四方山話・宝塚紀行・エリザベート③
♬美しき青きドナウ=BlueDonau
J・シュトラウスのこの最高傑作が大好きだ。1973年公開の同名米国映画を、銀座まで観に行った。中学生だった。
シュトラウスの作曲風景、年上の妻との愛情深い暮らし。ウィーンの景物。ミュージカル風の場面もあり、楽しかった。
映画、演劇、CMにも多様に使われ、毎日のように聴く曲だ。
オーストリー国民は、皇帝時代から現代に至るまで、ドナウ川と同様この曲を愛し、「第二の国歌」と呼ぶ。
常に、ウィーンフィルのニューイヤーコンサートのアンコール曲。最初の一音で一旦演奏を停め、指揮者と楽団員全員がドイツ語で「明けましておめでとう」と微笑みかけるのを、オーストリー国民と中継で観る世界中のファンが待っている。そして大河に身を委ねるような演奏が始まる。
歌劇『うたかたの恋』
仏作家クロード・アネの小説『Mayerling』を基に、生涯劇団付き脚本家、兼演出家を貫き、ファンから見ると劇団の恩人、柴田侑宏先生の傑作の一つ。
側聞では、オマー・シャリフ&カトリーヌ・ドヌーブ主演の1968年公開の英仏合作映画を観た、麻美れい氏が柴田先生に熱望し、ルドルフを演じたとのこと。
1983年初演。19世紀末ハプスブルク家崩壊の前兆とも言える、ルドルフ皇太子の死亡事件に取材。
即、大評判で、社会人なりたての私は東京宝塚劇場で観た、と思う。
悲劇を予感させる、乙女心を揺さぶる、派手な前奏で幕が上がる。大階段に主役二人のみ。白い軍服に長身が映える麻美れい、白いドレスの可憐な遥くらら。「マリー来週の月曜日、旅に出よう」と言う麻美ルドルフに「あなたとご一緒ならばどこへども」と遥マリーが応じ、主題歌が歌われ、二人が躍る。
銃声。
そしてそこへ「美しき青きドナウ」が流れる。
華やかな舞踏会。
《悲劇ですと、観客に知らせた上で、ウィーン社交界という、憧れの世界へと入っていく。今も耳に残る、宝塚メロディとウィンナワルツの、見事なコラボ♬》
再演毎に、わくわくした幕開き。
ルドルフは王子様の似合うトップ。
地方専用❓と言われた程に、地方公演での再演が続いた。
一昨年時、DVD4枚所有。
初演当時はDVD時代でなかったのが、残念。
プレ終活を勧められ、苦悩の選択。今は一枚。
ルドルフ マリー
1983年宝東 麻美れい 遥くらら
1993年宝塚 麻路さき 白城あやか
1993年東京 紫苑ゆう 白城あやか
1999年 真琴つばさ 檀れい
2000年 和央ようか 花總まり
2006年 春野寿美礼 桜野彩音
2013年 凰稀かなめ 実咲凜音
2018年 紅ゆずる 綺咲愛里
【wiki…だと表で主な配役見られるのに、並べてみた。
2023は足が不自由で観ていない、残念。
4枚のDVDを一枚にする苦悩を思い出しm(__)m】
5回も地方公演に出すのは、人気作品だから。
そして、色褪せない、柴田侑宏文学。
脚本集買っておけば良かったと、後悔頻り。
Mayerling
現地でも「マイヤーリンク」と発音していた気がする。
私のウィーン行きの目的の一つが「マイヤーリンク」。
日本から申し込める、日本人ガイドが付くバスツァーを出発直前に発見し、大喜び。
検索途中、有名サイトで「ここも宝塚ファンの踏み荒らす地になりetc」書込みにぶつかるが、気にしない。
【ナンのお陰か、池田理代子氏がフランスからレジオンドヌール勲章を贈られ、ナニゲに、ウィーンと宝塚は姉妹都市である。ヅカオタの経済効果を舐めてはいけない。】
