切ない恋愛ミステリー映画。『鑑定人と顔のない依頼人』イタリア、2013年
『ニュー・シネマ・パラダイス』や『ある天文学者の恋』のジュゼッペ・トルナトーレ監督の作品。
敏腕のオークション鑑定人ヴァージル・オールドマン(名前がすごい!)は大金持ち。潔癖症でいつも手袋をしているし、レストランには自分の皿があるほど。女嫌いで、恋人もいない。目利きなのをいいことに、本物を贋作と偽って安く入手して儲けたり、自宅に美女の肖像画をコレクションしている。
そんな彼が買取をきっかけに、姿を見せない依頼人のクレアに恋をし、知り合いのプレイボーイで修理工のロバートに相談しながら、恋人関係を深め、友人もでき、人間らしい生活を手に入れられた……と思いきや。というお話。
もう、最初からあやしさ満載で、絶対ハッピーエンドにならないだろう、裏切られるだろうって雰囲気バリバリなのに、それでも展開が気になって目が話せません。ストーリーのあちこちに伏線が張り巡らされて、それらに一切無駄がなくて、もう本当に見ごたえがありました。こんな緊張感と余韻たっぷりの映画は久しぶりです。
一回見ただけでは、なかなか理解できない人は、ぜひ上のリンクにある解説をどうぞ。読み応えたっぷりです。
主役のジェフリー・ラッシュは、『英国王のスピーチ』でオーストラリア人のトレーナーを演じた人でした。あの訳の陽気さとは正反対の冷血漢で偏屈な初老の男を演じていて、ちょっと驚きます。そんな彼が恋人ができていくに従い、和やかないい顔になっていき、裏切られたあとは信じられない&信じたくない表情から、精神病の施設で絶望した顔になっていく変化がすばらしいです。
ジム・スタージェスの登場場面の無駄なイケメンさに最初は違和感を覚えますが、すぐに腕のいい修理工と人の良さで観客の懐に入ってしまいます。なにより、シルヴィア・フークスの妖精みたいな儚げな美少女っぷり。あー、もう本当にステキ。1日たっても、まだ余韻が残っています。
ヴァージルとビリーの友情が歪んでいたことで、結末は万人受けしない、見る人を選びますが、私はこれが映画ならではの展開が大好きです。画家になれなかったビリーは、ヴァージルを騙して高価な絵画を手に入れたとしても、結局満足できる人生を送れないだろうし(それとも、絵を元手にして画家生活を始める?)、プレイボーイのロバートはお金よりも享楽的な生活が目当てだろうし。
クレアだけがちょっと想像つかないのは、多分、私生活が描かれていないから。ビリーやロバートみたいにバージルにしっぺ返しするようなものを残していないし、事故のときの真剣さやラストに挟まれるセックスシーンなんかは騙していたようには見えない。そのあたり、わざとスッキリさせていないところがいい。
邦題:鑑定士と顔のない依頼人(原題:La migliore offerta 英題:The Best Offer)
監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演: ジェフリー・ラッシュ、ジム・スタージェス、シルヴィア・フークス、ドナルド・サザーランドほか。
製作:イタリア(2013年)124分
