京大生が女子高生に頭下げて時給780円稼いだ話
「ほんっとに、使えんなぁ」
アチアチのカレールーが入った、10キロ以上ある金属製の器をひっくり返し、顔面蒼白で周りのスタッフに頭を下げる。
ここは大学の食堂。
夕方の営業開始まで30分もない。
この時間はサークル終わりの学生や、大学院生でごった返す。早く準備しないと。
もちろん、こんな失敗、したくてした訳じゃない。あまりに熱くてびっくりしただけだ。でも事態は重大。火傷した指の痛みなんて気にしてる場合じゃない。とりあえずぶちまけたルーを綺麗に掃除しなきゃ。
🍛🍛🍛
食堂でバイトを始めたきっかけは、シンプルだった。
大学から近くて(むしろ中にある)、まかないが食べられるから。
この時点で飲食店ナメテたと言わざるを得ない。
大学の食堂は、王道メニュー以外にも日替わりメニューや、季節のイベントメニューが沢山ある。
皿に何を並べるか。毎日メニューは変わるくせに、トマトの数まで決まっている。
とにかく覚えることがめちゃくちゃ多い。
しかも開店と同時に腹ぺこの学生が大量にくるので、分からないことがあっても先輩方に聞く余裕もない。
先輩方とは、女子高生さまと、おばさま達だ。
そしてバイトリーダーが、高校卒業間もないお兄さま。
そんな皆さまから、ひっきりなしに罵声を浴びせられる。
あれ持ってこいだの、なんで覚えられないんだ、だの。
それで時給780円。
この時点で京大生としての薄っぺらいプライドは、バキバキに割られた。
家庭教師のバイトならクーラーの効いた部屋で子供とお菓子を食べながら、ゆったり過ごして時給3500円である。
じゃあ、なんで食堂のバイトを辞めなかったのか。
それは、店長が怖すぎたから。
初日に、「京大生は根性ないからなあ。ほんまにやる気あるんやろなぁ?」と詰められて、思わず「ひゃい!」と元気な返事をしたものだから、辞めますの4文字が言えない。
人手が足りないのか、シフトもガンガン入れられて週5で働くことになった。週3って聞いてたのに。
毎日心の中は大泣きで、とにかく辛くてしんどかった。
仕事終わりに、バイトリーダーのお兄さまが、まかない用に唐揚げを揚げてくれる。
でも揚げたての唐揚げは女子高生さまやおばさまの大好物。カースト最下位の京大生には食べる資格もない。
いつも広い食堂の隅っこで、冷たくなったチーズチキンカツを3枚無理やり口にほおりこむ。早く立ち去りたいものだから、むせながらお茶で流し込み、逃げるように食堂を後にする。
そんなある日、更衣室で着替えていたら隣の女子更衣室から声が聞こえてきた。
「ほんまにあの新人使えんよな。今日はどんなミスするかな」
予想もしてなかった角度から思いっきり殴られて、その言葉で完全に折れた。
もうダメだ。ここにいたら、自分が死んでしまう。
その日の仕事終わりに店長に辞めることを切り出した。
店長は烈火のごとく怒り狂い、まじで包丁で刺されるかと思ったけど、最後は「今月いっぱいはしっかり働けよ」と言われてその場は切り抜けた。
1ヶ月耐え忍ぶうちに、仕事に少し慣れて、やって行けるかなという状態になった。
でも冷静に考えて時給780円はないわ、とすっぱりキッパリ辞めた。
こちらの企画に参加します。
無職さん、よろしくです🥹
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