病の顛末
西新宿の大学病院まで、検診に出向いた。
あらかじめ撮ってあったCT画像を見て、主治医は「喉の癌は消えています」「リンパの癌も痕跡が見えるだけです」「故にこの病院での治療は今日で終了になり、あとは提携病院での経過観察になります」という。
これは要するに治ったということでいいのか、そういうことはあまりはっきりとは断言してくれないのだが、まぁ寛解しているといって良いのだろう。
もちろんガンが消えても、まだ完全に元の自分に戻ったわけではない。
味覚、声の掠れは元のようになるのに年単位の時間がかかることもあるらしい。
はっきりは言われないのだが、唾液が出ないのは一生治らない人の方が多いようだ。(これが一番辛い)
さらに10kg減った体重を戻し、筋力をつけるのはここから別の努力がいる。
体力気力とも一気に10年くらい老いてしまった感覚なのだが、これも果たして取り戻せるものか、大いに不安だ。
正直、放射線や抗がん剤がここまで辛いものだとは思わなかった。
死にはしないのだろうなと思っていたが、死の入り口くらいまで入った気分だ。
だから当然、今ここにはそれまでの自分とは違う自分がいて、それは今後の制作や作品にも影響してくるのだろうと思う。
いずれにせよ、もう残り10年あるかないかの現役生活を、実りあるものにしたいと考えている。
しかし、まぁ一段落はついた。
そして、とりあえずはめでたい。
そんなわけで、体はしんどかったのだが、気持ちは上がり気味であったので、病院帰りに上野に出てアンドリュー・ワイエスの回顧展を観に行くことにした。
高校時代に自分が身銭を切って画集を買った、最初の画家である。

大作の展示はなかったが、バランスの取れた良い展示であったと思う。
カタログも買おうかと思ったのだが、残りの人生、物を増やしても仕方がないなと思い、断念した。
ここからは全くの余談。
昼時だったので、何か食べようと考えたのである。
そういえば都美館はカレーが美味いのだ、という大昔の知識が頭をもたげて、20何年振りに食堂エリアに登ってみた。
するとそこは全く様変わりしていて、何やら休憩所みたいになっている。
奥の方にレストランの表示があるので行ってみると、何名様ですかと聞かれるので、一人ですと答える。
あっという間に席に案内されてさて周りを見回すと、なんか随分とゴージャスである。
あれ、カレーの雰囲気じゃないなと思った時はもう遅い。
出されたメニューに目を通すと、一番安いランチコースが4000円ではないか。
正直席に案内された段階で2500円までは覚悟していた。
なのに4000円ってなんだよ。
気が弱くてそこから席を立つ勇気はなく、えぇ、食べましたよランチコース。
ちなみにメインはビーフシチューを選んでやりました。
多分美味しかったのだけれど、何しろまだ味覚が曖昧なもので・・・、いや、きっと、多分舌のとろける味であったのでしょう。
こうして私の一人快癒祝いは、華々しく執り行われたのでありました。
ちなみにカレーはレストランの反対側の奥、カフェエリアでやっておりました980円です。
(読み返したら、最後の唐突な「ですます調」はご愛嬌)
