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コミュニケーションは言葉もカラダも“間”も使う。『会話の0.2秒を言語学する』水野太貴

会話の0.2秒って何? と気になるタイトルですが、本書によれば、複数の人が会話をしているとき、ある話し手から、別の話し手へ交替するターンテイキングが、平均0.2秒しかかからないということだそうです。

例えば、友達が眼の前で自分に向かって話をしている状況を考えてみます。そろそろ話が終わりそうな気配を察したら、自分がその話にどう会話をつなげるか(前向きにするか、ちょっと控えめにするか)、相槌を打つだけにするか、相手の表情なんかを観察しながら考える。そのわずかな間が0.2秒!?

言われてみれば納得できそうな話ですが、読んだときには驚きました。そして、言語についてだけでなく、言語を使ったコミュニケーションがどういう仕組みになっているのか研究するのも、言語学に入るとか。こちらも驚きです。

仲のいい友達なら、会話をどうつなぐかは、それほど大きな問題ではないけれど、面識のない人とか、ちょっとしか知らない人を相手にする場合、会話のシチュエーションを考え、話の内容を考え、話し手の表情を観察して、最適解を探らないといけない。改めて言われると、すっごくしんどそうです。

この本は、言語学の語用論、統語論、言語学史、意味論、会話分析など専門的な研究成果をベースに、言語学が好きな出版社勤務でyoutuberの水野太貴さんが書いたもの。語り口が一般向けなので、普通の言語学の本よりとっつきやすいのがうれしいですし、巻末の豊富な参考文献と入門書紹介も助かります。

私が好きなのは、コミュニケーション・ツールが言語だけではないって部分です。声のトーン、ジェスチャー、「間」なんかも重要で、同じことを言っても、すぐ言うか、沈黙の後で言うかでは全然印象が違うというのは納得です。もし、自分が何か言った一言で、相手が沈黙したままだったら、確かにすごく不安になりますし、言い方を変えたり、誤ったりしてしまいそう。

意味がないと思われそうな「あのー」とか「えーと」なんかの言葉も、それぞれちゃんと使い方があるし、コミュニケーションを円滑にするために必要。なにより、会話している相手にターンを渡さないで、自分がまだ話すっていう姿勢を示すことができます。

ジェスチャーは、相手に言葉で伝えたい内容を補うだけでなく、話し手のパフォーマンスも向上させるとか。確かに、人前で話すときはジェスチャーをつけるとリズムがとれたり、スムースにしゃべれる気がします。

おもしろいのは、ジェスチャーも万能ではなくて、言語の壁があるってこと。英語にだけあるジェスチャーとか、日本語ではうまく表現できない状況のジェスチャーとかもあるそうです。身体の動きが言語体系に制限されるって、なんだかわかる気がします。

コミュニケーション方法にも言語と社会の壁があります。婉曲に表現するのがスタンダードな言語もあれば、本当のことを言わない言語や、挨拶の言葉がない言語、新しい情報を取り入れない言語もある。すべては、その言語を使う社会の状況によっているなんて、世界は広くて不思議です。

一番衝撃的だったのは、成人の100人に1人が吃音を持っているという統計です。私は小学生の頃に吃音になって、大学生ぐらいにやっと治ったけれど、周囲に似た人がいなかったので、自分みたいな人は少ないんだと思っていました。

でも、この本によれば、子供は20人に1人くらいの割合で吃音とのこと。大人になるまでに、かなりの割合で治るらしいです。あと、状況によって吃音が出る人は結構多いのだとか。実は世の中、吃音はわりと普通だったんですね。

そんなわけで、若干むずかしい部分もありますが(意味論のところは何度読んでもわからない)、おもしろい部分やわくわくする部分がそれを上回る本。興味のある方は、ぜひ手にとってみてください。

吃音の男の子がダンサーをめざす話。すっごく好きです。作者の方も、吃音があったとか。親近感しかありません。

吃音だったイギリス国王のお話。実話ベースが驚きですが、大好きな映画です。


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