見出し画像

移動平均線は上向き。だから強い?相場の方向感の整理法 part②

この記事はpart①の続きです。
まだお読みでない方は以下のpart①から読み進めてください。


下位足のEMAだけ見ると、現場の声がデカすぎる

下位足のEMAが上向き。

ローソク足も線の上。
短期的にはけっこうきれい。

「これは流れが変わってきたのでは?」

そう見たくなります。

でも、上位足を見るとSMAはまだ下向き。
価格も大きな平均線の下。

戻しているようには見えるけど、上位足の流れとしてはまだ重い。

ここで迷います。

下位足は上。
上位足は下。

どっちなんだと。

まぁよくある相場あるあるです。

下位足だけを見ると、だいたい事件が起きているように見えます。

15分足では大きな上昇。
5分足ではきれいな波。
EMAも角度が出ている。

でも、4時間足で見ると小さな戻りに見えることがあります。
日足で見ると、まだ大きな流れの一部に見えることもある。

地図でいえば、下位足は拡大地図です。

コンビニの位置まで分かる。
交差点の形も見える。
細い路地も見える。

でも、その地図だけでは、自分がどの町に向かっているのか分かりにくい。

上位足は広域地図です。

大きな道の流れが見える。
どのエリアにいるのか分かる。

ただし、細かい曲がり角までは見えにくい。

どちらかだけでは足りません。

下位足のEMAは、現場の声です。

「今、こっちに動いています」

「短期的には反応しています」

「価格が押し上げられているように見えます」

これはこれで大事です。

ただし、下位足の声はデカいんです。

動きが速い。
形も出る。
変化も分かりやすい。

だから、ついそっちに引っ張られます。

上位足のSMAが下向きでも、

「いや、現場ではかなり盛り上がってますけど?」

みたいな顔をしてくる。

このへん、会社の話に寄りすぎると脱線するので戻します。

でも、感覚としては近いです。

ここで見たいのは、どちらが正しいかではありません。

上位足では、価格が平均に対してどこにいるのか。
移動平均線の向きはどうか。
価格が上位足の線に近づいているのか、まだ遠いのか。

下位足では、直近の価格がどちらへ反応しているのか。
EMAが先に曲がっているのか。
SMAもついてきているのか。
価格が線の片側にしばらく残っているのか。

下位足の声と上位足の声を、同じ音量で聞かないことです。

下位足、声デカいので。

下位足で上方向の圧力が見える。
でも上位足では下方向の圧力が残っているように見える。

こういう場面は、相場全体が転換したと決めつけるよりも、まずは「短期の戻りが上位足のどのあたりまで届いているように見えるのか」を観察する場面です。

逆もあります。

上位足は上向き。
でも下位足ではEMAが下向き。
価格も短期線の下。

この場合、上位足の中では調整のように見えるかもしれません。

下位足だけ見れば、下方向へ押し下げられているように見える。
でも、広域地図で見ると大きな流れの中の一時的な下げに見えることもある。

ここでやってはいけないのは、自分の見たい方向に合う時間足だけ採用することです。

「上位足は上だから大丈夫」

「下位足は下だけど、どうせ調整」

「短期EMAが反応したから、もう流れが変わった」

「日足は重いけど、5分足はきれい」

全部、言いたくなる。

分かります。

いや、でも今回は違うんじゃない?

EMAも反応してるし。
クロスもしてるし。
下位足の形もきれいだし。

上位足は……まぁ、あとで見るとして。

でも、それをやり始めると、分析ではなく言い訳になります。

移動平均線を見るときは、時間足ごとに役割を分けたほうがいいです。

上位足では、大きな平均価格の流れを見る。
下位足では、その中で直近価格がどう反応しているかを見る。
SMAでは、ならされた方向感を見る。
EMAでは、直近の変化を早めに確認する。

