渡邊英理『中上健次論』の「はじめに」を読んでいたら木庭顕『ポスト戦後日本の知的状況』のことを思い出し、その最後のほうを読んでみてあらためていくつか考えた
渡邊英理『中上健次論』は、2022年7月に刊行された。じつは出版社のインスクリプトより送っていただいていたのだが、自分の思考に没頭していたせいで、読む余裕がなかった。昨年から、次第に自分なりに何を考えたらよいか、何を書いたらよいか、そのイメージがつかめてきて、書くこともできるようになり、それでなんとなく読もうと思い、「はじめに」を読んだ。中上の小説を、再開発の観点から、つまりは路地が解体される過程で逆説的にもそこにあった重要なことが見えてきたという筋立てで書かれており、キーワードが、「仮設性」といった言葉で、さらに人為による自然改変がめぐりめぐって人間の条件を掘り崩すといった論点も盛り込まれている。それで、どういうわけか僕の著作が参照されていることに気づき、さらに、都市論、都市空間論をめぐって、2000年前後に書かれ、発表されたいくつかの著作も参照されていることに気づいた。仮説性は、坂口恭平の議論から、導き出されているらしい、ということにも。それ以外にも、ポストコロニアル、サバルタン、ジェンダーといった論点が参照されていて、つまり、文学研究というよりは、90年代半ばから『現代思想』などで目にした議論が参照されている、ということである。たとえば、
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