけてるのに、私はうまくできなかった。

「おっぱいやミルクを正しくあげる」っていうタスクに夢中で、和やかに話しかける余裕なんて全然なかったんだよね。


今は出産の痛みで泣くかな?とか心配してると思うけど、その後の入院中に訳もわからず涙が出て、パパとの面会前に必死に拭く……なんてこともあるよ。びっくりだよね。

生まれたばかりのあなたの娘を泣かせないためには、おっぱいを吸わせるか抱っこしてるかの二択しかなくて。横になることもできないから朝まで寝れない、なんてことがあってね。

22時の消灯時間に部屋が暗くなってからは孤独な戦いで。夜になるのが怖いと思うけど、一時のことだから頑張ってね。泣かせちゃいけない、自力で泣き止ませなきゃいけない、って追い込まれると思うけど、勇気を出して助産師さんたちを頼ってほしい。なんとかなるから。

退院して家に帰ってきてからも、「よーし、おむつ替えちゃおう!」なんて言いながら初めて出会うテンションの高い自分が出てきて。自分じゃない自分に疲れることもあったり。

他の人の前ではごきげんなのに、なんで私の前では暴れん坊なの……って周りに伝わらない苦労に嘆いたり。

まあ、ほんとにね。いろいろあるよ。


9ヶ月も経てば少しは慣れてるんじゃないの?って思うかもしれないけど、今でも毎日バタバタしてるし、ヘトヘトになってる。

どんなに自分の寝る時間が遅くなっても、翌朝4時20分にあなたの娘は必ず目を覚ますし。

生まれたての頃は「されるがまま」だったのに今では暴れ回ってうんちをふかせてくれないし、おむつもはかせてくれない。おむつがはけなくて困るのは本人なのにね。

産んでからしばらくはおっぱいとミルクのことだけ考えてれば大丈夫なんだけど、今のこちらの世界では離乳食というものが始まっていて。1週間分のつくりおきをする日曜日がしんどくて、深夜のキッチンで絶望したりしてね。

自分が一生懸命作った食事が、食べ残された瞬間に生ごみになっちゃって、自分で処理しなきゃいけないときもあってさ……

ってこれから出産することあなたに言うことじゃないか。脅かすようなことばかり言って、ごめん。


辛いこと含めて「現実はなんでも知っておきたい派」のあなただからついついネガティブなことを吐き出しちゃったけど、それでもあなたとあなたの娘はなかなかいいコンビになれてると思うよ。少なくとも、今の時点では。

想像つかないと思うけどこちらの世界のリビングには絵本専用の棚ができてて、一緒に絵本を読んでお気に入りを見つけたり。

誰にでもニコッと笑うあなたの娘のおかげで、人見知りしがちなあなたも見知らぬ近所の人たちと会話できるようになって、憧れのママ友がたくさんできたり。

あなたが相変わらず見てるテレビ番組をたまに一緒に見ては「パチパチパチ」って手を叩いてて、その様子がやたら可愛く思えたり。

今のあなたは、子どもが生まれた途端にインスタが子どもの写真だらけになったり、LINEのアイコンや待ち受けが急に子どもになったりする人をどこか冷静な目で見てるよね。

自分が交わることのない違う世界の人、って思ってると思うけど……そうでもなくなるよ。

スマホの写真フォルダは信じられないほどあなたの子どもの写真で埋まるから、今のうちに容量はあけるか増やしておいてね。

ほんとにさ、他の人のことって浅ーくしか見てないもんだよね。世界の見え方が一気に変わって、当事者にならないとわからないことってこんなにあるんだ!っていまだに毎日驚いてるよ。


今のあなたは「子どもが好き」というより、自分のために子どもがほしいと思ってることに気づいて、ちょっとショック受けてるよね。

残念ながら、出産したからといってその考えが大きく変わることはなくて。

あなたの娘のことが好きかどうかなんて、出産して以来、一度も考えたことないし。

「好きだよ」「愛してるよ」って言葉をかけたこともない。

でも一つわかってるのは、できる限り長く、いい仲間として過ごしていきたいってこと。

人生を共にする仲間であることがあたりまえすぎて、好きかどうかなんて考えることもないってかんじかな。いつからかパパに対してもそうでしょ?

あなたは立派なお手本として娘の前を歩くのは無理かもしれないけど、仲間としてずっと横にいることはできるんじゃないかな。

好きかどうかなんて、どうでもいいくらいにね。


ほら、あなたの好きなアイドルが、仲間であるメンバーに向けてこんな歌詞を書いてたじゃん。


感謝なんてしないけど
此処からいなくならないで


なんか今、その感覚です。照れ臭くて、あらたまって「生まれてきてくれてありがとう」なんて言えないけど。

どうかいなくならないでね。ずっといてね。

そんな風に思ってます。

今のあなたに、私が何を言ってもあなたの不安は消えないと思うし、何も変わらないと思うけど。案外、幸せってこういうことを言うのかな?って瞬間に立ち会えてるよということは伝えておくね。

どれだけ不安でも怖くても、運命のその日はやってくるから。まずはあと3ヶ月間、今しかないお腹の中の人との日々をじっくり味わってください。

その日々のおかげで、今の私たちがいるから。

2025年7月の私より

いいなと思ったら応援しよう!