これらを一つに混ぜると迷います。

「上位足SMAは下」
「下位足EMAは上」
「だから相場はどっち?」

ではなく、

「大きな流れはまだ重く見える」
「短期的には反発している」
「この反発が上位足の線に対してどう反応するかを見る」

このくらい分けて見ると、少なくとも“線がこうだからこうする”みたいな雑さからは少し離れられます。

実際にどう判断するかは、資金量、時間軸、許容できる損失、過去検証の結果で変わります。

同じチャートを見ても、スキャルピングの人とスイングの人では、見ている地図の縮尺が違います。

ここをごちゃ混ぜにすると、短期足の事件を、相場全体の大事件だと勘違いします。

そしてだいたい、あとから広域地図を見て気づきます。

「あ、ただの路地だった」と。

けっこうあります。
ほんとに。

クロスを見た瞬間に答え合わせしたくなる。でもそれ、まだ途中経過です

移動平均線のクロス。

短期線が長期線を上に抜ける。
短期線が長期線を下に抜ける。

これを見ると、なんか答えが出た気がします。

線と線が交差しただけなのに。

人間、交差点を見ると進みたくなるんでしょうか。

いや、知らんけど。

SMAとEMAを重ねている場合も同じです。

EMAがSMAを上に抜けた。
短期の反応が、ならされた平均より強く出ているように見える。

逆に、EMAがSMAを下に抜けた。
直近価格が平均より弱く反応しているように見える。

これは、相場の変化を見る材料にはなります。

ただし、クロスは結果です。

価格が動いた。
その価格をもとに移動平均線が計算された。
その結果として線が交差した。

つまり、クロスは価格変化のあとに出てくる現象です。

ここを忘れると、クロスを未来の合図のように見てしまいます。

「クロスしたから方向が変わった」

「クロスしたから強い」

「クロスしたから弱い」

いや、まだ途中経過です。

クロスを見るなら、その後に何が起きているかを見ます。

価格が移動平均線の片側にしばらく残っているか。
終値で残っているのか、ヒゲだけなのか。
短期線と長期線の間隔が開いているか。
線が同じ方向に傾き始めているか。
ローソク足が線に何度も絡んでいないか。
上位足の方向感と極端に逆行していないか。

短期線と長期線の期間設定によって、クロスの頻度も見え方も変わります。

短い設定ほど反応は早くなります。
ただ、そのぶん細かい上下動にも反応しやすい。

ここも忘れると、また線に振り回されます。

特に、レンジの真ん中で起きるクロスには注意したいところです。

レンジの中では、価格が上下に行ったり来たりします。
そのたびに短期線が動き、長期線と交差することがあります。

クロス。
逆クロス。
またクロス。

もう平均線同士の社交ダンスです。

見ている側は大変です。

ここで都合よく考えると、

「今回はきれいなクロス」

「前回のクロスはダマシだったけど、今回は角度がある」

「EMAが先に動いているから、今回は違う」

となります。

はい、また“今回は違う病”です。

もちろん、本当に相場の状態が変わっていることもあります。

だからクロスを見ること自体が悪いわけではありません。

ただ、クロスだけを見て判断すると、線の交差に意味を持たせすぎます。

クロスは交差点です。

交差点に来たからといって、目的地が決まったわけではありません。

標識を見る。
道幅を見る。
交通量を見る。
そもそも自分がどこへ向かっているのかを見る。

チャートでいえば、価格の位置、線の角度、上位足、レンジかトレンドか。

そこまで見て、やっと「今の相場はこういう状態に見える」と整理できます。

移動平均線のクロスは、相場からの返事ではありません。

問いを立てるきっかけです。

「なぜクロスしたのか」

「クロス後に価格はどこへ残っているのか」

「線同士の間隔は開いているのか」

「レンジ内の一時的な交差ではないか」

こう見ると、クロスはサインではなく、観察ポイントになります。

線が出した答えを受け取るのではなく、線を見て自分が問いを立てる。

この差は、けっこう大きいです。

最後は線じゃなくて、自分の見間違いを記録する

移動平均線の期間設定を探す。

SMAとEMAを比べる。

短期線と長期線を組み合わせる。

これ自体は悪くありません。

ただ、ここでもまた都合よく見始めます。

うまくいったチャートだけ集める。
きれいに反応した場面だけ保存する。
外れた場面は「これは相場環境が悪かった」と片づける。

はい、ひっかけ問題ノートの完成です。

うまくいった場所だけ集めると、どの線も天才に見えます。

20SMAも天才。
25EMAも天才。
75SMAも天才。
200EMAも天才。

もう全員エース。

でも実際のチャートでは、そんなにきれいに反応しません。

線をまたぐ。
横ばいになる。
上位足と下位足でズレる。
EMAだけ先に反応する。
SMAはまだ重い。
クロスしたのに伸びない。

ここで必要なのは、正解の線を探すことではありません。

自分がどこで見間違えたかを残すことです。

過去チャートを見るなら、最低限このあたりは残しておきたいです。

・見ていた時間足
・上位足の移動平均線の向き
・下位足の移動平均線の向き
・SMAとEMAのズレ
・価格が線の上か下か
・価格が線に絡んでいたか
・線の角度が出ていたか
・レンジの中だったか
・自分が採用した根拠
・自分が無視した根拠
・後から見て、どこを都合よく見ていたか

