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【ショートショート】 やっぱり家が一番

子供の頃、家族旅行から帰ってきて、「やっぱり家が一番よねぇ」ってやつ。あれがすきじゃなかった。


だって圧倒的に旅行の方が楽しかったし、非日常から日常に戻る瞬間は、ほっとするよりも、終わってしまった寂しさの方がずっと強かったから。


「家が一番よね」と言いながら、「ご飯つくらないと」とぶつぶつ言って母の機嫌が悪くなるのもイヤだった。


だから、おれは大学生になると頻繁に旅行に行くようになった。自転車で日本中を巡り、社会人になる頃にはバックパッカーとして世界中を旅した。


最初は有名な博物館や観光スポットをまわっていたが、次第におれの興味は自然、特に山に向き始めた。


山は良い。


ゴール(山頂)に到達するには、しっかりした準備と、自身の体調管理、急変する天候に対する迅速な対応、そして運。様々な要素が必要となる。


山はみんなに平等で、山はみんなに厳しい。


失敗しても山は逃げないし、何度でも挑戦できる。


いつの間にか、仕事の合間に登るんじゃなく、登山の合間に働いていた。


同じく山が好きな妻と出会い、結婚。
3年前にかわいい女の子も授かった。


大好きな家族がいて、好きな山登りを続けられる。
こんな幸せなことは無い。


今回挑んだのはスウェーデンのケブネカイセ。


スウェーデンで最高峰のこの山はオーロラも観測できる人気のトレッキングスポットだ。比較的技術も不要な西ルートで登るのが一般的だが、それに対して氷河を超えていく東ルートはクライミング技術が必要な危険な道だ。


昨年一度挑んだ時は氷河に阻まれ断念したが、今度こそ攻略したい。



万全の準備を整え、愛する妻と娘に「行ってきます。帰ったら唐揚げ作ってね」と別れを告げると、おれはスウェーデンに飛んだ。



今回はとても順調だった。天気も良く、自身のコンディションも良くて、5時間ほどで登頂に成功。


周囲の山を見下ろし、どこまでも続く荒野と雪景色を目に焼き付けた。



そして帰り道。


滑落しないよう慎重に凍った道を降りていく。
一歩一歩、アイゼンが雪を掴む感触を確かめながら降りていく。


「ハァ……ハァ……フッ」


自分の呼吸以外に音のない世界。目の前も後ろも真っ白で太陽の光を浴びて輝いている。


美しい。厳しさの中で見つけられるこの美しさがおれは好きなのだ。あぁ、この感動を早く家族に伝えたい。



「あっ」




一瞬だった。



慎重に踏み出したはずの右足は、あるはずの踏み場を見つけられず、おれはクレヴァスの空間に体ごと投げ出された。







妻が泣いている。


娘はまだ状況が飲み込めないのか、分かっていてそうしているのか、妻にぬいぐるみを見せて一生懸命気を引こうとしている。



そしておれはそれを上から見下ろしている。



妻と娘の横には袋に入ったおれのカラダ。



どうやら奇跡的に見つかって帰ってこれたらしい。でももう、あの腕で妻を抱きしめることも、あの手で娘の頭を撫でてやることも叶わない。



「やっぱり家が一番」



今は心の底からそう思う。







よしまるさんの企画に参加します。「旅」をテーマにしたショートストーリー。6作目です。



何でこんなに同じテーマで書くのかって?


そこにショートショートがあるからですよ。(言って見たかっただけ😂)


ちなみに、バックパッカーの経験も登山の経験もありません🥹


よしまるさん、何度もすいません。よろしくお願いします😆

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