エリオット波動で見る相場の波|カウント迷子を減らす考え方 part①
これが1波?
いや、こっちから数えたら3波っぽい。
でも上位足を見ると、まだ大きな2波の途中にも見える。
5波が終わったと思ったら、まだ伸びた。
じゃあ、さっきの5波は何だったの?
……もう全部、波に見える。
はい、波動迷子です。
エリオット波動を勉強すると、最初はなんとなく分かった気になります。
トレンド方向に5波。
逆方向に3波。
上昇方向で見れば、上に5波、下に3波。
下降方向で見れば、その逆。
言葉だけ見ると、けっこう整理されているんですよね。
ところが、実際のチャートに向き合った瞬間に急にむずかしくなる。
「この上昇が1波?」
「いや、もしかして3波?」
「ここからA波?」
「いや、まだ5波の中の内部波動?」
こうなります。
しかも厄介なのは、どこから数えてもそれっぽく見えることです。
少し伸びた波を見る。
「これは1波かもしれない」
強く伸びた波を見る。
「これは3波では?」
上げ止まったように見える。
「5波終了か?」
下げてきた。
「A波開始か?」
はい、全部それっぽい。
もうチャートに番号シールを貼りたいだけの人になっています。
気持ちは分かります。
かくいう私も、昔は伸びた波を見るとだいたい3波にしていました。
大きく動いたら3波。
押したら2波。
もう一回伸びたら5波。
便利すぎるだろ、と。
でも、ここで少し冷静に見たいんです。
エリオット波動は、未来を当てるための魔法ではありません。
波に番号をつけたからといって、相場がその台本どおりに動いてくれるわけでもありません。
エリオット波動は、今の相場が推進波に見えるのか、修正波に見えるのか。上位足の大きな波の中で、下位足の波がどの位置に見えるのか。カウントが成立しているのか、それとも無理やり数えているのか。
そこを整理するための道具です。
完璧に数えられたからといって、相場がその通りに動くわけではありません。
価格を上へ押し上げるように見える動きが残っているのか。
価格を下へ押し下げるように見える動きが残っているのか。
それとも、そもそも波を数えるよりレンジとして見たほうが自然なのか。
そういう相場環境を見るための話です。
今回はFXチャートを前提に、エリオット波動を使って相場の波をどう整理するかを考えていきます。
売買の合図探しではありません。
むしろ、自分がどこで都合よく波を数えているのか。
そこを見つけるための話です。

エリオット波動は未来予言じゃない。まず“実況席”に座れ
エリオット波動を覚えたばかりのころ、チャートを見ると急に実況したくなります。
「これは1波です」
「ここが2波です」
「今3波に入っています」
「5波が終わったので次は修正波です」
言い切りたくなるんですよね。
分かります。
番号がつくと、急に相場が整理されたように見えます。
でも、ここで少し危ないのが、番号をつけた瞬間に“未来の動きまで分かった気になる”ことです。
5波まで数えた。
だからそろそろ反転しそう。
3波っぽい。
だからまだ勢いが残っていそう。
A-B-Cに見える。
だから調整が終わりそう。
はい、ここで台本を書き始めました。
相場に台本渡してないんですけどね。
エリオット波動は、ざっくり言えば、相場の値動きを波として見て、トレンド方向へ進む推進波と、それに対する修正波を整理する考え方です。
言い換えるなら、過去の値動きに出てくる波の形を見ながら、「今の波はどの型に近いのか?」と仮で当てはめていくものです。
基本形では、トレンド方向に5つの波。
その後、逆方向に3つの波。
上昇方向の推進波として見るなら、上方向へ1波、3波、5波が進み、その間に2波、4波の押しが入る。その後、A波、B波、C波の修正として見る、という整理になります。
下降方向なら、その向きが逆になります。
ここまでは、教科書的には分かりやすい。
でも、リアルタイムのチャートは、そんなにきれいに番号を待っていてくれません。
波は伸びます。
途中で戻ります。
戻ったと思ったらまた伸びます。
5波っぽく見えたあとに、さらに伸びることもあります。
修正波に見えた動きが、上位足ではただの押し戻しだったりもします。
だから、エリオット波動を見るときは、最初から「正解のカウント」を探しに行かないほうがいいです。
正解探しを始めると、だいたい都合よくなります。
自分が見たい方向に合うように、1波の起点をずらす。
3波を伸びた場所に合わせる。
5波が崩れたら、延長波と言い出す。
修正波が複雑になったら、難しい名前をつけて安心する。
これ、やりますよね。
もちろん、エリオット波動そのものを否定したいわけではありません。
むしろ私も波動士と名乗るくらいのエリオティシャンです。
ただ、好きだからこそ言いたいんです。
好きな理論ほど、自分に都合よく使いがちなんですよね。
いや、やらない人もいるかもしれませんが、私は普通にやっていました。
エリオット波動を見るときの感覚として近いのは、実況席です。
サッカー中継の実況者が、
「いま攻め込んでいます」
「流れが変わりかけています」
「守備側が押し込まれています」
「ただ、まだ得点にはなっていません」
と話すような感じです。
実況者は、試合の流れを見ます。
でも、勝敗を勝手に決めません。
「ゴール前まで来たので、これは得点するでしょう」
とは言わないわけです。
チャートでも同じです。
エリオット波動で見るのは、今の波がどの局面に見えるのか。推進方向に見えるのか。修正中に見えるのか。終盤に見えるのか。まだカウントが怪しいのか。
そういう実況です。
ここで売買まで決めるなら、それはもう別の話です。
実際にどう判断するかは、資金量、時間軸、許容できる損失、検証結果でまったく変わります。
特にFXは証拠金取引です。
チャート上で「波がきれいに見える」ことと、自分がどれだけリスクを取れるかは別の話なんですね。
