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『まっとうな人生』ってなんだろね

最近の私は、従来に増して注意が散漫です。川上弘美さんのつもりで川上未映子さんの本を買ったり。完結ものだと思って映画『Wicked』を観に行ったら思いっきりPART 1で既にPART 2が待ちきれなかったり。
今回は、古本屋さんで絲山秋子さんの本を見つけて喜び勇んで購入したものの、何と後編だったという(笑)。でもせっかくだから読んじゃった。

『まっとうな人生』- 著者:絲山秋子さん

こちら、この『逃亡くそたわけ』

という本の続編でした。だって全然タイトル違うんだもん。続き物ってよくわかんなかったんだもん!てなわけで、全く前編がわからないままの感想は自分でも初めてだけど、ふんわりとしたためてみます。

福岡から富山に嫁ぎ、優しく包容力のある夫・アキオちゃんと、素直で賢い娘・佳音と暮らすとある女性、花の物語でした。視座は全て花のもので、日記風にしたためてあります。富山やその近隣県の自然や食べ物が随所に登場し、のどかなロードトリップを楽しむような本かなあと思いながら、寝る前にチビチビと読んでいました。(そして実際眠くなった笑)

最初の頃は、友人なごやん一家の愛犬にまつわるエピソードでちょっとわさわさされつつも、どこか穏やかな調子で進んでいたものの。一見平和な日常が綴られていきますが、彼女の中には時々存在感を増す双極性障害という波があったり、世間はちょうど最初のコロナ禍という波を迎えたりと、決して平坦なだけではありません。

絲山さんご自身が、双極性障害をお持ちなことを公表されていますね。本作で基本的にメンタルは概ね安定している花ですが、家族の不幸や得体の知れない疫病の広がりなどもきっかけになったのか、ある日ふっと調子を崩すところや、次第にペースを取り戻していく様子も描かれています。端的に、でもきっとすごくしっくりくるであろう比喩も駆使してその微細な変動が表出されていました。同じ疾患でも人により状況によりもちろんその表出の仕方は様々だと認識した上で、これは当事者の絲山さんだからできた言語化なんだろうな、と感じました。

どうやら前編にあたる本では、花ちゃんもなごやんも独身だった頃、それぞれのメンタル疾患により入院していた頃の物語が展開されているようです。どんな感じか気になってきたので、先に続編は読んでしまったけど、エピソード・ゼロ的に今度読んでみようかな。あ、ほら、『Wicked』だって『オズの魔法使い』のエピソード・ゼロじゃない!?(ここで謎に無理やり冒頭にこじつける)

でもこの本、別にメンタルのことがメインの物語、というわけでもありません。あくまで、花ちゃんの日常がただただ記されていくだけ。ある意味人生のロードトリップ的な物語なのかな、と感じました。

さて。末尾に、印象的だった箇所を抜粋してみます。本文に一切触れずにおきたい人は、下記は読まずにスルーしてくださいね。未読スルーOK!ちょっと使い方違うけど。

そういえば、あの『罪と罰』でも、とある登場人物が言っていたな。生活。生活!って。そうなんだよな。ぼんやりしていたら圧倒されてしまうような日常、あれこれ悩んだり悩まなかったりする毎日。どんな日々でも、生活は続くんだよな。その生活のひとつひとつが、どんなにちっぽけでも、目立たなくても、着実に、ひとりひとりの物語になっていくんですね。

まともとまっとうはどう違うのだろう。
まっとうと、苦労がないことは違う。
(中略)
リスクを減らすことは賢明ではあるけれど回避したことには実体がない。正解を求めれば求めるほど、人生は希薄になっていく。それでも生活は終わらない。

暑いときも寒い時も、体が苦しい時も頭がおかしいときも、その気持ちをきちんと感じる。不安も恐れも受け止めるしかない。楽しかったら笑い、美味しかったらちゃんと喜ぶ。

P.249より


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