ハッピーバースデーを喜ばない君へ
今日は長男の11歳の誕生日。
3歳で発達の凸凹があると診断されてから、彼の見ている世界と、親の私たちが見ている世界は、思っていた以上に違うのかもしれないと知った。
今日も、お腹がすいたというので、すぐ出せるものを探して冷凍のエビフライを温めた。
彼は、こんな硬いのエビじゃない!と激しく切れて、床にぶちまける。
「喜ぶと思って、君のためにやったのに」
これは禁句だ。
頭の中のホワイトボードに書かれたこの言葉を、何度消してもまた浮かんでくる。
「君のために」――そこだけは、どうしても消えない。
床に落ちて、ぐたっとなったエビフライを見下ろして、思わず大きい声を出しそうになるのをグッとこらえる。
そう、今日は誕生日。
ひとつ深く呼吸をして、笑顔に切り替えて共感する。
「そうだよね。確かに硬くてこれは食べられないよね。こんな硬いの、タイヤかハリボーくらいよね」
長男の表情は険しく、笑顔はない。
◇◇◇
4年生の6月から、長男は学校に行かなくなった。
5年生になって、4月と5月の間は週に2回くらいは行っていたけれど、この1ヶ月はほぼ行く様子がなくなった。
4月の面談。
「ほんと、頑張ってると思います」
新しい担任の先生はとても優しくて、いつも長男の気持ちに寄り添ってくれる。
「飛ばしすぎてて、大丈夫かなって心配になるくらいです」
なんて笑っていたけど、やっぱりエネルギーが切れたみたいやね。
もともと勉強は得意だったから、4年生までは勉強なんて簡単だって馬鹿にしてたけれど、さすがに1年以上何もしないと、もう何が分からないのかも分からないんだよね。
プライドの高い君が、周りのクラスメイトにどう思われるか気にしてしまって、動けなくなっているのも知ってる。
動画やゲームも、君にとって大切な避難場所だってこと、分かってる。
話を聞いていない風で、こっちに意識が向いた時は、洗濯物を片付けたり、お皿を流しに持っていったり、できることを君なりにやってるのを知ってる。
そして、それを褒めてくれって目でこっちを見てるのも知ってる。
異常なくらい、実は周りを気にしていて、いつも自分のことを話してるんじゃないかって神経張り詰めて、イヤホンをしながらも、こちらをチラチラ見てるのにも気付いてる。
でもね、ごめんね。
パパも完璧な人間じゃないんよ。
毎日仕事と、お金のことと、君ら家族のことを考えて、余裕なんてほとんどない。
君の気持ちに気付いていても、して欲しいであろうリアクションを取れていないことがほとんどだと思う。
ほんとは、君の言うこと全部聞いてあげて、しんどいことはしなくていいよって言ってあげたい。
もうママの肩くらいに背が伸びた君を、ほとんどご飯も食べなくて細くて頼りない君の体を、ギュッて抱きしめてあげたい。
でも、なんでかなぁ。
がんばれ。って思っちゃうんよね。
できる男だぞ、って。
そろそろ、サナギから変態して、変わるんじゃないかって。期待しちゃうんよね。
◇◇◇
この前君は、大きくなりたくない、と泣いた。
不安だよね。
一日の予定が分からないだけで不安でパニックになる君が、これからの大きくなってからの人生を思うと押しつぶされそうなのは当然だよね。
大きくなりたくないよね。
パパの見える範囲で、ママの手の届くところにずっと居たいんよね。
ほんと、やだね。
でも、それでも言うよ。
お誕生日おめでとう。
生まれてきてくれてありがとう。
これからの一年が、どうなるか、パパにも分からない。
ずっと先導してあげることもそのうち出来なくなる。
でも、パパはずっと君のことを一番近くで応援してます。
だから、ハッピーバースデー。
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