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マウンテンバイクは「自転車界のSUV」だ――舗装路だけでは分からない、本当の面白さ

自転車と聞くと、多くの人が思い浮かべるのは、ママチャリロードバイク、あるいは最近人気のクロスバイクだろう。

ところが、その中に「山へ行ってください」と言わんばかりの自転車がいる。
それがマウンテンバイク、通称「MTB」だ。


太いタイヤ、強力なブレーキ、頑丈なフレーム。そしてモデルによっては前後にサスペンションまで装備されている。
一見すると、
「これ、自転車というよりバイクじゃないの?」
と思うほどゴツい。
しかし、ペダルを踏んで山道へ入った瞬間、その意味が分かる。
マウンテンバイクは、舗装された道路を速く走るための自転車ではない。
「道がなくても、道にしてしまう」
まさに、オレが通った後に道が出来るんだ!
というような
そんな無茶苦茶な魅力を持った乗り物なのである。


■ マウンテンバイクの最大の魅力は「道を選ばない」こと


ロードバイク
得意なのは舗装路だ。
細いタイヤでスピードを出し、効率よく遠くまで走る
クロスバイクなら街中からサイクリングロードまで幅広く対応できる。

では、マウンテンバイクは何が得意なのか。
答えは簡単。
荒れた道」である。
砂利道、土、木の根、岩、急坂、ぬかるみ。

普通の自転車なら、
「ここから先は無理です」
と引き返したくなるような場所でも、MTBなら進んでいける。
もちろん、どんな場所でも走れるわけではない。
しかし、多少の段差や路面の荒れなど、一般的な自転車が苦手とする環境こそ、MTBの得意分野なのだ。
例えるなら、ロードバイクがスポーツカーなら、マウンテンバイクはSUV。
多少道が悪くても、
「まあ、行ってみようか」
と進んでいける。
この「どこでも行けそう」という感覚が、MTB最大の魅力なのである。


■ 太いタイヤには理由がある

初めてMTBを見る人が驚くのがタイヤだ。
「なんでこんなに太いの?」
と思うほどゴツい。
しかし、この太さにはちゃんと意味がある。
山道では、道路のような平らな路面ばかりではない。
石が転がっている。
木の根が出ている。
砂や泥もある。
そんな場所で細いタイヤを使えば、路面の影響を強く受けてしまう。
そこでMTBは、太くてグリップ力の高いタイヤを装着する。
タイヤの接地面や空気圧を適切に調整することで、荒れた路面でも安定感を確保しやすくなる。
つまり、あのゴツいタイヤは「見た目が強そうだから」付いているわけではない。
ちゃんと仕事をしている。
自転車界では珍しく、見た目と性能が一致しているタイプなのだ。

■ サスペンションは「乗り心地」だけではない

MTBのもう一つの特徴がサスペンションだ。
前輪だけにサスペンションが付いている「ハードテイル」と、前後に付いている「フルサスペンション」が代表的だ。

サスペンションというと、
「乗り心地を良くするための装置」
と思われがちだが、それだけではない。
荒れた路面でタイヤを地面に追従させ、衝撃を吸収しながらコントロールしやすくする役割もある。
特に下り坂では、その存在が大きい。
山道を走っていると、
「さっきまで景色を楽しんでいたのに、突然ジェットコースターになった」
ということが起こる。
段差、岩、木の根。
そこを自転車で下っていく。
もちろん無理は禁物だが、適切な装備と技術があれば、舗装路では味わえないスリルを楽しめる。


■ 実は「下る」だけが楽しいわけではない

MTB初心者が意外とハマるのが、登りだ。
「自転車で山を登るなんて苦行じゃないか」
と思うかもしれない。
その通り。
楽ではない。
むしろ、
「なぜ私は休日の朝からこんな坂を登っているんだ」
という哲学的な疑問が頭に浮かぶこともある。
しかし、苦労して登った後には下りが待っている。
これがMTBの醍醐味だ。
自分の脚で登り、自分の技術で下る。
この一連の流れには、ロードバイクの長距離走とも、街中のサイクリングとも違う達成感がある。


■ MTBは「体力」だけでは速くならない

ここも面白いところだ。
MTBは単純に脚力が強ければ速い、という世界ではない。
重要なのが「ライン取り」である。
どこを走るのか。
どの石を避けるのか。
どの段差を越えるのか。
カーブへどの速度で進入するのか。
ブレーキをいつ使うのか。
つまり、頭もかなり使う。
速く走ろうとして無理をすると、路面に負ける。
逆に、路面をよく観察して安全なラインを選べる人は、無駄な動きが少ない。
MTBは、自転車でありながら「地形を読むスポーツ」でもあるのだ。


■ マウンテンバイクは街でも意外と使える

「山に行かないとMTBを買う意味がない」
と思っている人もいる。
しかし、そうとも限らない。
段差の多い道、荒れた路面、砂利道などでは、MTBの安定感が活きる。
もちろん舗装路だけを走るのであれば、ロードバイクやクロスバイクのほうが効率的な場合も多い。
MTBは重量があり、タイヤの転がり抵抗も大きい。
だから、
「とにかく速く移動したい」
という用途には向いていない。
しかし、
「目的地までの道そのものを楽しみたい」
という人には非常に面白い。


■ MTB人気はこれからどうなる?

今後の自転車市場でも、MTBは独自のポジションを持ち続けるだろう。
特に注目されるのが電動アシスト付きMTB、いわゆるe-MTBだ。
モーターの力を利用することで、登りの負担を軽減し、これまで以上に広い範囲で山を楽しめる。
「それじゃあ楽をしているだけじゃないか」
という意見もある。
しかし、重要なのは「登ること」だけではない。
登りの負担が減れば、その分だけ下りやトレイルそのものを楽しめる。
自転車の楽しみ方が一つ増える、と考えればいい。

■ 最後に

マウンテンバイクは、単なる「山用の自転車」ではない。
それは、自転車に対する考え方を変えてくれる乗り物だ。
舗装された道路だけが道ではない。
砂利道も道。
林道も道。
土の上も道。
そして、少しぐらい荒れていても、
「まあ、行けるだろ」
と思わせてくれる。
もちろん安全第一だ。
ヘルメットやグローブなどの装備を整え、走行可能な場所を確認し、無理のない速度で楽しむことが大切である。
MTBの本当の魅力は、速さでも値段でもない。
「自分の知らなかった場所へ、自分の力で行ける」
という感覚にある。
ロードバイクが「速く遠くへ行く自転車」なら、マウンテンバイクは「道そのものを遊び場に変える自転車」。
だから一度ハマると抜け出せない。
休日に自転車を眺めながら、
「今日はちょっとだけ山へ行くか」
と言った瞬間、あなたの休日はもう普通の休日ではなくなっている。
そして気がつけば、泥だらけの自転車を玄関で眺めながら、
「……またやってしまった」
と笑っている。
それこそが、マウンテンバイクの魔力なのかもしれない。

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