少しづつ、少女が大人になっていく物語。『ひとつの机、ふたつの制服』台湾、2024年
舞台は、1997年の台北。高校受験に失敗した主人公の小愛(シャオアイ)は、母親の強引な勧めで名門の「第一女子高校」の夜間部にしぶしぶ進学。1年生は全日制と夜間部で同じ教室を使うので、同じ机を共有する「桌友」ができるシステム。ちょっと古いけど、なんとなく信州松本を舞台にしたドラマ『白線流し』を思い出します。
全日制と夜間部のある学校では、全日制の学生が夜間部をバカにしていたり、夜間部の学生がコンプレックスを持っていたり。こういうの、どの国も同じで、似たようなドラマがあるのはうれしいです。
シャオアイのクラスメートには、社会人を数年経験してから夜間部に入り直した女の子もいて、しっかりもののクラスのお姉さんという感じで、頼もしい。雰囲気が、大昔に仕事をしていた夜間中学を思い出します。
シャオアイと同じ机を使うのは、全日制の成績優秀な敏敏(ミンミン)。2人は初対面から気があって、机に手紙を入れてメッセージを交換したり、悩みを打ち明けたり。時間が重なるときには一緒にお菓子を食べたり、たまに抜け出してライブハウスに出かけたり。
名門校の入口には先生が複数立ってて、途中で抜け出すのは大変。だから、夜間と全日制の制服の違いを利用します。最初は、ミンミンがシャオアイの制服を借りて、学校を抜け出し、シャオアイがミンミンの代わりに委員会に出席。その次は、2人が制服を交換して、2人一緒に学校を抜け出します。
高校時代の授業を抜け出す、あのドキドキした感じ。学校にはない何かを探して、自分を持て余した感じ。すごくわかります(絶対、あの頃には戻りたくないけれど)。
勉強が苦手なシャオアイの特技は卓球。卓球場でアルバイトをしていますが、そこで素敵な男の子に出会います。彼の名は路克(ルーク)。最初はニックネームかと思いましたが、両親が『スターウオーズ』ファンだったらしく、彼もファンなのは笑いました。
ここまで来ると、ある日ミンミンに紹介される「好きな男の子」がルーク、というパターンはお約束。ミンミンに誘われて、彼と同じ数学の塾に行くシャオアイ。一緒に勉強したり、3人でおしゃべりして親しくなるうち、ちょっとづつ自分をよく見せる嘘を重ねてしまいます。全日制、理数クラス、成績優秀……etc.
卓球のコーチのちょっとした嘘がきっかけで、距離をつめるシャオアイとルーク。2人の親密さに気づいて、イラッとするミンミン。積み重ねた嘘は、裕福らしいルークの母親とその友達たちのキラキラした世界で、ミンミンに暴露されてしまいました。
この物語は、いろんな人のちょっとした嘘が、いい感じに物語を動かしていくのがいいです。そして、シャオアイがミンミンとの衝突をきっかけに、少女漫画的展開にならず、ちゃんと自分のコンプレックスに気づいて、向き合うのもいいです。
1999年、台北大地震。映画『あの頃、君を追いかけた』でも、主人公たち2人の転機になりましたが、この映画でもシャオアイが母親に反抗するだけでなく、ちゃんと向き合うきっかけになりました。
地震をきっかけに、ミンミンとも向き合います。そして、彼女が一浪していたことを知り、コンプレックスは自分だけじゃなくて、成績優秀な彼女にもあったと驚きます。シャオアイが大人の階段を1つ登って、ミンミンとの友情をとりもどす。
頼りにしていたレンタルビデオ屋のバイトのお兄さんも、実は鬱屈を抱えた普通のニーチャンでした。シャオアイはようやく素直に自分と向き合って、受験勉強に努力できるようになっていきます。お金持ちの家に生まれた、成績のいいルークにも人に言えない悩みはある。そういう物語、いいですね。
シャオアイとミンミン、夜間部の友達、ルーク、そしてお母さんや卓球のコーチまで、みんなそれぞれ愛おしい映画。じんわり優しくて、楽しい映画。シスターフッドの物語でもあって、そういうところも好みの映画です。おすすめ。
邦題:ひとつの机、ふたつの制服(原題:夜校女生、英題:Uniform)
監督:荘景燊
出演:陳妍霏、項婕如、邱以太、季芹、黄稚玲、鄭志偉、涂善存ほか
制作:台湾(2024年)109分