なので、まずは実況席に座る。
「これは3波です」と断定する前に、
「3波として見える条件は残っているのか」
「1波と2波の見方は崩れていないか」
「上位足ではどの波の中にいるのか」
ここを見ます。
波に答えを聞くのではなく、波を使って相場の状態を問い直す。
相場にマイクを向ける感じです。
「で、今どの流れなんですか?」と。
もちろん、相場はだいたい無言ですけどね。
1波ってどこさ?ここでだいたい波動迷子になります
エリオット波動で最初に迷う場所。
1波です。
もうここです。
1波が分からない。
1波が決まらない。
1波を決めたつもりが、あとから見ると全然違う。
「いや、こっちから数えたら成立するんだけど?」
はい、始まりました。
起点お引っ越しタイムです。
1波の起点を後からずらし始めると、もう波動というより引っ越し業者です。
都合のいい住所に移転しすぎです。
エリオット波動の1波は、ただ最初に上がった波、最初に下がった波という意味ではありません。
ここを雑にすると、その後の2波、3波、4波、5波まで全部怪しくなります。
1波が迷子になると、2波も3波もだいたい一緒に迷子になります。
迷子センターが大混雑です。
では、1波をどう見るのか。
完璧な正解を探すというより、「1波候補として見てもよさそうな場所」を探します。
たとえば、それまで下方向の流れに見えていた相場で、直前の戻り高値を上に抜いた波。
あるいは、レンジの上限を抜けて、価格がその外側に残り始めた波。
下降方向なら逆です。
それまで上方向の流れに見えていた相場で、直前の押し安値を下に抜いた波。レンジ下限を抜けて、価格がその外側に残り始めた波。
このあたりでようやく、「1波候補かな?」と見てもいい場面になります。
ただし、ここでまた都合よく見始めます。
少し上に抜けた。
ヒゲで抜けた。
一瞬だけ抜けた。
すぐ戻った。
でも、
「抜けたことは抜けたよね?」
と言いたくなる。
分かります。
分かるんですが、その見方は少し早いかもしれません。
チャート上で見るのは、「抜けたかどうか」だけではありません。
ヒゲだけなのか。
実体で抜けているのか。
上位足の終値で残っているのか。
抜けたあとにすぐレンジ内へ戻っていないか。
抜けた波が上位足ではどのくらいの大きさに見えるのか。
ここまで見ます。
1波候補というのは、相場の流れが変わった“かもしれない”最初の波です。
“かもしれない”です。
ここを飛ばして「1波確定」と言い始めると、次の2波を待っているつもりが、ただのレンジ内反発を波動に仕立てているだけになることがあります。
これが厄介なんです。
上に少し伸びた。
戻った。
また伸びた。
「1波、2波、3波では?」
と言いたくなる。
でも広く見ると、ただレンジの中で上下していただけかもしれない。
上位足で見ると、まだ大きな修正波の途中かもしれない。
このとき、下位足だけで1波を決めると、現場の小さな動きを試合全体の流れだと思い込みます。
じゃあ、どこならいいの?
それは、直前の流れが崩れた場所です。
戻り高値を抜いた。
押し安値を割った。
レンジを抜けた。
価格が抜けた側に残り始めた。
こういう変化があって、初めて1波候補として考えやすくなります。

1波が怪しいと、3波もだいたい怪しい
1波を雑に決めると、3波の見方も雑になります。
なぜなら、3波は1波と2波があって初めて3波だからです。
当たり前なんですが、ここを忘れます。
伸びた波を見ると、つい3波にしたくなる。
でも、その前の1波が本当に1波候補として見られるのか。2波が1波の起点を大きく崩していないか。2波の戻り方は、調整として見られるのか。それとも、ただ元の流れに戻っただけなのか。
ここを確認しないと、3波のラベルだけが先に走ります。
「波に番号をつける前に、波の始まりを疑う。」
この作業はとても地味です。
まったく派手ではありません。
でも、エリオット波動で迷子になる人ほど、1波を早く決めたがります。
私もそうでした。
1波が決まると、その後の物語が始められるんですよね。
2波が来て、3波が伸びて、4波で調整して、5波で完成する。
きれいです。
でも、相場はこっちの物語に付き合ってくれるわけではありません。
だから、1波は決めつけるより、候補として置いておく。
そして、その候補がその後の値動きでまだ成立しているかを見る。
ここで焦って番号を貼ると、あとからだいたい剥がすことになります。
しかも、剥がすときはちょっと痛いです。
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part①はここまでです。
続きは以下のpart②でお楽しみください。
テクニカルアナリスト/投資診断士®️/FP技能士/FX,株式トレーダー/EA開発者
daice
※この記事は、テクニカル指標を使った相場分析の一つの見方を、テクニカルアナリストであるdaiceが独自の目線で自由に書き連ねたものです。
一般的な解釈とは一部違ったりする箇所があるかもしれませんが、そこも含めて、個人の見方として読んでもらえればと思います。
本文中で「買い」「売り」「買い圧力」「売り圧力」といった言葉が出てくることがあります。
ただし、これは特定の通貨ペアや銘柄について「買ったほうがいい」「売ったほうがいい」と伝えるものではありません。
チャート上で、価格を押し上げているように見える動き、押し下げているように見える動きを観察するための表現です。
実際にどう判断するかは、資金量、時間軸、損失許容度、取引ルール、検証結果でまったく変わります。
特にFXは証拠金取引なので、見方が合っているかどうかとは別に、リスク管理の話が必ず出てきます。
この記事は、売買を決めるための答えではなく、チャートを見るときの考え方を整理するための読み物としてお楽しみください。
