お題「夏休み」 #シロクマ文芸部 『スクワット仙人とわんぱく3人組』
夏休みのある日
村にある噂が流れた。
山で仙人がスクワットをしてるらしい。
△ ▲ △
僕の名前はヤマト。
で、右にいるのが大きいヤマト。
左にいるのは小さいヤマト。
小さな村で同じ名前はめずらしい。
3人は仲良しでいつも一緒だ。
今、山道を歩いている。
仙人の存在を確かめるためだ。
「なぁ、仙人いたらどうする?」
大ヤマトが言った。
「みんなでお願い事するとか?」
小ヤマトが答えた。
「3人いっぺんはさすがに無理でしょ」
中ヤマトの僕が言い返す。
そんな会話をしながら歩いていると
山小屋が見えてきた。
「あれかな?」
大ヤマトが言った。
「とりあえず行ってみようよ」
小ヤマトが急かすように言った。
少し小走りで山小屋へ向かった。
到着して辺りを見回す。
正面には誰もいない。
山小屋の裏で人の気配がした。
「おい、誰かいるぞ」
大ヤマトが小声で言った。
そ〜っと足音を立てないように近づく。
目の前に、髪も髭もモジャモジャの
人の姿が見えた。
どういうわけかスクワットをしてる。
「修行中なのかな?」
小ヤマトが言った。
「仙人だから必要ないだろ!」
大ヤマトが大きい声で返した。
大ヤマトの声に反応して
スクワットをしていた
仙人がこちらに気づいた。
じろっとこちらを見る。
「やばい、見つかった」
中ヤマトの僕が言った。
「会いに来たんだから別にいいじゃん」
小ヤマトはそう言って仙人の方に向かって
歩き出した。
「すいませ〜ん、仙人に会いに来ました!」
小ヤマトってメンタル強い。
近づいても
仙人は微動だにしない。
さすがだ、1000年生きているだけはある。
貫禄が出てる。
「初めまして、僕はヤマトと言います」
小ヤマトが自己紹介をした。
「お、俺もヤマトです」
大ヤマトもあわてて、続けるように言った。
「僕もヤマトです、3人とも同じ名前なんです。」
中ヤマトの僕が、分かりやすく言った。
すると仙人が初めて喋った。
「3人で来たのか?」
優しい声だった。
「そうです、お願いがあります」
大ヤマトが仙人を見上げながら言った。
「僕は太ってしまう呪いにかかってるんです。いっぱい食べるんですけど野球はやっています。でも太り続けるんです。仏壇のお菓子を勝手に食べたからだと思います。呪いを解いてください!」
大ヤマトが両手のひらを合わせて、お願いをした。
「何、言ってるんだ、食い過ぎなだけだろ!自分でなんとかしろよ」
小ヤマトが大ヤマトを怒った。
続けて喋る。
「友達が変な事を言ってごめんなさい。僕は成長を世界に止められています。おかげでちっちゃいままなんです。図書館で上の段の本が取れません、残酷なこの世界を動かしてください!」
小ヤマトも両手のひらを合わせてお願いをした。
「みんなわがまま言い過ぎだよ。そんなのできるわけないだろ?」
中ヤマトの僕は呆れるように言った。
そして続けて喋る。
「友達が勝手な事を言ってごめんなさい。悪い奴らじゃないんです。性格が悪いだけなんです。代わりに僕のペッタンコな鼻を山のように高くして下さい」
中ヤマトの僕が2人を差し置いて言った。
「はっはっは」
仙人は笑い出した。
「なんだ、お願いをしに来たのか?」
汗だくになった仙人が
タオルで拭きながら、こっちへ寄る。
「これからもっと成長する」
頭をポンポンと軽く叩かれた。
「大丈夫だ」
仙人の言葉は、説得力があった。
大丈夫なんだと自然と思えた。
「今日は予定があるから、また明日来なさい」
急かすように言って、仙人はペンをくれた。
黒くて高級そうなペンだった。
「ウォー!なんか凄そうだ!やったー!」
僕らは1本のペンを受け取り、はしゃいだ。
「ありがとうございました!」
お礼を言って、山小屋を後に走って帰った。
帰る途中、男の人とすれ違った。
きっとあの人もお願い事があるんだ。
そう思った。
コンコン。
「先生、入りますよ」
編集者の男が山小屋に入ると、そこには丸坊主の男がいた。
「先生ちょっと、またカツラもヒゲも外してるじゃないですか?ちゃんと変装はして下さいよ、有名人なんですから」
「あぁ、スクワットしたら暑くなってな。ちゃんと外ではつけてたよ」
タオルで体を拭きながら答えた。
「ここに来る途中、男の子とすれ違いましたけど、顔見られてないですよね?」
念を押すように言った。
「大丈夫、変装はしてたよ」
安心させるように言った。
「それより」
「あの子、中に3人いたよ」
編集者はそれを聞いて首を傾げる。
「すれ違ったのは1人の男の子だけでしたよ?」
不思議そうに言った。
「まぁ、あの子なりに上手くやってるみたいだったけどね、世の中には不思議なことはあるもんさ。おかげでいいアイデアが浮かんだよ。」
そう言って男は紙にペンを走らせる。
題名 1人の男と3人
終
・シロクマ文芸部 お題「夏休み」参加作品
