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移動平均線は上向き。だから強い?相場の方向感の整理法 part①

移動平均線は上向き。

価格も線の上。

じゃあ強いのか?

いや、でも上位足を見るとまだ下向き。
下位足だけ見ると、なんか上に向かいたそうにも見える。

SMAはまだ微妙。
でもEMAは上向き。

上位足は重い。
でも下位足はきれい。

はい、都合のいい線だけ採用し始めました。

これ、やりますよね。

いや、やらない人もいるかもしれませんが、私は普通にやっていました。

「SMAは反応が遅いから、EMAのほうが先に教えてくれているんじゃないか」

「価格が線の上にあるなら、まだ上方向の圧力が残っているように見えるんじゃないか」

「上位足は重いけど、下位足の形は悪くないしな」

こんな感じで、チャートを見ているつもりが、いつの間にか自分の見たい方向に合う線だけを採用してしまう。

これが移動平均線のやっかいなところです。

移動平均線は便利です。

価格の流れをならしてくれるので、パッと見の上下動に振り回されにくくなります。
まぁ、振り回されるときは普通に振り回されますが。

ただし、答えではありません。

これを見たからどうこう、という話ではないんですね。

移動平均線は、今の相場がどちらに傾きやすい状態に見えるのか。
価格が平均に対してどこにいるのか。
上位足と下位足で、見え方がズレていないか。

線に答えを聞くというより、今どこに立っているのかを確認する感じです。

今回はFXチャートを前提に、SMAとEMAを使って相場の方向感をどう見るかを考えていきます。

株式でも移動平均線の考え方自体は使われます。
ただ、株式の場合は出来高、取引時間、窓開け、個別銘柄の材料など、別に見るべき要素もあります。

なので今回は、まずFXのチャートリーディングに絞ります。

売買の合図探しではありません。
線に答えを出してもらう記事でもありません。

むしろ、自分がどこで線を都合よく見ているのか。

そこを見つけるための話です。

移動平均線は上向き。じゃあ相場も強い?そんなに相場は親切じゃない

移動平均線が上向き。

これだけ見ると、相場も上方向に傾いているように見えます。

価格も線の上。
ローソク足もそこまで崩れていない。
なんなら、少し押しても線の近くで止まっているように見える。

「これはまだ、価格を上へ押し上げるような動きが残っているのでは?」

そう見たくなります。

気持ちは分かります。
分かるんですが。

その見方、少し早いかもしれません。

雑にいうと、移動平均線は「ここまでの価格をならした線」です。

細かく言うと、設定した期間の価格を平均化して、その平均がどちらへ傾いているかを見る線です。

多くの場合は終値を使いますが、チャートソフトによっては始値、高値、安値、中央値など、計算に使う価格を変更できることもあります。

どっちにしても、過去の価格をならした結果として線が上を向いている。という事実がそこにあるだけです。

ここを忘れると、移動平均線が未来を教えてくれているように見えてきます。

これが沼です。

移動平均線は未来予知ではありません。あくまで、ここまでの価格の平均がどう流れてきたかを見せている線です。

たとえば、テストの平均点で考えると分かりやすいです。

直近5回のテスト平均が、60点、63点、66点と上がっていたとします。

「お、平均点が上がっている。じゃあ次も点数は上がるはずだ」

そう考えたくなります。

でも、実際には次のテスト範囲が急に難しくなるかもしれない。前回だけ簡単だったのかもしれない。たまたま高得点の回が平均を押し上げているだけかもしれない。

平均点が上がっていることは、ここまでの流れとしては確かです。

ただ、それは次のテスト結果を保証しているわけではありません。

チャートも同じです。

移動平均線が上向きということは、ここまでの平均価格が上向きに流れてきた、ということです。

でも、それだけで相場全体が上方向だと決めるのは早い。

見る場所は、線の向きだけではありません。

価格が移動平均線の上にいるのか。
線からどれくらい離れているのか。
ローソク足が線の上にしばらく残っているのか。
それとも、上に出たり下に戻ったりしているのか。

そして、線の角度です。

グッと上向きなのか。
少し寝てきているのか。
横ばいに近づいているのか。

上向きの線でも、角度が寝てくると、平均価格の上昇ペースが鈍っている可能性があります。

もちろん、それだけで相場が弱くなったと決める話ではありません。

ただ、少なくとも「上向きだから強い」と一発で片づける場面ではなくなります。

ここで見たいのは、線が上か下かではなく、価格を上へ押し上げるような動きがまだ残っているのか。そこです。

買い圧力という言葉を使うなら、これは“買いましょう”という話ではありません。価格を上へ押し上げているように、チャート上で見えるかどうかの話です。

逆に、下向きの移動平均線で価格が線の下にいる場合は、価格を押し下げるように見える力が残っているのかを観察します。

ただし、これも同じです。

線の下にいるから下方向。
線の上にいるから上方向。

そう単純に整理したくなります。

でも、相場はそんなに素直ではありません。

ここで都合よく見始めるんですよね。

「価格は線の下だけど、EMAはもう上向き始めている」

