働くかぎり読み終わることのない本
コンテストの課題図書を眺めていたら、見慣れた表紙に思わず目が留まった。『働き方の哲学 360度の視点で仕事を考える』。私は2年前、この本に大変お世話になったので、感謝の気持ちを込めてファンレターを送りたいと思う。
私がこの本を買ったのは、東京の本社で新卒採用を担当していた時である。とはいえ、「就活生に接するにあたり仕事やキャリアに関する知識を深めよう」なんて高い意識を持って買ったわけではない。当時の私は学生にキャリアの希望を問いながら、自分自身のキャリアに悩んでいた。
もともと人事は希望していた配属先ではなかった。仕事をする中で自分のはつらつとした性格が採用担当向きであることに気づいたが、できることとやりたいことは異なっていた。採用の仕事は確かに面白い。全国に出張できたり社内の人脈が広がったり、いいこともたくさんある。それでも、私はずっと海外で働きたいと思っていた。
採用担当をしていると、イベントや面接のたびに学生から「ヨシサキさんは今の仕事のどういうところにやりがいを感じていますか?」とか「今後会社で成し遂げたいことは何ですか?」といった質問を受ける。毎年何百人もの学生を相手にするので、正直就活生以上に自分のキャリアに向き合う羽目になる。
表面的な回答はすぐに見抜かれてしまうので、相手が欲しい学生ならなおさら、こちらも本気で答えなければいけない。希望と現実にギャップがあるなかで、だんだん学生のまっすぐな質問に答えることが苦しくなっていた。
さらに当時は入社5年目で、仲の良い同期や学生時代の友人が次々と転職していた時期だった。自らの意思で新たなキャリアを歩み出す友人がまぶしく見え、自分はぬるま湯につかっているんじゃないかと妙な焦りを覚えた。
言葉にできないもやもやが続くと、何もかもがネガティブ思考になるので精神衛生上よくない。
「早く自分の気持ちを整理して、キャリアを見つめ直そう・・・!」
そんな藁にもすがる思いで書店に行き、キャリアに関する本を漁った。
しかし店頭に並んでいたのは転職ありきで話を進めてくるものや著者のキャリア観を押しつけてくるもの、こちらの状況も知らずいきなりアドバイスしてくるものばかり。欲しいのは答えでも持論でもアドバイスでもなく自分のキャリアプランニングを手助けしてくれる本なのだが・・・。
そんな時目に留まったのが、この本だった。

第一印象は「絵がかわいい」だった。パラパラとページをめくると、キャリアや仕事に関するさまざまな概念・キーワードが、平易な言葉とほっこりするイラストで解説されている。初めから順番に読み進めていくというよりは、興味のある部分をつまみ食いして読むのに適した構成になっている。中高の頃に(授業がつまらないと)よく読んでいた国語便覧や世界史図録に似ている。
冒頭のページに戻ると、「この本は、働くことに対する健やかな観(ものごとのとらえ方)をつくる絵辞典です」と書いてある。
そう、健やかになりたいんだ!!!!とこの本を掴んでレジに持って行った。
『働き方の哲学』を読むうちに、自分が今でも強く海外赴任を希望していること、一方会社のことは堅実なんだけど自由な社風とか、我が強いけど温かい社員とか、なんだかんだ大好きなこと、だからこそ自分が満足しているのか不満なのかよくわからずもやもやしていたことに気づいた。
最終的には「今の会社で目の前の仕事を頑張りつつ、海外赴任の希望をしっかり周囲に表明すればいいじゃないか」という結論になり、2年後の今、こうしてインドネシアにいるわけである。もちろん海外赴任はゴールではないのだが、あの時この本に出会えて本当に良かった。
先週船便がようやく届き、改めて『働き方の哲学』を見返してみた。正直「こんな解説あったっけ?」という感じで全然覚えていなかった(笑)これからもキャリアでもやもやしたら、この本のお世話になるだろう。
#読書の秋2020
もとい #読書の常夏2020


