読書記録『イン・ザ・メガチャーチ』|どうか、みんなが救われて欲しい
久々に単行本を買って読んだ。
朝井リョウさんの『イン・ザ・メガチャーチ』
(話の核心には触れていません)
単行本は、物を持たない暮らしと電子書籍も浸透し、そして節約が頭をよぎる今、買うという選択肢があまりなくなっていました。けれど、この本が積んであるのを本屋さんで見かけて「朝井さん新刊だ!今!読みたい!」と心のスイッチを押されて購入。装丁が綺麗で、単行本の良さも改めて感じています。
『何者』『正欲』を読んで、朝井さんの文章好きだなーと思っていたのですが、この本を読んでやっぱり好きと思う。読みやすい理由の大きな一つは同世代かも(ってわたしが上なんだけれど)生きてきた時代が近しいので、共感度が高い!
『神がいないこの国で人を操るには、
“物語”を使うのが一番いいんですよ』
読みたいと思ったきっかけ、帯に引用された言葉。
昔から、神様信じてる人って羨ましいなーとうっすら思っていたわたし。神様を信じるきっかけってそれぞれにあって、それはもちろん困難なことがあった場合の方が多いと思う。なので、わたしのうっすら思っていたことは本当に軽薄で良くない思考だとは思うんだけれど。信じるものは救われるってことあるよねと。それを単純にいいなーと思ってました。元々生きる意味ってなんなのよと小学生から思っていた捻くれ者のわたしは、生きる指針を持てることが羨ましかった。
内容は今を彩る「推し活」の話。そこから起因するあれこれ。
わたしにも推しがいます。物語に出てくるようなオーディションからできたグループなので、推し活のシステムチックな話やSNS界隈の話は、胸にグサグサと来ました。わたしは自称ゆるく推しているタイプではありますが、目覚めさせるような解説の数々。推し文化をきちんと知っていなければわからない感覚を、びっちり言葉で説明されるので、恐ろしい。一瞬推し活から目覚めそうになった。けれど、推しからパワーをもらって生活しているのは事実は、確かにわたしの現実にあるので「わたしの推しは違うけどね」なんて言葉を頭で再生しながら読み進めた。けど、「わたしの推しは違う」ということすらも、みんな経済活動の一環であると朝井さんは全ての角度から説明してくる。その言葉をぶん投げてくる感じ、とても好きです。
登場人物ごとに視点が切り替えられながらも、現実をまざまざと見せてくるのがとても面白く、こわい。推しがいる立場としては、最後どうなってしまうの?という恐ろしさもありながら読み進める。推し活に失望するのか、救われるのか。
ちなみに、朝井さんは推し活を否定しているわけではなく、批判と肯定のぶつかり合いを言葉にしているとわたしは感じました。インタビュー動画などは見ていないんだけれど、物語からは決してマイナスには言ってないと感じた。ただ事実を見つめた物語という印象。推し活をしている人たちも、みんなそれぞれ否定と肯定を自分の中で繰り広げて、生活に落とし込んでいると思う(そして、その描写ももちろん書かれている)
滑稽だけれどもどこか近くに居そうな、もしかしたらわたしかもしれないと思わせる登場人物たち。そんなみんなが、どうかどうか救われて欲しいと切実に願いながら読んだ。それはわたしが救われることでもあるから。
朝井さんの畳み掛ける言葉たちが好きです。全部説明してくれる。物語の中で「雑談」「情報を共有する楽しさ」の話が出てくるんだけれど、この部分もわたしには刺さった。それもまた推し活と同じで、時間の無駄と捉えるか、人生の彩りと捉えるか。長くて遠い生きづらい人生をどうやって過ごしていくかは、わたしたちがもがきながら選び取るしかない。そういう格好悪いけれども生きるためのもがきを、朝井さんは全て見せてくれるから好きだなーと思う。過去の名作からは味わえない、今の空気を感じながら読める物語。
推しに限らず、趣味である手帳もそう。自分になって神になる存在が、光が、生活にあることで救われて生きてます。わたしは少なくともそうだな。
『結局誰だって、信じる物語を決めて生きているだけだ』
若干ネタバレになっちゃうかもしれないですが、単行本についていた購入者特典の動画。物語の世界を具現化した映像なのだろうかと思ったら、まさかの朝井さん自身のビハインド動画で笑いました。読み終わった直後に動画を再生した時の温度差たるや。リトルトゥースなので、なんとなくの人柄は知っていたけれど。金髪のくだりとか笑っちゃう。そして動画の中で、製本されて朝井さんの手元に到着した『イン・ザ・メガチャーチ』を見たら、単行本で買って、そして旬で読めて良かったなと思いました。
朝井さんの推しは一体誰なのだろうか。
読書ノートへの記録も終了。
ずっと手元に置いておきたい本の1冊になりました。


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