創業期に後悔しない知財の3つの意思決定
「創業のときにやっておけばよかった」という後悔の話を、私はこれまで何度も聞いてきました。
例えば、創業5年目のスタートアップ経営者が相談に来たとき、こんなことを言っていました。
「創業当初にサービス名を商標調査せずに使い始めて、3年後に他社から商標権侵害だと言われた。
名称変更を余儀なくされ、顧客への周知コストで300万円以上かかった」。
積み上げたブランドも白紙に戻ります。
創業期は資金も時間もない。だからこそ、何を優先すべきかがわからず、知財が後回しになります。
この記事では、創業期に最低限やっておくべき知財の意思決定を3つに絞ってお伝えします。
■ 意思決定① ブランド名の商標調査と出願
創業期の知財で最優先にやるべきことは、サービス名・ブランド名の商標調査と出願です。
商標は「早い者勝ち」が原則です。使い始めるのではなく、まず出願することが先です。出願することで、他社が同じ名前で先に登録することを防げます(出願日が先行する)。
商標調査はJ-PlatPatで無料でできます。
同一・類似の商標が既に登録されていないかを確認してから出願してください。
調査せずに使い始めると、先ほどの例のように後から名称変更のコストが発生します。
出願費用は1区分12,000〜15,000円(特許庁費用)。弁理士に依頼しても1区分あたり10万円程度です。
数百万円の名称変更コストと比べれば圧倒的に安い保険です。
初めは慣れないとつきにくいかもしれませんが調査は専門家でなくとも比較的簡単にできますが、リスクを可能な限り下げるためには専門家に任せた方が良いと思います。
■ 意思決定② コア技術の特許出願か営業秘密化の選択
自社のコア技術について、「特許で公開して守るか」「秘密として守るか」を早期に決める必要があります。
特許出願を選ぶ場合、出願前に公開(展示会・SNS・論文等)すると「新規性」を失い出願できなくなります。「後で出願しよう」と思いながら情報を公開していると、その瞬間に権利化の機会を失います。
一方、製造方法や配合など外部からわかりにくい技術は、特許化せずに営業秘密として管理する選択肢もあります。特許は20年で消滅しますが、営業秘密は管理を続ける限り永続的に守れます。
「この技術は特許か秘密か」を創業期に意識的に決めておくことで、後から後悔するケースを大幅に減らせます。
■ 意思決定③ 外注・共同開発時の著作権・特許の帰属
創業期は外部の力を借りることが多い。フリーランスへのサイト制作依頼、共同創業者との技術開発、アドバイザーとの連携など。このとき著作権や特許の帰属を契約で決めておかないと、後から「これは私の著作物だ」「この技術の権利は私にある」というトラブルに発展します。
特にシステム開発・デザイン制作を外注する場合、著作権の帰属を明記した契約書を必ず作ること。共同開発をした場合の特許出願における持分も、事前に合意しておくことが重要です。
「口頭で合意した」「仲が良いから大丈夫」では、後から問題が起きたときに対処できません。
■ まとめ
・創業期の最優先知財事項①:ブランド名を使い始める前に商標調査と出願を行う
・創業期の最優先知財事項②:コア技術を特許で守るか営業秘密で守るかを決める
・創業期の最優先知財事項③:外注・共同開発時の著作権・特許の帰属を契約で定める
・展示会や公開の前に必ず「出願済みか」を確認する
・創業期の知財コストは、後から発生するトラブル対処コストと比べれば安い
創業期の3つの意思決定が、事業の知財基盤を作ります。「後で考えよう」ではなく、「今日考える」習慣が、変なところで足を救われない今日この事業体制につながります。
