見出し画像

夫は未来から来たおじさんだと思う

5年前の結婚式の日。大学時代の友人たちが「旦那さん閲覧禁止」と書かれたカードをプレゼントしてくれて。そこには歴代の元彼たちの写真が順番に貼られており、最後に夫の写真が貼られていた。「今の人が一番いいね!」というメッセージ付きで。

大学時代の付き合ったり別れたり、告白したりされたり、振ったり振られたりの全てを見てきた彼女たちが言うのだから……きっと間違いないのだろう。私は自分にとって「一番いい」人と結婚したのだと思う。

でも結局、結婚ってタイミングだよね?たまたまお互い結婚に前向きなときにフリーで、相性がよかったってだけだよね?それだけで「私にとって一番いい」だなんて思い込んで、一生を共にする(はずの)相手を選ぶって実は恐ろしくない……?

私にとって一番いい人ってどんな人なのだろう。何をもって私が誰よりも愛し、私のことを誰よりも愛してくれているのが今の夫だと言いきれるのだろう。


と言いながら、そんな疑問への答えがどうでもよくなるくらいに夫との生活は日常になってしまった。二人の頃も去年娘が生まれてからも心地いいから、ありがたく思いつつ。来年もこの状態が続いているかと聞かれると……自信はない。

来年から私が仕事復帰することになり、夫はこう言った。

「復帰した途端に、働いて働いて働いて参ります!ってならないでよね。」

育児と仕事のどちらも完璧にしようとしてうまくいかず、絶望する私のモノマネをしながらさらにこう続ける。

「ああ……もうだめだ……って絶望してる姿が目に浮かぶよね。上司から早く帰れって言われてるのに、今日は夫に娘を頼んだのでもう少しやってから帰ります!とか言って、どうせ遅くまで残業するんだよ。そうなると思わない?」

悔しいけれど、その通りになる自分が容易に想像できた。こんなにも私に対する解像度が高いなんて……彼はこの後起きる全てを知っている、未来から来たおじさんなのではないだろうか。


そうだとしたら、どうすればそんな未来を乗り越えられるのか……解決策も聞きたい。そう思い尋ねると、答えは思わぬもので。

「ないね。だって誰からアドバイスされても聞かないじゃん。」

彼からの即答に愕然とした。でも、私を知り尽くした彼の答えは、多分合っている。いつか絶望するときが来ても回避はできないから、過ぎるのを待つしかない……というのが彼のアドバイスだった。

そんな……私は明るい未来を予言してほしいのに……

「唯一できるとしたら」

おじさんの言葉は続く。

「うまくいかないイメージをしておいて、はいはい、やっぱりきたこれ!想定内です!って言えるようにしておくことくらいじゃない?」

回避はできなくても、想定できていれば心は軽くいられる。どこまでもリアルな私を想像し、アドバイスをくれる彼はさすがだった。


私のことを誰よりも愛してくれているのが今の夫だ、と言い切るのは難しい。でも、こんなに私の未来に対する解像度が高いおじさんは他にいないし、それこそが私にとって「いい人」ということなのかもしれない。

私も結婚してからの6年間、同じくらい彼のことを見てきた。私が復職しても彼は不器用な私を横目に軽やかに、器用に、様々なことを乗り越えていくのだろう。自分が抱えてるもろもろは、見せないようにして。未来から来たおばさんとして、そんな姿が目に見えている。

これが彼のことを愛している証拠になるかどうかはわからないけれど。互いの未来を予言し合える二人というのは、夫婦としてなかなかいいのかもしれない。

ときに厳しく、苦しい未来が見えていても。はいはい、やっぱりきたこれ!想定内です!と言いながら、共に向かっていく二人でいられたらいいなと思う。

いいなと思ったら応援しよう!