魔法の六文字、知ってる?
僕が小さい頃の台湾は、今見たら普通にアウトだと思うことがたくさんありました。
その中でも、自他ともに認める代表的なものが、海賊版、パクリ文化と国産品の品質でした。
それを子どもの僕が初めて実感したのは、小学校一年生の頃、消しゴムを使っていたときです。
僕が一番使っていたのは、たぶんMONOの消しゴムでした。
最初は台湾製の消しゴムも使っていました。
当時の台湾製の消しゴムは、大きくて、ピンクやオレンジ色をしていて、フルーツや花、動物みたいな形をしたものも多く、安い香水みたいな匂いまで付いていました。
それに対してMONOの消しゴムは、小さくて、白くて、飾りもない、ただの四角、匂いも付いてない、
しかも値段は台湾製より高かったです。
見た目だけなら、台湾製の方が大きいし、コスパも良さそうに見えました。
でも実際に使ってみると、ほとんど消えません。
ときどき力を入れすぎて、紙を破いてしまうこともありました。
一方でMONOは、小さいのに軽くこするだけで、きれいに消えます。
そのとき、
「もうこれしか使わない。小さいけど、大事に使おう。」
と思いました。
だから、ときどきクラスメートに貸して返ってきたあと、
「あっ、ここからこすったのに!」
「なんで勝手に外の紙を捨てるんだよ!」
「人の物をそんな雑に使うな!」
って心の中で怒っていたこともありました。
おもちゃも同じでした。
最初は家にあるおもちゃで普通に遊んでいました。
でもデパートのおもちゃ売り場へ行って、ガラスケースの中に並んでいる高そうなおもちゃを見た瞬間、
「あっ、これが本物じゃない?」
「じゃあ、家にあるのはパクリで、安い台湾版だったの?」
と気付きました。
見た目はなんとなく似ているのに、家にあるものはほとんどプラスチックで柔らかく、塗装もすぐ剥がれ、接合部分にも少し隙間がありました。
でもガラスケースの中にあるものは、見た目から金属感があってしっかりしていて、塗装も丁寧で、接合部分にもほとんど隙がありません。
もちろん値段も高かったです。
それで一目惚れしたみたいに、一気に憧れるようになりました。
親に買ってほしいと頼んだこともあったと思いますが、結局は買うのを諦めて、
「まあ、パクリや台湾版のおもちゃで遊べば十分だ。」
と受け入れていました。
そういう日本製品と台湾製品の違いは、いつの間にか台湾では当たり前の認識になっていました。
テレビCMや雑誌、新聞の広告でも、
日 本 原 装 進 口
という言葉があちこちで使われていました。
つまり、日本からそのまま輸入されたものという意味です。
まるでこの六文字は魔法の言葉みたいで、それが書いてあるだけで、
日 本 原 装 進 口=高 品 質
と台湾人は思っていました。
今では僕も普通に台湾製品を安心して愛用しています。
パソコンもテレビもエアコンも、ほとんど台湾製です。
それでも今はその六文字を見ると、また魔法をかけられたように、
「じゃあ、これはいいもんだろう」
と、つい思ってしまいます。
