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悲しみとともに生きる365日 #010花火の音に、胸が締めつけられた夜

夏の夜、遠くから花火の音が聞こえてくることがあります。

窓を閉めていても、

「ドン」

という低く響く音だけは、静かな部屋まで届いてきます。

その瞬間、胸の奥がふっと苦しくなることがあります。


私はこれまで、多くの方のお話を伺ってきました。

「花火の音を聞くと、あの夏を思い出すんです。」


そう話してくださる方が、この季節になると少なくありません。

花火が悲しいわけではありません。

けれど、その音が、

大切な人と過ごした夏の記憶をそっと連れてくることがあります。


家族で出かけた花火大会。

人混みではぐれないように手をつないで歩いた帰り道。

夜空いっぱいに広がる花火を見上げながら、

「きれいだね。」

そう笑い合った時間。


ある方にとっては、病室の窓から遠くに見えた花火かもしれません。

外へ出ることが難しくなった夏。

「来年は一緒に見に行こう。」

そんな約束を交わしたことを思い出す方もおられます。


花火の音は、一瞬でその頃の景色や空気、人のぬくもりまで運んできます。

だから、周りの人が夏を楽しんでいる姿を見るほど、

自分だけがその時間に取り残されたように感じる夜があります。


「もう何年もたつのに。」

「まだこんなに涙が出るなんて。」

そんなふうに、自分を責めてしまう方もいらっしゃいます。

けれど私は、それは決して弱さではないと思っています。


季節は毎年巡ってきます。

同じ花火の音でも、その人にとっては、一年に一度、

大切な人との時間に出会い直すきっかけになることがあります。


もし今年、花火の音を聞いて涙があふれたとしても、

どうか自分を責めないでください。


その涙は、前に進めていないから流れるのではありません。

花火の音が、

大切な人と過ごした夏を、そっと心へ運んできたのかもしれません。


だから今夜、花火の音が少しつらく感じたなら、

無理に平気なふりをしなくてもいいのです。


窓の外から聞こえる音に耳を澄ませながら、

あの人を思い浮かべる時間があってもいい。

笑顔になれなくても、涙がこぼれても、それでいいのです。

夏が巡ってくるたびに心が揺れるのは、

その人との時間が、あなたの人生から消えてしまったわけではないから。


悲しみは、忘れられないからあるのではありません。


これからも大切に抱き続けたい関係が、あなたの中に確かにあるからこそ、

花火の音に胸が締めつけられる夜があるのだと、私は思っています。

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