1000年続くブラック企業に就職の九条瑠璃さま『ブラック企業戦記』(クロスカラーウォーズ・スピンオフ)
第一話:南の檻、北の光
サブタイトル:その紫は、救いか、罪か。(※労働条件的な意味で)
1. 運命の内定取り消し、そして「紫」へ

「……お父様、わたくし、ホワイト一族の誇りを持って、都を調律して参りますわ!」
あの日のわたくし、九条瑠璃(17歳)は純粋でした。
天海蒼様や緋村茜様と一緒に、きらきらした「色彩の守護者」としてキラキラOL(調律師)デビューするはずだったのです。

ところが、現れたキャリアコンサルタント(阿闍梨)に連れて行かれたのは、都の最南端にある地下オフィス、通称「南の檻」。
「九条さん、君の『白』は素晴らしい。我が社なら、君のポテンシャルを最大限に引き出し、1000年先まで続くキャリアパスを約束しよう」
そんな甘い言葉に騙されて、わたくしがサインしたのは、血で書かれた「無期限雇用契約書」。
気づけば、蒼様の「蒼」と茜様の「赤」を無理やり混ぜ合わせた毒々しい「紫(バイオレット)」のエナジードリンク(エーテル)を心臓に直接注入され、わたくしの髪も瞳も、完全に社色(バイオレット)に染まりました。
これが、わたくしの「バイオレット・キメラ(社畜の完成)」の瞬間でした。

2. 終わらないワンオペ、消えた同期

「……蒼様? 茜様……? どこにいらっしゃるの……?」
目を覚ますと、同期の二人は「灰色の彫像」になっていました。
ええ、わかりますわ。わたくしのあまりの「紫(残業意欲)」に、ついてこれず燃え尽きて(バーンアウト)しまったのですね。
それから1000年。
わたくしは、この「南の檻」で、次元のバグを修正し、世界をハッキングする「終わらないワンオペ」に従事しています。
給料? ありませんわ。
福利厚生? 歳を取らないので、「定年退職」という概念が消滅しました。
「わたくし、もう1000年も寝ていない気がしますの。でも、アメジスト色の瞳が充血しすぎて、もはや何が血走っているのか自分でもわかりませんわ!」
3. 監査役、襲来。

そんな時でした。
オフィス(地下牢)の扉が、物理法則を無視した衝撃で吹き飛んだのは。
「――ターゲット捕捉。バイオレット・キメラ。……および、不適切な労働環境を検知」
そこに立っていたのは、蒼い光を放つ最新鋭の監査ユニット。
かつてわたくしが鎌倉や江戸、明治で何度も「不当解雇(物理的な排除)」を迫ってきた、天海家の執念の塊……蒼井凛(あおい りん)様です。
彼女は今回、スナイパーライフルではなく、デジタル・クリップボードを携えていました。
「九条瑠璃。貴女の労働実態について、監査を行う」
「……あら、凛様。わたくしを消しに来たのではないのですか?」
「……勘違いするな。貴女の『1000年不眠不休・給料未払い・有給ゼロ』というデータが、世界の演算(コンプライアンス)に致命的なエラーを与えている。貴女の存在は、労働基準法という名の『理』に対する最大のバグだ」
凛様の義眼が、青く冷徹に光ります。
「……これより、強制的な『有給消化』および『残業代請求の代行執行』を開始する。抵抗は無意味だ」
4. 救済か、それとも家宅捜索か

「お待ちなさい! わたくしが今この仕事(世界の拒絶)をやめたら、誰がこの次元のゴミを処理するとお思いなの!? 監査役風情に、わたくしの1000年のキャリアを否定されてたまるもんですか!」
わたくしは黒金の扇を広げ、バイオレット・エーテルを暴走させます。
仕事が辛すぎて、もはや「仕事をしていないと自分が何者かわからない」という重度の社畜メンタルに陥っているのです。
「……演算終了。九条瑠璃、貴女の心(回路)は既に壊れている。……その『紫の残業代』、私が天海の全リソースをもって回収してやる」
こうして、新宿のネオンの下、1000年の怨念(未払い賃金)を巡る、新たなカラーウォーズの幕が上がったのでした。
「救いか、罪か。……いいえ、これは『不当労働行為への提訴』ですわ!!」
(第一話 完)

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