「SMAは下向きだけど、短期足ではもう流れが変わったように見える」

「線の角度は微妙だけど、ローソク足はいい感じ」

はい、材料集めが始まりました。

チャート分析をしているようで、実は自分の見たい方向に合う証拠を探しているだけのことがあります。

しかも、けっこう自信満々に。

こういうとき、人はだいたい“見たい線”を採用します。

しかも、ちゃんと分析している顔で。

これが厄介なんですよね。
自分ではかなり冷静に見ているつもりなので。

かくいう私も、昔は線の角度だけを見て、相場の方向感を分かった気になっていました。

価格が線の上にあれば「まだいける」
線が少しでも上向きなら「流れは残っている」

いや、雑。

今思えば、地図の端っこだけ見て「目的地こっちでしょ」と言っていたようなものです。

移動平均線を見るときは、まずこのあたりを一緒に見ます。

・線の向き
・価格と線の位置関係
・ローソク足が線の片側にしばらく残っているか
・線に何度も絡んでいないか
・上位足でも同じ方向感に見えるか

この順番で見ても、答えが出るわけではありません。

残念ながら。

線は先生じゃないので。

でも、「線が上向きだから強い」と一発で決める雑さは減ります。

移動平均線は、方向を決めるボタンではありません。

今いる場所の傾きを見る地図です。

地図は便利です。
でも、地図の一部だけを拡大して見ていると、普通に迷子になります。

SMAはのんびり、EMAはせっかち。どっちが正解とか言い出すと沼です

SMAは単純移動平均線。
EMAは指数平滑移動平均線。

名前だけ見ると、もう眠くなります。

単純。
指数。
平滑。

何が違うねん、と。

ざっくり言えば、SMAは一定期間の価格を均等に平均します。

たとえば20本の移動平均線なら、設定した価格、多くは終値などを20本分ならして見る。

一方でEMAは、直近価格の影響が強く出るように計算されます。
ただし、過去データを完全に無視するわけではありません。

そのため、SMAよりも価格の変化に反応しやすい。

ここだけ聞くと、EMAのほうが優秀に見えるんですよね。

反応が早い。
価格に近い。
先に曲がる。

「じゃあ結局、EMAを見ればいいの?」

そう言いたくなりますよね。

でも、その質問をした時点で、少しズレています。

信じる線を探し始めた時点で、もう線に答えを求めています。

「じゃあSMAは無視でいいですか?」

そう聞きたくなる声も、たぶん聞こえてきます。

いや、無視ではないです。
でも、盲信でもないです。

この“どっちかを信じたい欲”が、平均線を見るときのけっこう深い沼です。

早い線は、早く気づけることがあります。
でも、早く振り回されることもあります。

SMAはのんびりしています。

直近の価格が少し動いても、すぐには大きく反応しません。
その分、大きな流れをならして見るには使いやすい。

EMAはせっかちです。

直近の価格変化を強めに反映するので、短期的な変化には気づきやすい。
ただし、レンジや荒い相場では、価格に近いぶんだけ線も振られやすい。

この違いは、どちらが正解かではありません。

広域地図と現在地更新の違いに近いです。

SMAは広域地図。
道全体の流れを見せてくれる。

EMAはスマホの現在地。
今いる場所の変化を早く反映してくれる。

現在地の点が少し右に動いたからといって、目的地まで右に進むとは限りません。

でも、広域地図だけ見ていても、今どの小道に入っているかは分かりにくい。

どちらも必要な場面があります。

ただ、ここでやりがちなのが、都合のいい線だけ採用することです。

SMAは横ばい。
EMAは上向き。

「EMAのほうが早いから、こっちを見よう」

SMAは下向き。
短期EMAは上向き。

「これは流れが変わる前触れかもしれない」

上位足のSMAは重い。
下位足のEMAはきれい。

「下位足のほうが先に反応するから、これは先取りできているのでは?」

はい、急に自信満々。

私も昔、EMAを「先に教えてくれる賢い線」みたいに見ていました。

SMAが都合悪いときは、EMAを採用。
EMAが都合悪いときは、さらに短いEMAを採用。

今思えば、完全に移動平均線のオーディションを開催していました。

「今回の相場に合う線はどれかな?」
みたいな顔をして。

いや、違う。
合う線を探している時点で、もうチャートを自分に合わせにいっています。

もう移動平均線のセレクトショップです。

気に入った服だけ試着して、「これが自分に合っている」と言っている状態。

そりゃ合います。
合うものだけ選んでいるので。

ここで見るのは、どっちが正しいかではなく、ズレ方です。

SMAもEMAも同じ方向へ傾き、価格がその片側にしばらく残っている。

ざっくり言えば、平均も直近も同じ方向を向いているように見える場面です。

一方で、EMAだけが先に曲がって、SMAはまだ横ばい。

直近価格は動いている。でも、平均全体の流れまで変わったかはまだ分からない。そんな場面です。

EMAが急に上向き、SMAが下向き。

これは、短期的には上方向に戻しているが、大きめの平均ではまだ下方向の傾きが残っているように見える場面です。

ここを「どっちが正しいか」で考えると迷います。

そうではなく、

「今見ているのは、直近の反応なのか」

「平均全体の傾きなのか」

「短期の戻りなのか」

「大きな流れの変化なのか」

こう分けて見る。

