フラれるのがしんどい曜日は何曜日?
問題です。
フラれるのが一番しんどい曜日は何曜日でしょう?
まるでなぞなぞみたいだが、ちょっと真剣に考えてみてほしい。
正解は、火曜日。もっと言うと、新年度が始まったばかりの火曜日……だと、個人的には思っている。
今まで金曜日にフラれたことも、日曜日にフラれたこともあるが、火曜日はどの曜日よりも辛かった。
新社会人になりたての、まだ部署への配属もされていない研修生だった頃。私は大きな不安を抱えながらも、毎日の研修を通して同期たちとすっかり打ち解け、青春の続きのような充実した日々を送っていた。
その一方で、2011年3月という日本中が混乱し、悲しみの中にいたタイミングで大学を卒業した私。卒業式も追い出しコンパも中止になって、きちんとお別れできずにいたのが大学の仲間たちだった。
特に、サークルの追い出しコンパは先輩たちの姿を見ながら、「いつか自分のときも、後輩たちがこんな風に送り出してくれるんだ」と期待していただけにショックが大きかった。
それでも、所属していたサークルの新入生たちを歓迎する「新歓合宿」が5月に予定されていて、卒業したOBOGたちも参加して良いとのことで。久しぶりに仲間や後輩たちに会えることを楽しみに、日々の研修に取り組んでいた。
よし、今週も研修がんばるぞ!と気合いが入っていた、とある月曜日。当時お付き合いしていた彼から連絡があった。彼はサークルの後輩で、一応彼氏だったはずだが……関係は冷め切っていて。連絡の頻度や内容を見て、もう恋人として好かれてないことはなんとなく察していた。
そんな彼から「明日の夜電話していい?」と連絡が来た、月曜日の夜。普段から電話するかんじでもなかったので、何をあらたまって……と冷静なフリをしつつ、なんとなく嫌な予感はしていた。
日付が変わって、火曜日。どこかで電話のことが頭によぎりながらも、いつもどおり仲間たちとワイワイ一日を乗り切り。いよいよ夜になった。
電話はかけるにしても、かかってくるにしてもソワソワしてただでさえ苦手なのに……こんな不穏な電話に立ち向かわなければならないなんて。
向こうからかかってきた電話をとると、内容は思っていたとおりのものだった。
他に好きな人ができた。
別れたい。
なんで?とか、誰?とか、質問する気力もなくて。そうだよね、わかってたよ、と気持ちは落ち着いていたはずなのに、気づけば涙がポロポロ。なんだこれ、ダサすぎる。悔しすぎる。そもそも電話で振るって、なんだよ。
電話が終わって、友人に「フラれたよ」と連絡して慰めてもらっているうちに、ふと気づいてしまった。そういえば新歓合宿、今週末だ。
「ごめん、私、新歓合宿行けなくなった」
昔のことすぎてLINEだったかメールだったか手段は忘れたが、無心で同期たちにそう送った。
彼が行くことも、そこに彼が好きな相手がいることもわかっていたので、私なんかがノコノコと行けるはずがない。楽しみにしてたのになあ。
スッキリした気持ちで、好きな人とも仲間とも合宿に参加できる彼がうらやましい。
そんな彼に好かれてる彼女がうらやましい。
なんのわだかまりもなく、純粋に合宿に参加できる全員がもはやうらやましい。
みんなが楽しんでいる最中、私は一人で一体どう過ごせばいいのだろう。
みじめすぎて、こんな新社会人になるはずじゃなくて、嫉妬の気持ちがぐるぐる渦巻いていた。
何より恨んだのはこんな気持ちになったって、まだ火曜日なわけで。また明日から、水・木・金と何事もなかったかのように爽やかな顔をして、私は研修の日々を乗り越えなければならないのだ。
あれから14年。「火曜日にフラれるのが一番辛い説」を提唱するきっかけになった彼も、私も、お互い結婚して子どもがいる。
離れ離れになったからこそ、今のお互いの幸せにたどり着けたんだと思えば、私は嫉妬にまみれたあの夜に感謝すべきなのだろう。
そもそもこんな風にnoteに書けていること自体、当時からすれば信じられないわけで。それは、あの夜をポップに振り返られるくらいの今があるおかげだ。
ただ一つ、「人を振るなら週の後半がいいよ」とこれからお別れの予定がある人には、そう教えてあげたいと思う。ぜひ金曜日あたりで、ご検討を。
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斉藤ナミさんの新連載を推そう!という池松潤さんによるこちらの企画で、「嫉妬」をテーマに書かせていただきました。
みなさま力作で、ドキドキしながら参加させていただきました……貴重な機会をありがとうございます……!
斉藤ナミさんの新連載はこちらから。一人っ子の私には経験がないけれど、4人兄弟の長男の夫にはそんな頃もあったのだろうか……娘にそんな思いをさせる未来はあるのだろうか……などと思いを巡らせつつ、拝読しました……!
