「うちには知財なんてない」と思っている経営者へ
「うちみたいな会社には知財なんて関係ないですよ」──この言葉を私は何度聞いたかわかりません。
不動産管理会社の社長、飲食チェーンのオーナー、地域の清掃業者……さまざまな業種の経営者が同じことを言います。
知財といえば大企業の特許や半導体技術というイメージが強く、自社とは縁遠いものに感じているようです。
ところが実際に話を聞いてみると、多くの場合「知財はある」のです。ただ、本人がそれを「知財」と認識していないだけです。
「うちには知財がない」と言っていても30分も話すと、知財の候補が複数出てきます。
■ 「知財がない」と思わせる誤解
最大の誤解は「知財=特許」という思い込みです。確かに特許はハードルが高く、技術的なアイデアが必要ですが、知財には商標・意匠・実用新案・著作権・営業秘密など多くの種類があります。
例えば、長年使っている会社のロゴや屋号は商標登録の対象です。独自のサービス提供の手順・マニュアルは著作権の保護対象になり得ます。
顧客リストや独自の調達ルートは秘密管理することで不正競争防止法上の「営業秘密」として保護されます。製品の独自デザインは意匠権の対象です。
知財は「特許だけ」ではなく、「会社の独自性を支えるあらゆる無形の価値」と広く捉えることが出発点です。
■ こんな会社にも知財は眠っている
飲食業であれば、独自レシピや製法(特定の場合は特許対象)、店舗のインテリアデザイン(意匠)、ブランド名・ロゴ(商標)、接客マニュアルや研修資料(著作権・ノウハウ)が知財になり得ます。
サービス業であれば、独自の業務プロセスやシステム(特許・営業秘密)、Webサービスの画面デザイン(意匠・著作権)、顧客データや蓄積されたノウハウ(営業秘密)などがあります。
製造業でなくても、「うちならではのもの」は必ず存在します。それが知財の候補です。大事なのは「何があるか」に気づくことです。
■ 気づかずに失ってきた知財のリスク
知財の存在に気づかないでいると、二つのリスクがあります。
一つは「守れていないリスク」です。商標登録をしていなければ、競合が先に登録してしまう可能性があります。実際に地方の人気店が上京展開を試みたとき、すでに東京で同名の商標が他者に登録されていて、店名を変えることを余儀なくされたケースがあります。
もう一つは「使えていないリスク」です。知財があれば取引先への信頼度向上、補助金申請での加点、投資家へのアピールなど、さまざまな場面で活用できます。
知財があることを知らないまま、これらのチャンスを逃しているケースも多いのです。
■ まとめ
・「知財=特許」という思い込みが「うちには知財がない」という誤解を生んでいる
・商標・意匠・著作権・営業秘密など、多くの知財は業種を問わずどの会社にも存在する
・ロゴ・屋号・独自のノウハウ・顧客リストはすべて知財として管理・保護が可能
・商標未登録のまま事業を続けると、競合に先取りされるリスクがある
・知財の存在に気づくことが、保護と活用の第一歩
「うちには知財がない」と思っている経営者ほど、実は気づいていない知財を持っています。
