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【経営事項審査】 W点に「週休2日(WLB)」加点が組み込まれた理由

「えるぼし認定などを取れば、経審の点数が上がる」。 建設業に携わる経営者の方であれば、一度は耳にされたことがあるかもしれません。

しかし、この制度が「なぜこれほどまでに重要なのか」、その背景にある国の狙いまでを説明できる方は、意外と少ないのではないでしょうか。ただの「加点項目」として捉えていると、見過ごしてしまう本質があります。

実は、この制度には、建設業の2024年問題を見据えた、国による周到な「多段ロジック」が組み込まれているのです。

今回は、なぜW点に週休2日(ワークライフバランス)が組み込まれたのか、その背景と経営者が知っておくべき意図を解説します。


1. 建設業の「休まない文化」と、迫りくる限界

まず、国がなぜこれほどまでに強く「週休2日」を推し進めるのか。その背景には、データが示す危機的な状況があります。

国土交通省の調査によれば、建設業の年間総実労働時間は全産業平均と比べ、350時間以上も長くなっています。休日に関しても、「4週8休(週休2日)」を実現できている現場は、まだ全体の2割強に留まっているのが現実です。

その一方で、若手社員の離職率は高く、深刻な高齢化が進んでいます。今のままの「休まない文化」を続けていれば、10年後には建設業の担い手が消滅しかねない。国はこの構造的なリスクに強い危機感を抱いています。


2. なぜ「経審のW点」に組み込まれたのか?

法律で週休2日を即座に義務付けることは、民間・地方公共団体など発注者が多様である建設業の特性上、非常に困難です。そこで国は、市場メカニズムをうまく活用する3つのアプローチを組み合わせました。

理由①:公共工事の「優先的評価」による動機付け

国が週休2日を即座に「完全義務化」できない背景には、多様な発注者の存在や、天候・緊急対応に左右される建設業特有の事情があります。 そこで、経審の点数が公共工事の入札格付けに直結する仕組みを逆手に取りました。「週休2日に取り組む企業は、公共工事で優遇される」という土壌を作ることで、業界全体が自律的に働き方改革へ向かうような道筋をつけたのです。

理由②:既存の「認定制度」を活用した合理的な審査

「週休2日かどうか」を国が一つひとつ現場単位で審査するのは、行政側にとっても企業側にとっても膨大なコストがかかります。 そこで採用されたのが、厚生労働省の「えるぼし・くるみん・ユースエール」といった既存の認定制度です。すでに信頼性の高い外部証明を「パスポート」として利用することで、審査コストを抑えつつ、実態を伴う企業を客観的に評価する仕組みへと昇華させました。

理由③:2024年問題を見据えた「準備期間」の創出

WLB加点が施行されたタイミングは、決して偶然ではありません。2024年4月から建設業に時間外労働の上限規制が適用されることを念頭に、その1〜2年前から段階的に『認定取得を促し、体制を整えさせる』というロードマップが引かれていました。つまり、法的な強制適用という『強制力』が働く前に、自主的に準備を進めた企業が経営的に報われるような、周到な前倒し誘導策だったのです。


3. 「隠れたペナルティ」という視点

今回の改正でW点素点の上限が引き上げられ、係数も変更されました。

冷静に見れば、「WLB加点という新しい土俵に乗らなければ、以前と同じ取り組みをしていても、相対的にP点が下がる」という設計になっています。

これは単なるプラスの評価制度ではありません。制度の改定によりW点の上限や算出係数が変わった結果、以前と同じ取り組みを続けていても、相対的にP点が押し下げられてしまう構造になっています。言い換えれば、加点項目を一つでも多く積み上げることが、格付け維持には不可欠な時代になったということです。

この構造を冷静に理解し、いち早く体制を整えた企業が選ばれる。今の経審は、そうした『経営の正しさ』が如実に数字に表れる仕組みへと進化しています。


最後に

週休2日化は、現場の効率化やICT投資を伴うため、決して簡単なことではありません。しかし、制度の裏側にある国の意図を知れば、これが単なる事務手続きではなく、「10年後も選ばれる企業になるための経営戦略」であることが見えてくるはずです。

目先の加点のためではなく、持続可能な組織を作るための第一歩として、この制度をうまく活用してみてはいかがでしょうか。

※注:経審の点数算出は複雑な計算式に基づきます。具体的な加点状況やシミュレーションについては、各都道府県の経審ガイドラインを確認するか、専門家へ相談することをお勧めします。

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