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ほんわか台風#毎週ショートショートnote

なんか、バタバタ、階下の台所から音がする。
窓が開けっぱなしなのだろう。

台所に降りると、母が大きな口をあけて、
ぼた餅を食べている。
「おかあさん、窓開けっ放しやないの。玄関も、開けっ放しやないの」
「来るなら来い、ですよ」
相変わらず大口をあけて餅を食べ続けている。
ニュースでは、台風何号だったか忘れたが、
うちは暴風域に入っているようだ。
「どんなジャリでもかかってきなさい」

どうもよく分からなかったが、とにかく窓や玄関を閉め、
ぼた餅を私も食べようとしたが、
きれいに無くなっていた。

「何だかほんわかして、このぼた餅、美味しかったわ」
母一人でほっこりしている。

それから何日かして、
父にあてた母の手紙を見つけた。同居しているのに。
中は見ていないが、母にこれ置き忘れ?
というと、ひったくるようにして掴み、くちゃくちゃに丸めた。
「余計なものは見んでよろしい」
それきり何も聞かなかった。

それから私は社会人になり、結婚して、母は70歳で亡くなった。
父のガールフレンドと思しき女性が何人か、父の周辺にちらつき出した。
父もその7年後に亡くなり、父の彼女は3人だと思っていたら
4人だと分かった。

あの日、台風のさなか、「ほんわか」したぼた餅を
宙を見つめながら一心に食べていた母。

勿論、葬式には呼ばず、年子の姉とともに、彼女たちを「処分」した。
方法は聞かないでください。

田原にかさんの毎週ショートショートに参加させて頂きました。
#毎週ショートショートnote

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