【創作大賞感想】 しあわせの色を、ママにおしえてよ
【あらすじ】
主人公の木下 愛(きのした あい)はITの専門学校教員として働く一児の母。単身赴任の夫、啓太(けいた)の帰りを待ちつつ、キャリアのため仕事にも奮闘していた。
そんな中で、娘の幸(さち)が発達障害ではと保育園から指摘を受ける。そんなはずはないと思いながらも、幸が友達をケガさせてしまい、「娘が発達障害かもしれない」という現実に夫と向き合おうとするも、受け止めきれないでいた。
教員としての仕事を心の頼りに頑張る愛。しかし余裕もなくなり、家族にもつらく当たる自分に心が疲弊していく。
そんな彼女が、自分が信じて支えてきた生徒、夫、そして愛する娘に改めて向き合うことで、この世界のやさしい「色」に気づいていく。
我が家の小学4年の長男はいわゆる自閉症スペクトラムという診断が付き、さらにはこの5月から学校に行けなくなっている。
診断が付いてからは療育教室にも親子3人で毎週通ったし、就学前の児童相談センターも3人で行った。その後も保育園や学校の保護者面談は毎回出ている。
長男は昔からこだわりが強かった。そして思っている事と違ったことが起きた時にパニックになってひどい癇癪を起こすことが親にとっても本人にとっても悩みだった。
「ぼくのあたまのなかにもやもやがあって、おこっちゃうのをとめられないんだよ!!」
長男は5歳くらいからそうやって自分の苦しさを言語化して泣きながら教えてくれたけど、その苦しさから解放することは今もできていない。
妻はそんな息子に対して声がけに困っていたが、私は息子の気持ちを汲むのが比較的得意で彼の怒りを鎮めるのは私の役割だった。
怒っている時、
「今長男くんの頭の中におこりんぼの敵が何人いるかな?」
「ひゃくおくまんにんいる!!」
「じゃあ、長男くんは今1人で戦ってるんやね。これは大変だ!でもほら、想像してみて!長男くん強いからどんどん敵やっつけて、ほらだいぶ減ったんじゃない?今何人になった?」
「んーじゅうおくにんくらい」
「お!じゃあ今度は仲間がきたよ!一気に形成逆転だ!どんどん倒すよ!」
みたいなやりとりをしながら、怒りが鎮まるよう話したことを思い出す。もちろん上手くいかないことも沢山あったけど。
そうやって、診断がついてからも、勉強を見たり、ボーイスカウトの活動で一緒にキャンプしたり、夏は毎晩のように虫取りしたり、長男と過ごす時間を沢山持ってきた。
だからなんとなく自分も父親として十分な役目を果たしている気でいた。
学校に行けなくなった今、妻はすごく怒っている。
あれだけ注意深く三年生まで学校と連携して、不登校にならないようやってきたのに、新しい担任になった途端全部が後手後手になり、タイムリーに対応できなかったから今の状況になってしまった。なにしてくれてるんだ!と。
当の本人はひたすらゲームと動画の世界に生き、生活リズムが完全に崩壊している。
そして横では2歳のやんちゃな次男がママ ママと後を追いかけている。
そんな限界まで頑張っている妻を置いて私は今、出張先の遠い異国の地にいる。
正直海外出張はここ数年避けてきたが、サラリーマンとして流石にもう避けられない空気を感じた為受けるしかなかった。
私がいない間に妻と長男の関係が最悪の所まで悪化する事態を懸念したが、それでも2人を信じるしかなかった。
仕事をしている間もLINEがばんばん飛んでくる。やりたい放題、言いたい放題の長男に対するイライラの言葉。このトゲトゲを直接受け止め続けるとダメージで死んでしまうことは分かっているので、なんとか上手くいなしながら妻が頑張ってくれていることに対して感謝の言葉を伝えることしかできていない。
でも、(ようやくここから感想です!)shiiimoさんのこのお話を読んで、やはり私が妻と比べてどれだけ楽に過ごしているのかを改めて思い知らされた。
主人公の愛さん同様、療育から様々な機関に相談する手配は全て妻に任せてしまっていた。
何より私が出社している間、妻は毎日家で子供を見てくれている。
頭では分かっていたし、その労力に感謝しているのは確かだけど、本当に妻が欲しい言葉や支えて欲しいことをできているだろうか。
多分1割くらいしかできていないだろう。
愛さんは強い。本当に強い。
自分の弱さと向き合いながらも、家族のことも仕事も全力を尽くしている。
4話目から涙が止まらず、最終話は1人ホテルで号泣だった。
この涙はいくつもの感情が混じった涙だ。
愛さんのがんばりに対する感動の涙。
幸ちゃんの健気さに対する感動の涙。
自分の行動を顧みて反省の涙。
今も頑張っている妻と長男に対するごめんねの涙。
フィクションだけど、shiiimoさんご自身がこれまで経験してきたことが恐らくギュッと凝縮されていて、さらにはshiiimoさんらしい心情の描写が本当に丁寧でリアルで、涙なしには読めなかった。
親としての葛藤、夫婦の在り方、子供の尊さ、家族愛。色んなことを改めて考えることができました。
自分はシチュエーションが近かったのは確かだけど、発達の凸凹があってもなくても子育ては大変だし、子育てに限らず仕事をしている方は皆共感できる部分が沢山あると思う。
また色というキーワードでその時々の心情が表現されていて、最終話で見事に集約される展開も素晴らしかった。
締切も間近なこのタイミングでこんな素晴らしい作品に出会えたことを感謝します。
shiiimoさん、ありがとうございました。
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