創作大賞感想文 : みくまゆたんさん『あなたの懸賞金を決めてください』
みくまゆたんさんのこちらの作品を読んだ。
あらすじにある通り、2035年という比較的近い未来の話。10年後ってことは、めちゃくちゃ突飛な設定だと感情移入できない。その点、筆者の描く10年後は、リアリティのあるギリギリの世界。
AIによって、人々のリアルな感覚がどんどん削ぎ落とされ、刺激的なコンテンツが求められる。
行き過ぎたエンタメは、殺人犯の逃走ゲームを生み出した。
懸賞金を決めるのは、殺人犯自身だ。
……いや、この設定、めちゃくちゃそそられるんだが?
設定自体も非常におもしろいが、殺人犯の主人公、大塚がライターという職業ということで、そこには筆者にしか描けないリアルがある。
殺人犯として、周りからこんな人間だ、と見られている大塚の人物像と、本当の大塚という人間の対比が、丁寧な心情描写とともに描かれて素晴らしい。
そして、最初から最後までクライマックスの展開は、ハラハラドキドキしているうちにあっという間に最後まで行き着く。怒涛の展開と疾走感は、2時間の映画としてちょうど良い。
そう、あらゆるシーンが脳内で映像化できるのは、さすがエンタメ原作部門というところか。
私なら主人公は、山……。っと危ない。
いらぬ先入観を植え付けるところだった。
読めばきっと、あなたなりの大塚や佐々木、佐藤といった登場人物の配役が浮かぶだろう。
刺激を求めて人類が向かった先は、単なる地獄か。はたまた……?
単なるバトルロワイヤルではなく、そこに描かれる人間の心情を是非味わって欲しい。
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