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広東語夜話ー(42)「やばい」はどこからきたのか?広東語の世界を調べてみたら『千字文』まで見ることになった。

まず千字文とは何かご存じでしょうか?
千字文は公元503年の時、武帝が周興嗣に命じて作らせた韻文で、4字句を250文で構成されています。
周興嗣の肩書は「南朝梁敕員外散騎侍郎」です。
位がどれほどかわかりませんが、重複する字を使わずに、さらに書聖「王義之」の筆跡を模写するという王の命令を受けた周興嗣は、千字文が出来上がると一晩で髪が真っ白になったということです。

かつて学者王仁が、『論語十巻、千字文一巻』を持って日本に渡来するまで、日本は口語の世界であったわけです。
日本には5世紀にきたとか8世紀に伝えられたとか諸説がありますが、『千字文』が成立した時期が6世紀ですから、5世紀に来るという説はおかしいですね。

香港で書法を習い始めたころ、老師が手本に勧めてくれたのが千字文でした。
千字文を140センチほどの半きりサイズに、300字ぐらい書写して、毎回老師が、広東語で漢字を読んでくれ、わからない意味を説明してくれる、今になって思えば面白くて特別な個人授業でした。

韻文のリズムやその字体は、今なお書法のお手本に使われることは、驚きであり納得もできることです。

さて今回「ヤバイ」という言葉を取り上げました。
日本では今では「ヤバい」という言葉は、若者だけじゃなく一般にも広がっていて、いい意味にも悪い意味にも使われ、現在も拡張中の言葉です。

ではまず広東語の世界を見てみます。

広東語で 「弊」[bai6] バイ  (数字は声調で低平調)  
形容詞 ダメな、めちゃくちゃな  
動詞  しくじる、しまったことになる。 (出典 『東方広東語辞典』)

商務新辞典では、次のような説明です。
「弊」害處。利益と相反する要素。不正やごまかし規則に違反する、ずるい行為 (日本語に訳しています。)

これらの意味は本当に日本語の「やばい」と重なります。

ちなみに日本語では数少ないイ形容詞。
日本国語大辞典では次のように説明されています。

やば・い-日本国語大辞典〔形口〕(「やば」の形容詞化)
危険や不都合が予測されるさまである。危ない。

「やばい」は「やば」という名詞から変化したという説明です。
少し不思議です。
「やば」ってよく言われる矢場の事でしょうか?

しかも隠語集に掲載されているというのです。
「てきや・盗人などが官憲の追及がきびしくて身辺が危うい意に用いたものが一般化した語。」*日本隠語集〔1892〕〈稲山小長男〉

隠語集に載っているなんてかなり「やばい」ですね。

広東語では「弊喇!」[bai6 la3] バイラと言います。
しまった!だめだ!という意味です。

弊喇!無晒油![bai6 la3 mou5 saai3 yau2]
やば、ガソリンがなくなっちゃった!

日本ではこの「ヤバイ」という言葉が隠語集に載っていると知り、そんな言葉がまさか千字文にないはずと思って調べてみたらありました。

千字文の中頃にあるこの4文字2文です。
「何遵約法」「韓弊煩刑」
と続きます。

何は蕭何(しょうか)の事。蕭何は漢のりょうほうの「約法」に従って漢王朝の法律を制定した。
韓は韓非の事です。
韓非は厳しい刑罰と厳格な法律で社会を管理する「法治」を提唱したが、
陰謀に嵌められ獄中でなくなった。

陰謀の被害で彼はなくなってしまった、というニュアンスをが表しているのですね。

昔の言葉の意味は重いけれど、今で言う「ヤバイ、~しまった。」という一字が中国にはあったのですね。

この4文字も周興嗣が頭を絞って考えたと思ったら頭が下がります。

しかし武帝が依頼した「千字文」の中にもこの「弊」の字があることから、この漢字自体が隠語であるわけでもなく、ずるい行為は歴史のどの時代、社会にもあることです。

ただ正式な商人や役人や学者、僧侶などではない、危ないことを働いていた人たちが使っていた口語が隠語として入ってきて、現代の日本でも広がっていったのでしょう。「バイラ、バイラ」って言っていたのでしょうか?




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蜜瓜(メロン) 読んでいただいてありがとうございます❤ 言葉の興味が止まりません。 書き続けていくのでよろしくお願いします。 多謝❤