【ショートショート】 お父さん大好きっ子
「ミキちゃん。す、すきです。おれとつきあってください!」
満開の桜の下。おれは勇気を振り絞りミキちゃんに告白した。
「……うれしい。でも……」
くっ……! だめなのか?! 数秒の沈黙が何分にも感じる。
「いいのかな。わたしで? ”お父さん大好きっ子”だよ?」
上目遣いにこちらを見るミキちゃんに一気に力が抜けた。
「え? 家族が大切ってことでしょ。アリよりのアリっしょ!」
「うふふ。ケントくんやっぱり、おもしろい。じゃあこれからよろしくお願いします♡」
おれたちを祝福するかのように桜吹雪が舞い散る。大学2年の春、おれとミキちゃんはお付き合いを始めた。
🍁🍁🍁
あれから半年。ミキちゃんは家庭的ないい子だ。
お花見に行ったときにお重のお弁当を作ってきてくれた(しかも3段!)のには驚いたけど、おれのシャツのボタンが取れかかっているのを見て、すぐにその場で直してくれたり(カバンからでっかい裁縫バサミが出てきてびびったけど!)、風邪をひいた時はおかゆを作って看病してくれた(熱を測るのにおでこをくっつけてきてドキドキした……!!)。
確かにちょっと過剰だけど、いいご家庭で育ってきたのがすごくよくわかる。”お父さん大好きっ子”って自分で言ってたもんなぁ。いい奥さんになりそうだなぁ。
「ねぇ、ケント。なにニヤニヤしてんの?」
「あぁ、ごめん。旅行のこと考えたら楽しくなっちゃって」
そう、おれとミキちゃんは初めての旅行に行くのだ。場所は京都。秋の京都なんてきっと紅葉が美しくて、鴨川で等間隔に座っちゃって、肌寒いねって2人の距離も近くなって……!!
「まぁたニヤけてる!」
「ごめんごめん」
🍁🍁🍁
そして京都旅行当日の朝。
新幹線の改札で待つおれに手を振るミキちゃん……とあれはだれだ?
「えと……こちらのひとは?」
「あ、わた」
「ミキの父です」
ミキちゃんが返すのを遮って割り込んできたのは髪の毛をオールバックにした口髭のおじさん。
「へ……お父さん? なんで?」
「君にお義父さんと呼ばれる筋合いは無い!」
「え? あ! すいません! そういうつもりじゃ……」
「あ、ごめん☆ これ1度やってみたかったんだよ。それにしても京都久しぶりだなぁ。なぁ、ミキ、いつ以来だろ?」
え? 一緒に来るの?
「桜観に行って以来だから半年ぶりかな? ね、お父さん♡」
行ったばっかじゃん! 来なくていいじゃん!
「そうだったな。あの時はタケルくんだっけ?」
「違うよ! それ去年だし。もう、お父さんやめてよ! ケントの前で!」
こんな形で元カレの話聞くとは思わなかったよ。てか、どんだけ京都行ってんだよ!
「お。新幹線きたぞ。ミキは窓際だよな。隣が私。通路挟んでケントくんね」
なんでその席順なんだよ。
「ん? ケントくん、なにか言いたそうだなぁ。あ、心配しないで! ちゃんと持ってきたから。これでしょ?」
トランプじゃねぇわ!
🍁🍁🍁
結局名古屋までは「大富豪」、名古屋から京都までは「ババ抜き」をしていたら乗り過ごすところだった。そしてババ抜きじゃなくてパパ抜きで京都には来たかった。
清水寺、三十三間堂、平安神宮、そして嵐山。
全てお父さんの解説付きで見て回った。
嵐山ではお父さんオススメの猿を教えてもらい、お父さんオススメのお茶屋さんで和菓子を食べて休憩をとる。
さすが京都に行きまくってるだけのことはある。もうあれだ。この人をツアーガイドと思えばいいんだ。
いやいや、やっぱり無理だ。ちょいちょいタケル(元カレ)とのエピソードを挟んでくるのが、要らない情報すぎる。
確かにこの2人、仲が良い。
よく見たらお揃いのネックレスしてるし、どっちもボーダー柄でペアルックみたいだし、気がつくと2人で仲良く歩いている後ろをおれが付いていく形になっている。
これじゃあ2人の旅行におれがお邪魔してるみたいだ。
おれは勇気を出してミキちゃんに聞いてみた。
「ねぇ、前付き合ってたタケルって人とどうして別れたの?」
「んとねぇ。わたしにも分からないんだけど、京都旅行から帰ったら別れようって言われたんだよね」
やっぱりそうなるよな。会ったことないけど、タケルとは仲良く飲める気がする。
「ねぇ、ケント。ケントは違うよね?」
急に真顔になってジロリと見つめるミキちゃん。
その向こうで、同じくおれをジッと凝視するミキちゃんの父親と目が合って、思わず下を向いた。
ちょっと間が空きましたが、よしまるさんの企画参加4作目です。
「旅」をテーマにしたショートストーリーということですが、私はショートショートの修行と捉えて参加させていただいてます。
同じテーマで書くって難しいけど楽しい😊
よしまるさん、よろしくお願いします☺️
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サポートいただきありがとうございます😊嬉しくて一生懐きます ฅ•ω•ฅニャー