SMAとEMAの違いは、線の好みではありません。

相場のどの部分を見ているのか、という視点の違いです。

ここを間違えると、EMAだけ見て早合点します。
SMAだけ見て変化に鈍くなります。

どちらもあり得ます。

線を増やす前に、自分が何を見たいのかを決めておきたいところです。

方向感を大きく見たいのか。
直近の変化を見たいのか。
上位足の流れを確認したいのか。
下位足の反応を見たいのか。

そこが曖昧なまま線だけ増やすと、チャートがカラフルなだけの迷路になります。

見た目はきれいですし、それっぽいです。

でも迷います。

線をまたいだ。戻った。またまたいだ。平均線もぐら叩きです

上に出た。

下に戻った。

また上に出た。

また戻った。

もう何を見ているのか分からない。

これが平均線もぐら叩きです。

移動平均線を使っていると、価格が線を抜けた瞬間に反応したくなることがあります。

「線の上に出たから、方向が変わったように見える?」

「線の下に戻ったから、やっぱり弱い?」

「いや、また上に出たから、やっぱり上?」

忙しい。

相場よりこっちの心が忙しい。

この場面で見たいのは、線を抜けたかどうかだけではありません。

移動平均線の傾きです。

線が横ばいに近い。
価格がその線を何度もまたいでいる。
ローソク足が移動平均線に絡み続けている。

こういう場面でトレンド認定すると、だいたい忙しくなります。

トレンドの方向感を決めつけるより、まずレンジ継続の可能性も疑いたいところです。

レンジというのは、価格が一定の範囲内で上下している状態です。

上に行きそうで行かない。
下に行きそうで下げ切らない。
高値も安値も、明確な更新が続かない。

その中で移動平均線を見ると、価格が線の上下を行ったり来たりします。

ここで線をサポートやレジスタンスのように強く見すぎると、だいたい振り回されます。

「線で支えられた」

「線で抑えられた」

「また抜けた」

「また戻った」

はい、もぐら叩き開始です。

レンジの中では、移動平均線が価格帯の中を横切るように見えることがあります。

ローソク足は動いている。
線の上にも出る。
線の下にも戻る。

でも、広く見ると同じ範囲でぐるぐるしているだけかもしれない。

このとき、チャート上で見る場所はこのあたりです。

・移動平均線が横ばいになっていないか
・価格が線を何度もまたいでいないか
・高値と安値が明確に更新されているか
・レンジ上限、下限の中で動いていないか
・線の上下ではなく、価格帯として止められていないか

移動平均線が横ばいで、価格がその周辺をうろうろしているときは、線そのものの意味が薄くなりやすいです。

もちろん、まったく見ないという話ではありません。

ただ、線の上か下かで方向を決めるには、少し雑です。

ここでやりがちな都合のいい解釈があります。

「一度線の上に出たから、上方向に変わったように見える」

「下に戻ったけど、また上に出たからやっぱり強そう」

「EMAは反応しているから、これは初動かもしれない」

いや、分かります。

動いているチャートを見ると、毎回事件が起きているように見えるんですよね。

でも、上位足や少し広い範囲で見ると、同じ場所をぐるぐるしているだけだったりします。

ここで必要なのは、線を抜けた瞬間の興奮ではなく、その後の残り方を見ることです。

価格が線の片側にしばらく残っているのか。
終値で残っているのか。
ヒゲだけなのか。
移動平均線の角度が出てきているのか。
線から離れて、また戻って、を繰り返していないか。

このあたりを見ないままだと、移動平均線をただの反応装置のように扱ってしまいます。

線が動いた。
自分も動く。

これではチャートに主導権を渡しすぎです。

移動平均線は、相場の状態をならして見るための道具です。

価格が線をまたいだ瞬間に、自分の見方まで毎回ひっくり返す必要はありません。

こっちまで一緒にバタバタしなくていいんです。

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part①はここまでです。

続きは以下のpart②でお楽しみください。


テクニカルアナリスト/投資診断士®️/FP技能士/FX,株式トレーダー/EA開発者
daice


※この記事は、テクニカル指標を使った相場分析の一つの見方を、テクニカルアナリストであるdaiceが独自の目線で自由に書き連ねたものです。
一般的な解釈とは一部違ったりする箇所があるかもしれませんが、そこも含めて、個人の見方として読んでもらえればと思います。
本文中で「買い」「売り」「買い圧力」「売り圧力」といった言葉が出てくることがあります。
ただし、これは特定の通貨ペアや銘柄について「買ったほうがいい」「売ったほうがいい」と伝えるものではありません。
チャート上で、価格を押し上げているように見える動き、押し下げているように見える動きを観察するための表現です。
実際にどう判断するかは、資金量、時間軸、損失許容度、取引ルール、検証結果でまったく変わります。
特にFXは証拠金取引なので、見方が合っているかどうかとは別に、リスク管理の話が必ず出てきます。
この記事は、売買を決めるための答えではなく、チャートを見るときの考え方を整理するための読み物としてお楽しみください。

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