年末にしみる映画はきっと名作。映画『容疑者Xの献身』2008年。
福山雅治と柴崎コウのポスター&予告編から、なんとなく『踊る大捜査線』みたいな楽しい映画かと思っていました。でも、どうやら一部方面にとんでもなく受ける映画らしいということがわかって、俄然見に行きたくなりました。例えば、こちら。
何がよかったか、というと、犯人である数学者・石神を演じる堤真一さんの演技があまりにすばらしかったのだ。この人物は、かつては数学の天才といわれながら、家庭の事情で数学者への道を閉ざされ、高校で数学を教えながら世捨て人のように生きているような人だ。ぼくは、天才でなかったが、数学の道が閉ざされた、という意味ではこの境遇を味わったことがあり、そのせいか、映画を観ている間、胸が痛く、ずっと涙ぐんでいたのだ。
この映画を観て、いたたまれなかったのは、石神の数学へのひたすらの愛と、道が閉ざされたことへの絶望が、とてもとてもとてもよくわかるからである。数学を志した多くの人は、かなり早期に、つまり少年期に、数学に目覚めている場合が多い。そして、ほとんどの場合、数学以外の将来を考えたことがない。
数学がなくなれば、人生のすべてが失われてしまう。数学のない人生は、全くの無意味なものだと思いこんでいる。ぼくが数学に目覚めたのは、中学1年のときだが、それから10年にわたって、数学者以外の将来を考えたことがなかった。数学から遠い人生など、何の意味もない人生だと思っていた。数学だけが、価値あるたった一つのものだった。だから、数学の道が閉ざされたときのぼくの失意は、石神のそれと同じである、と思えた。
というわけで、期待値MAXで、友達と娘と3人で映画館へ。予想以上に、最初から最後までシリアスだったけど、とても丁寧に作られていてよかったです。あたりまえですが堤真一の演技がすばらしいし、松雪泰子も美人ってことしか知らなかったのですが、前に見た『デトロイト・メタル・シティ』でタカビーな(ステレオタイプな)女社長をやっていたから、演技の落差がすごかったです。そして、ひたすら泣けました。
まだ小さかった娘にとって、シリアスなドラマは「怖い~」だったり、雪山が「ハイジみたい!」だったりしたけれど、それでも2時間あまり、静かに映画を見ていてくれたので助かりました。わけわからなくても、そこそこ楽しめるのはかなりの才能。
映画がよかったので、原作に興味をもってみたら、どうやら映画よりもさらにおもしろいらしいと評判。これは正月帰省のフェリー(3時間半×往復)で読んでみたいです。
最近は日本の小説も海外市場を求めて翻訳されていて、その中でじわじわファンを伸ばしているのが東野圭吾さんだとか。中国では、毎年海外作家の売上ベストテン上位に位置している東野さんですが、英語圏でもファンが増えるなんてうれしいお話。
題名:容疑者Xの献身
原作者:東野圭吾
監督:西谷弘
出演:福山雅治、柴咲コウ、北村一輝、松雪泰子、堤真一ほか。
制作:日本(2008年)128分
