小説『ワンダリングノート・ファンタジー』(18)受け入れて
Chapter18
何らかの強い力によって身動きが取れなくなったトムを、ひどい耳鳴りが襲った。たまらず両目を強く閉じて、それが鳴り止むのをじっと堪えた。やがて体の硬直は緩み、手足の自由を取り戻した彼は両耳に手を当て、ゆっくりと目を開けた。
強面だが、ユニークな話をくれた男性の姿は既にそこにはなく、彼が読んでいた新聞紙だけが広がって地面に落ちていた。トムの耳には再び周囲の自然の音が戻り、意識も完全に落ち着いて、まるで長い眠りから覚めたような気分だった。
「⋯⋯そうだ。すべて思い出したぞ⋯⋯。僕はこの公園で、レナとつまらない喧嘩をして、その後彼女は行方不明になってしまった」
指で耳たぶを触りながら、さらに呟いた。
「夜の公園で、錯乱したお巡りさんに絵本を見せられた。不思議な光が、彼の背後にいた黒い影を消し去った──」
トムは前に向かって歩き、ベンチの手前まで来て足を止めた。その場所から、かつての出来事が見えるようだった。
「その絵本が──おそらく絵本の方が化け物で、再び目の前に現れて僕を罠にはめた。漫画雑誌のフリをして、僕の興味を誘って⋯⋯僕が読むのをじっと待ってたんだ」
受け入れがたい現実に直面しながらも、抗っても仕方がないと理解したトムは、諦めにも似た表情で空を見上げた。雲の形や色、耳に届く風の音はどれもこれまでと変わらずリアルだった。しかし、ブランコの場所まで辿り着けないことや、夕方から真昼近くへと瞬時に変わった光景を目の当たりにして、彼はその事実を受け入れざるを得なかった。
「あの男の人は、一体何者だったんだろう⋯⋯そしてどこへ行ったんだ? 僕の聞き間違えじゃなければ、「絵本世界」って言ってたような。さっきのひどい雑音も、今でははっきりと言葉として耳に残っている」
そのノイズの余韻がまだ消えないうちに、レナの手がかりに繋がるであろう一筋の糸を彼は解き始めた。自身が体験した恐ろしい出来事に、もしかしたら彼女も遭遇してしまったのではないかと思った。
「レナが突然いなくなったのも、これで説明がつく。僕と同じように、絵本を読んで⋯⋯いや、読まされてしまって、この世界に引きずり込まれたんだとしたら」
トムは恐怖と興奮が入り混じる感情に身を震わせ、ある決意を固めた。それは彼の行動の最優先事項となり、彼の足を動かす原動力となった。
「レナは絶対、この「絵本世界」のどこかにいる!」
自分を信じてしっかりと歩き出したトムは、先ほどよりも遠くに見えるキリンの頭を目に焼き付け、それを目指した。