地底湖、シューベルト菩提樹作曲の庭を見ながら、シューベルトケーキでお茶、などもある、半日ツァー。60ユーロ。14年前と今で日本人には大きな差額(-_-;)
ディズニーのホンテッドマンションのモデルだという「リヒテンシュタイン城」~私が反応すると、ガイドさんが「リヒテンシュタイン侯爵は大変なお金持ちで、ウィーン付近に邸とお城を4つも持ち、別に国も持っている。」と説明。ハプスブルグ帝国の広大さは、それを構成する大貴族たちの広がりだった事に気づく。
バスは樹氷で真っ白なウィーンの森を行く。バスの外は氷点下だろう。こんな所を通ったのか、マリーは。
やがてあまり雪のない、ハイリゲンクロイツ修道院に着く。
「マリー・ヴェッツェラのお墓はどこでしょう❓」尋ねるべきだったが聞けなかった。
広い中庭に立ち、歌劇うたかたの恋の終幕直前のジャン・サルバドール(ルドルフの従兄弟、自由主義者、皇籍離脱後行方不明)が言う台詞を思い出していた。
「ルドルフの願いは聞き入れられず、遺体は宮廷に持ち去られた。慙愧に絶えず、マリーに白い花嫁衣裳を着せて、一人ただ一人、ハイリゲンクロイツの丘の上に葬ったのです。」
平みちさんの《ざんきに絶えず》が引き金となり、口を押さえ号泣した20代。
50代。なんだか、いろいろ調べ過ぎた。
ルドルフ皇太子
自由主義に目覚め、ドナウ連邦を構想したとか??EUの基の基の素になる考えだったかもしれない。
でも遊び人。溢れ出る救いのない情報。
マイヤーリンクの元王室専用の狩猟小屋(シェーンブルグ宮殿に比して)は、今カルメル派修道院の教会になり、《悲劇を観光に来る》世界中の観光客に、この事件の資料を掲示している。
ルドルフとマリーの死の謎は、解けないまま、諸説あり。
事件直後の写真も公開されていて、ギョッとする。
死に顔は、穏やかで美しい。
エンバーミング的な技術が施されたかもしれない。
『エリザベート』の筋立に合致する、父皇帝から皇位継承権を剥奪されかけてのうつ病とする、現在の多数派が正解かもしれない。それでいい。
凰稀かなめ
和央ようかさんと凰稀かなめさんが、『エリザ』『うたかた』両方でルドルフを演じている。
和央さんは、1998年演じた《ロマンスグレー》そのものの、皇帝陛下の♬夜のボートが素敵で、ルドルフが記憶から飛んでいる。
凰稀さんは2007年『エリザ』ルドルフを演じていた。
その4月、ウィーン版『エリザベート』の初日を偶然観劇。客席に、5月からの公演の為、稽古中の雪組のほぼ全員と他組のジェンヌ。
「宝塚スカイステージ」で、ウィーンの皆さんと雪組の顔合わせが放映。
あちらの子ルドルフを演じた可愛い男の子が、凰稀かなめさんにぴったりついて離れない。平服とはいえすっきりと男役然としている、凰稀さんに「同じ役だよ」と話しかけたらしい。彼の目線で、美貌が目を曳いたのであろう。
プロの男役
麻美れい、和央ようか、凰稀かなめ、普段の有様を垣間見したことがある。優しく女性らしく、凛とした立ち姿の持ち主たち。
プロの男役のプロのプリンスチャーミング。
男性では演じられない王子様。
柴田侑宏が描き続けたのは、宝塚の王子様。
然るべき学識を持った柴田氏は、現実を知った上で描いた。
麻美氏も事実を知るだけに、悪そうなルドルフを演じた。
凰稀ルドルフは、繊細で悲しく事情ありげに演じた。
ハイリゲンクロイツの丘の上に眠る、17歳で逝った人の為。
私はまたプリンスに会いたくて飛行機で関西に向かった。
おばあになっても、心に眠る乙女心のために。
