ピカソをずっと探している
蠱惑(こわく):魔性に心を奪われるような魅力
畏怖、陶酔、昂揚ーー
それらが交じり合って、全身の細胞が泡立つ。
対峙して、足が固定されたかのように、その場から動けない。
そんな経験を……かつて一度だけしたことがあった。
◇◇◇
2008年10月
その日は内定式に出席するため、京都から上京していた。
帰りの新幹線までの空き時間、何気なく立ち寄った美術館。
特に目当てがあったわけでもなく、 まさに不意打ちだった。
目の前に現れた壁一面の絵。
それを前にして、わたしは動けなくなっていた。
それまで絵画と言えば、ダビンチやフェルメールのようなリアリズム、あるいはモネやルノアールのような印象派が自分の好みだと思っていた。
ところがその絵は、わたしが触れてきた絵画とはほぼ真逆だった。
色はブルーとグレー調でなんか暗いし、対象も歪んでいて抽象的。
美しさや優しさとは対角線にある、激しさ、怒り、荒々しさ、そして寂しさ。
それは、生と死のないまぜになった色だった。
まるですぐにでも壁から這い出して、襲い掛かってくるような圧倒的迫力。
かつてないオーラを全身に浴びて、それから小一時間その場に立ち尽くした。
絵の作者はパブロ・ピカソ
言わずと知れたキュビズムの巨匠だが、実際目にしたのは初めてだった。
どうしてそんなにその絵に惹かれたのか、いまだにわからない。
とにかく魔法をかけられたかのように、その場から動くこともできず、ただただじっと絵を見つめ続けたのだった。
◇◇◇
その後も、多くの名画を見た。
なんなら、ピカソの他の絵も何度も見たが、あんなに衝撃を受けたのは後にも先にもあの時だけだった。
もう、そんな衝撃には出会えないと思っていた。
やっぱりピカソは特別なんだ。
その特別な巨匠でも、あんな作品めったに描けないんだ。
それが……
最近になって、あの時と似たような衝撃を受けた。
noteだ。
何気なく読んだ文章。
スマホの画面越しに伝わる筆者の熱量。押し寄せる感情に全身鳥肌が立ち、目を離せなくなる。
圧倒的な迫力に息を飲み、心揺さぶる表現に涙を流す。好きだという気持ちで胸がいっぱいになる。
まさに……蠱惑
では、その筆者たちは名が通っているかと言われると決してそうではない。
文章がうまいかどうかも関係ない。整っていなくてもいい。むしろ、むき出しの心で、全力でぶつかってきた文章にこそ、あの日と同じ衝撃を与えられることがある。
そんな文章を自分も書きたいと思っている。
だから、書き続けるんだ。
簡単には書けないその文章を。
自分だけのピカソを。
呼び覚ませ。
灯火杯 4thにエントリーします。
灯火さん、よろしくお願いします😊
募集は9月30日までです。
テーマは「書く人へのエール × 秋 × アート」
どしどしご参加ください✨️
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サポートいただきありがとうございます😊嬉しくて一生懐きます ฅ•ω•ฅニャー