【2026年版】大学院留学ガイド「推薦状」
本記事は、海外大学院出願における推薦状の役割と、依頼する側・書く側双方の視点をまとめたガイドです。2026年7月時点の情報です。推薦状の通数・形式はプログラムごとに異なるため、必ず志望校の出願要項をご確認ください。
1. 推薦状とは?
海外大学院に出願する際には推薦状が必要になります。Recommendation Letter や Reference Letter と呼ばれるこの推薦状では、出願者のことを良く知る人物数名(米国大学院への出願では通常3通以上、ヨーロッパでは2通のことも)が出願者について「太鼓判を押す」ことになります。直接自分で準備をする書類では無いので、海外大学院を目指し始めた方にとっては最も不安に思う出願書類の一つかもしれません。しかしながら、推薦状は出願に必要な全ての書類の中で1, 2を争うと言っても過言ではない非常に重要な書類です。
出願者を選抜する大学院側にとって、推薦状から得られる同じ研究分野の研究者による出願者についての客観的な評価と情報は非常に重宝します。良い推薦状とは、出願者の研究能力のみならず研究に対する情熱や、研究姿勢や他人とのコミュニケーション (work ethics/soft skills) を踏まえて実際に志望する大学院に入って成功できるか否かを、具体例を交えながら説明するものです。
学生は基本的には推薦状の中身を見ることができないため(注:出願システム上で閲覧権を放棄 (waive) するのが一般的です)、推薦者は褒めちぎるだけではなく欠点なども踏まえて率直に記述した推薦状を書くことができます。SoP(エッセイ)やCVを含めたほとんどの書類は出願者の長所を強調する場所のため、信頼のおける第三者によって書かれたフェアな推薦状は出願者の実際の能力や人間性を知る道具として役立ちます。
2. 推薦状の内容
一般的に、良い推薦状は以下の条件を満たしているものと言えます。
出願者の研究能力とその将来性について具体的かつ客観的に説明している
志望する大学院で成功するという根拠を示して具体的に説明できている
また、良い推薦状は以下の条件を満たしている推薦者が書いたものだと考えられます。
出願者のことを高く評価している
出願者との関わりが短くない(1年以上)
出願者を実際に指導したか、一緒に働いたことがある
博士号を有している
出願する大学院に共同研究者か直接の知り合いがいる
海外大学院で学位を取得している
出願分野で著名である
海外大学院の審査に関わったことがある
太字の部分は一般的に必要と言われている条件で、残りの部分は必須ではないがあるとプラスに働くという項目です。上記のリストにあるように、推薦状の内容に加えて推薦する人自体も重要だということが理解できると思います。適切な方に推薦状を書いてもらえれば、出願する上でこの上ない武器になるでしょう。
3. 誰に推薦状を頼むべきか?
具体的な推薦状依頼の戦略・方法(依頼のタイミング、渡すべき資料、断られた場合のリカバリーなど)については、以下の記事に詳しくまとめています。
では、誰に推薦状を書いてもらうのがベストなのでしょうか。日本で一般的な大学・大学院生活を送っていると、比較的長時間接する教員は卒業論文・修士論文の指導教官のみになることがほとんどだと思います。となれば、三通もの「強力な推薦状 = 出願者のことをよく知る人からの具体的な推薦文」を揃えることは至難の業です。
推薦状を誰に依頼するのか、計画を立てるのに早すぎるということはありません。学部1-2年生の場合、卒論などで実際に研究室配属が始まるのを待たずに積極的に研究の機会を求めることから始めましょう。大学後半あるいはすでに修士課程に入っていて出願まであまり時間が無い場合でも、ここからの工夫次第で強力な推薦状を得ることは可能です。
例えば、自分の興味のある分野に近い科目の講義があるとしましょう。その授業で際立った成績を残すことで、教授から推薦文を書いてもらえる可能性があります。ただし注意しなければならないのが、授業を受けて優(=A)を取るだけでは意味がないということです。推薦状には出願者が際立って優れた学生だったことを具体的に書けないと意味がないため、その講義で以下の例のように際立っていることが理想的です。
1) 試験で他の学生と比較して圧倒的な成績で一位だった
2) クラスで誰も解けなかった問題を解いた
3) 誰よりも多く鋭い質問をし、教室内の議論に貢献した
4) 英語力を発揮して誰よりも明快に最終発表をした
まだ卒論・修論プロジェクトが始まっていなかったり、時間に余裕があると感じた場合は、迷わずその授業を教えている教授に研究の機会がないか聞いてみましょう。どんな先生でも、熱心に自分の授業を受けた学生から自分の研究室に入って研究したいという姿勢を見せられると嬉しいはずです。そうして得た研究の実績のみならず自発的に研究機会を掴み取る姿勢も、強力な推薦理由として書くことができます。
推薦者の条件を細かく指定しない大学が多い一方で、「少なくとも1通は大学教員から」といった条件を推奨・指定する大学もあります(推薦者にPh.D.を求めるケースや、アカデミアと企業から何通ずつ、と内訳を指定するケースもあります)。志望校の出願要項を必ず確認しましょう。参考までに、実際に米国大学院に合格した約100人にアンケートを取ったところ、回答者93人中全員が出身校の指導教員から1通推薦状をもらっていました(XPLANEが過去に実施した調査に基づく数値で、回答者の出願時期には幅がある点にご留意ください)。そして共同研究者、インターン先のメンター、大学院以前に留学した際の指導教員から推薦状をもらうというケースが続きます。さらに、推薦者のうち米国PhD取得者がいた割合が回答者の過半数を占めるという結果もみえてきました。大学院出願に推薦状が必要という海外特有の文化に理解がある方に依頼する傾向があるのかもしれません。