特に残したいのは、「無視した根拠」です。

これ、めちゃくちゃ大事です。

うまくいかなかったチャートを見返すとき、多くの場合、自分は何かを見落としています。

というより、見落としたのではなく、見たくなかっただけのこともあります。

上位足のSMAは下向きだった。
でも下位足のEMAがきれいだったから、そっちを見た。

価格はレンジ中央だった。
でもクロスが出たから、方向感が出たように見た。

移動平均線は横ばいだった。
でも一瞬線の上に出たから、強いと見た。

はい。
だいたい自分で証拠を選んでいます。

検証というのは、線の正解を探す作業ではありません。

自分の見方のクセを見つける作業です。

地図でいえば、毎回同じ交差点で曲がり間違えるなら、そこに印をつける。

毎回広域地図だけ見て迷うなら、詳細地図も見る癖をつける。

現在地点だけ見て焦るなら、目的地と大通りを広域地図で確認する。

チャートでも同じです。

移動平均線を見て、どこで焦ったのか。
どこで都合よく解釈したのか。
どの線を採用して、どの線を無視したのか。

そこを残す。

きれいな勝ちパターン集より、見間違いノートのほうが役に立つことがあります。

いや、地味です。
全然派手ではありません。

でも、相場の見方を変えるのは、だいたいこういう地味な作業です。

そして地味な作業ほど、あとから効いてきます。

悔しいですが。

まとめ|線に答えを求めすぎない。でも、線を雑に見ない

移動平均線を見るときは、線だけを見ない。

・線の向き。
・価格の位置。
・線との距離。
・ローソク足が片側に残っているか。
・それとも何度もまたいでいるか。
・SMAとEMAで見え方がズレているか。
・上位足と下位足で方向感が違っていないか。

この順番で見ると、少なくとも線だけで判断するよりは整理しやすくなります。

SMAは、平均価格の流れをなめらかに見るための線。

EMAは、直近価格への反応を早めに見やすい線。

どちらが正解という話ではありません。

SMAがのんびりしているから見えるものがある。
EMAがせっかちだから気づけるものもある。

ただし、せっかちな線ほど振り回されやすい。

ここを忘れると、都合のいい線だけを採用し始めます。

線が上向き。
価格も線の上。
でも上位足は重い。

SMAは微妙。
EMAは上向き。

レンジっぽい。
でもクロスは出た。

こういう場面で、どの根拠を見て、どの根拠を無視したのか。

そこを残しておきたいんです。

移動平均線が「どうする?」の答えまで出してくれるわけではありません。

そんな親切な線なら、たぶんみんな苦労していません。

実際にどうするかは、資金量、時間軸、許容できる損失、検証結果でまったく変わります。

しかもFXは証拠金取引です。

線がどう見えるかと、実際にどれだけリスクを取れるかは別の話なんですね。

チャートの形だけで気持ちが前に出ると、このあたりがすっぽり抜けます。

それには私も含まれます。
はい。

画面の中では線がきれいに見えていても、資金量や損失許容度まできれいに整っているとは限りません。

こういうこと、普通にあります。
ありますというか、ありました。

だからこそ、まずは自分のチャートで確認する。

上位足と下位足。
SMAとEMA。
価格の位置。
線の角度。
レンジなのか、方向感が出ているように見えるのか。

そして、後から見返す。

「あのとき、自分はどの線を都合よく見ていたのか」

ここが相場をちゃんと読めるようになるポイントです。

線に答えを求めすぎない。

でも、線を雑に見ない。

移動平均線を見る練習というより、自分の見間違いを見つける練習。

まずはそこからで十分です。

派手じゃないですけどね。

だいたい効くのは、そういう地味なやつです。


テクニカルアナリスト/投資診断士®️/FP技能士/FX,株式トレーダー/EA開発者
daice


※この記事は、テクニカル指標を使った相場分析の一つの見方を、テクニカルアナリストであるdaiceが独自の目線で自由に書き連ねたものです。
一般的な解釈とは一部違ったりする箇所があるかもしれませんが、そこも含めて、個人の見方として読んでもらえればと思います。
本文中で「買い」「売り」「買い圧力」「売り圧力」といった言葉が出てくることがあります。
ただし、これは特定の通貨ペアや銘柄について「買ったほうがいい」「売ったほうがいい」と伝えるものではありません。
チャート上で、価格を押し上げているように見える動き、押し下げているように見える動きを観察するための表現です。
実際にどう判断するかは、資金量、時間軸、損失許容度、取引ルール、検証結果でまったく変わります。
特にFXは証拠金取引なので、見方が合っているかどうかとは別に、リスク管理の話が必ず出てきます。
この記事は、売買を決めるための答えではなく、チャートを見るときの考え方を整理するための読み物としてお楽しみください。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事は noteマネー にピックアップされました

noteマネーのバナー