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わたしのきらいな絵本袋|モノカキングダム2025

わたしが保育園に通っていたころ。
週に一度、好きな本を借りて帰っていい日があった。絵本を入れるための袋はそのまま絵本袋と呼ばれて、各家庭で用意する決まりだった。

わたしは自分の絵本袋が嫌いだった。


わたしの袋は、裁縫の得意な母がつくってくれた。片面にキティちゃん、もう片面にはわたしの顔をかたどったフェルトが縫い付けられていたもの。

まわりの友達が持っていたのは、既製品ばかりだった。セーラームーンやらなんやらのキャラクターが描かれているものだったり、ピンクのかわいい模様があしらわれていたり。縫い目もぴっしり狂いがないし、何よりかばんとしてしゃんとしている。

わたしの絵本袋はふにゃふにゃだ。しかも、わたしの顔つき。世界にひとつ、わたししか持ってないバッグ。


みんなとは違う。
幼いわたしは、自分のものを持って歩くたび居心地が悪かった。

「わたしもみんなと同じがいい」

母に直接言ったことはない。だけど友達が持っている既製品の手提げかばんは、わたしのものよりずっと輝いて見えた。



それから何年も経って、わたしは子を持つ親になった。

子どもが入園したのも、週末に絵本を貸してくれる園だった。もらったおたよりにはやっぱり、「絵本袋の用意をお願いします」と書いてある。

「おかーさんが保育園に行ってたときも、園で絵本貸してくれたんだよ」
子どもと話しながら準備をしていて、ふと思い出した。あの、わたしの顔がついた、ふんわりしたトートバッグの手ざわりを。


自分が子どものものを用意する番になって、やっとわかった。あの絵本袋を作ってくれた母は、どれだけわたしのことを想ってくれていたんだろう。

当時の我が家には、生まれたばかりの妹もいた。小さい子どもをふたりも育てる毎日のなかでミシンをかけるのは、手慣れていたとしても簡単じゃなかったはずだ。しかも、ただ形を縫うだけではなく、フェルトで顔までつくって。


こんなの、みんなと違うし。
わたしにちっとも似てないし。
キティちゃんだって、別に好きじゃないし。

心の中で文句を言っていた幼いわたし。
あなたの気持ちを「間違ってる」とは言わないし、だめだとも思わない。

だけどね。
同じ“母”として、これだけは伝えたい。

その小さな絵本袋には、愛情がたっぷり詰まっているんだよ。
あなたはものすごく愛されてるんだよ。

母が直接、わたしにそう言ったことはなかったけれど。



最近わたしは、子どもたちの服に自分で刺繍してつくったワッペンをよくつけている。
「ねえここ、何かつけようか」
尋ねると、あれがいいこれがいいとお気に入りのキャラクターを挙げてくれる。わたしはリクエストに応えて子どもたちの大好きなキャラクターを刺繍していく。

わたしがいないときも、どうかこの子たちを守ってください。
祈りながら一針ずつ進めて、できあがったものから洋服に縫い付ける。

完成品を置いておくと、
「ありがとう、すごいね!」
と喜んでくれる。子どもたちは何度もワッペンを指さしたりなでたりして嬉しそう。


もしかしたら、あのときのわたしみたいに、心の奥では気に入っていないかもしれない。あるいは、今気に入っていても、もう少し成長したら嫌になってしまうかもしれない。

それでもいい。
いつか、同じように気付いてくれれば。
ううん、たとえ気付かなくても。

母から受け取った愛を、今度はわたしからあなたたちへ。
わたしはただ、愛を渡したい。

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