4. 先輩たちの推薦者の組み合わせ実例
一つ一つの推薦状が具体的であるだけでなく、推薦する学生の異なる側面について書けるように、多様な視点を描ける推薦者の組み合わせを考えることも非常に重要になります。実際に合格した先輩たちが誰に依頼したのか、受験記から具体例を見てみましょう。
いのうえさん(社会人)は、留学先のメンター・修士時代の教授・会社のマネージャーという3通の組み合わせでした。アカデミアと実務の両面から人物を語れる、社会人ならではの構成です。
明田さん(社会人)は、学生時代にお世話になった研究室の先生2名+共同研究をしていた研究者1名に依頼しました。会社を辞めての挑戦でも、学生時代のつながりが軸になっています。
スコさんは、現在の研究室の指導教員(教授)・日本人の准教授・海外出身の准教授という同一研究室内での3通。振り返りとして「書いてほしいこと(自分の成績や取り組み、アピールポイント)があれば事前に渡した方がいい」という実践的な教訓も共有されています。
りんさんは、3通とも所属大学の学部の先生方でした。一般には多様なバックグラウンドの推薦者が良いと言われる中、同一機関の推薦者のみでも合格した例として、「理想の組み合わせが揃わなくても諦める必要はない」ことを示しています。
Kitamuraさんは9月頃に学部時代・修士時代の教授陣へ連絡し、草案を自分で作成して先生方に見ていただく形で準備を進めました。
ただし、この進め方には注意が必要です。 大学によっては、出願者本人が推薦状を書いたり下書きしたりすることを出願規約違反と明示しています。たとえばStanfordは「推薦者が推薦状の唯一の書き手でなければならず、たとえ推薦者から頼まれた場合でも、出願者本人が下書き・執筆・翻訳・提出を行うことは規約違反にあたる」と定めており、この方針を推薦者に伝えるのは出願者の責任だとしています。§1で述べたとおり出願者は推薦状の閲覧権を放棄するのが一般的で、自分で書くことはその前提とも矛盾します。
多忙な先生の負担を減らしたい場合は、推薦状そのものの下書きではなく、自分の実績・エピソード・志望動機を箇条書きにしたメモやCVを渡すのが安全です。依頼先の出願要項に本人関与に関する記載がないか、事前に必ず確認しましょう。
自分の状況(現役学生か社会人か、研究室との関係など)に近い先輩の受験記を探して参考にしてみてください。
5. 推薦状を書く方へのガイドライン
ここでは、実際に推薦状を書く立場(以下、推薦者)になった際、どのようなことに気を付けるべきか紹介します。推薦状は、出願資料において他人が提供する唯一の書類であり、周囲からどのように評価されているのか知るという点で重いウェイトを占めます。
そのため、推薦者は出願者と情報共有をすることが重要です。最終的にどのような内容を記載するかは推薦者の自由ですが、「出願者が応募する学校、分野、研究室」「他の推薦者」「内容の要望」などを事前に共有できると推薦状のイメージが湧きやすくなります。
出願者の志望校を直接知っていたり個人的な知り合いがいることは、推薦状を書く上で大きなアドバンテージになります。また、「他の推薦者」「内容の要望」を聞くことで、自分の推薦状に求められている視点を理解することができます。例えば同じ研究室から助教と教授が推薦状を書く場合、内容の役割分担も可能です。近くで研究している姿を見ていた助教は仕事のしやすさ、普段からの研究姿勢、コミュニケーション能力などについて具体的に言及できる一方、教授の視点からはプロジェクトへの貢献度、研究者としての素養などについて言及することができます。
博士課程では多くの場合、一度学生を受け入れるとその学生の授業料、生活費、研究費を数年間負担することになります。これは決して安い投資ではなく、入学時点で本当に学位を取得する素養があるのか、大学とマッチするのかといったことを探るためにも推薦状から得られる情報は非常に重要です。
評価する側が具体的に求めているものの例として、「研究能力、アイデア力、理解力、成長・吸収率、勉学の能力、忍耐力、コミュニケーション能力、仕事の効率、プレゼンテーション能力、文章力、英語力、人間力」などが挙げられます。小さな研究系大学では、フィット感やコミュニケーション能力が重視されるのに対し、大きな総合大学では個人で研究を進める能力などが重要視されることがあります。
推薦状では、これらの能力のうち出願者がどこで、どのように秀でているのか書くことが重要です。例えば「AさんはXX学会で講演賞を受賞したことからもわかるように、プレゼンテーションが非常に上手い学生だった」ではなく、「Aさんはメッセージを明らかにし、それを効果的に伝えることを常に心掛けていた。彼女が作るスライドには常にメッセージが明確に記されており、それを示すデータ加工にも工夫がちりばめられていた。XX学会でYに関するテーマを発表した際、彼女は煩雑なZに関するデータを上手く切り分けて伝えていた。結果的に彼女はこの学会で講演賞も受賞した」と解像度を上げて伝えられるとよいでしょう。
また、推薦状では受験校が具体的な情報を求めてくることがあります。よくある例として「自分が見た学生のうち上位何パーセントの学生ですか?」というものがあります。その際にはしっかりと具体的に答えるようにしましょう。
最後に、書き終わった文章は見直した後に英文校閲を行いましょう。文法やタイピングに誤りがある場合、英文を正しくチェックする労力を費やすほどの価値がこの推薦状には無い(=それほど重要な学生ではない)、もしくは英語の教養がない研究者とみなされ、いずれも出願者に不利に働いてしまう可能性があります。
6. おわりに
ここでは、推薦状に関して推薦者と出願者の両方の視点から解説しました。推薦状が出願書類の中で重要なファクターとなることを理解し、余裕を持って強力な推薦状を用意しましょう。
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