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AI作監のススメ:なぜ従来アニメの制作フローではAIが生かせないのか

「AIでシリーズアニメが作れる!」はほんと?

Sora2がiOSのダウンロード一位になり、動画生成AI界隈の方以外の一般の方でも動画生成に触れる人が増え、AIによるアニメというのも一気にメジャー化した感じがします。


そこでよくささやかれるのが「AIでシリーズアニメが作れるのでは?」という意見。(これは今に始まった話ではありませんが)

しかし、上に言われて実際にAIを使っている現場では「描いたほうが早い」という声が圧倒的に多いです。

なぜか?

それはAIの能力不足(これはまだありますが)、もしくは現場の技術力の問題ではなく、もっと構造の問題によるものが大きいです。

この記事では既存のアニメの工程の中でのAI導入をスムーズにするための中核的役割「AI作監」を置くことを提案します。



従来:線画の時点で100%の品質を保証する作監

アニメ制作は大きく分けて
1. プリプロ(企画・絵コンテ)
2. 作画工程
3. ポスプロ(編集・音響)の流れを取ります。

このうち「作監(作画監督)」は、作画工程の特に線画の段階のクオリティを最終的に担保する“門番”のような存在です。(プロジェクトによっていろいろありますが)


線画が動画(この時点でまだ色はついていない)に渡る時点で完璧でなければならず、彩色や撮影に入ったあとでの修正は避けたい。

AIで出した原画のイメージなので悪しからず

なのでキーフレームごとに細かく指定をし、チェックを重ね実際のアニメになったときに演出意図通りに動いているかの保証をします。

だから作監は「完成品としての絵」に責任を持ちます。

一度走り出したら後戻りはしたくない

AI:従来の作監の手法が通じない動画生成AIの出力

一方で、動画生成AIは根本的に異なります。線画、動画、彩色というような段階を踏まず、撮影効果・場合によっては効果音まで一度に生成してしまいます。

上記はカット割りから声の演技までが一つの出力として出されています。
つまり、“修正可能な中間工程”が存在しません。

そのため作監が「1枚ずつ直してクオリティを整える」ことができない。プロンプトを直しても、すべてがその通り動いてくれるわけではありません。

結果、「これはどうすればいいのか」と途方に暮れる現場が生まれます。

大体現場はこうなります

キーフレームを打ちまくりたくなる

コントロールが効かない。となると「より強いコントロールを効かせなければならない」という発想になりがちで、すぐに試すのが「キーフレームをたくさん打つ」という方法です。

とにかくアクションのポイントポイントでスタートフレーム、エンドフレームを指定して、なんならスローモーションにして後で速度を上げるなど。

従来のアニメの制作フローから考えると順当な考え方ですが、こうなるとドツボにはまりがちです。細かく割った動きをスタートとエンドフレームに過度に適応すると、その動きにダイナミックさが欠けたりします。

結果「AIの動きはいまいち」という評価になります。


絵コンテはゴールではなく「仮説」。動画生成AIに適応した作監の手法

AIの弱みは上記のように中間工程を出さずに最終出力だけをポンと出してくる、そしてその修正が非常に難しいということでした。

では強みは?

それは生成のスピードと予想外のアドリブです。

動画生成に不慣れな方にはイメージしづらいかもしれませんが、プロンプト(指示)は細かく書けば書くほど良いというものではありません。むしろ幅を持たせてAI自身にイメージを膨らませてもらったほうが良いこともあります。

これはアドリブを存分に発揮させた例です。一つの画像から同一プロンプトで何個も出力させて編集しました。


線画の一枚一枚の修正、という直し方はできませんが、「演出意図に照らしたシーンの全修」で対応すべきです。

ここで細かく指定するのではなく、アプローチの方向性を練るのがAI作監の腕の見せ所です。考えるべき箇所はいくつかあります。たとえば

  • シーンに適したモデルを使っているか?(アクションが苦手なモデルにアクションをやらせようとしていないか?)

  • 他の生成方法はないか?(t2v(テキストからの動画), i2v(画像からの動画), v2v(動画からの別動画), リファレンス, Draw2v(スケッチをインプットにしての指示)、マルチショット(カットごとではなく複数カットを一気に作成させる)など

  • プロンプトに過不足はないか?(撮影効果まで詳細に入れたほうが良いときもあれば、逆に入れすぎで重要なプロンプトが通っていないことも)

Sora2では漫画をインプットにしてアニメをつくることもできるように

このあたりは最新の情報、モデルのバージョンアップで大げさでなく1週間単位で最適解が変わります。なのでAI作監は常に各ツールの使いごことをハンズオンで確認しておく必要があるでしょう。

アクションならHailuo。というのが1か月前でしたが今はViduも強いです。

手を動かすオペレーターがいれば、彼ら彼女らに具体的な修正の仕方、例えば「動きがカクカクしてるからViduでケレン味出るような感じにしようか。プロンプトで”手持ちカメラ”いれるの忘れないでね。」「ここは細かいカットをサクサク入れてきたいからSeedanceでマルチショットにしようか」「ちょっと複雑だからDraw2Videoにしよう」という風な指示が必要です


AI作監という新たな役割

このすべてを既存の作監が担うのは難しいです。線画だけではなく動画、色、撮影などの知識も必要ですし、何より演出意図に沿っているかどうかという非常に難しい問いに対して答えられなければいけません。



同時に、既存の作監の方の持つ「目」も持ち合わせなければなりません。「ここはアクション合わせできていないよね」、とか「位置関係おかしくない?」とか「ミサイルこういう風に飛ばないでしょ」というようなアニメーションとして違和感なく成立させるための鑑識眼が必要です。

さらに、それを技術的にどう解決できるのか、という知識や経験も必要です。

CGにCG作監がいるように、AIにもAI作監が必要になります。ただし、向かうべき方向は一緒で「演出意図の伝わるアニメーションを完成させる」という点では変わりません。

よく「アニメの仕事がなくなるのでは?」という論調がありますが、僕はこれは100%ないと思います。多くのアニメーターの仕事がより作画監督寄りになっていく必要があるからです。

これは一般人には難しいです。なぜならば、一番養うのに時間と経験の必要な鑑識眼を持っていないからです。やはり手で描いている人がもっとも強い。

アニメの鑑識眼がないとどうなるか

自分の例で恐縮ですが、先日こういうポストをしたらめちゃくちゃ炎上しました。

僕としてはAIアニメにとっての「不可能」の代名詞である板野サーカスにSora2がどこまで使えるのか試したかっただけなんですが、見た人には「どうだ!板野サーカスAIでできたぞ!」という投稿に見えたようで、めちゃくちゃ言われました

ありとあらゆる指摘で埋まるタイムライン

しかし、これこそがAI作監が必要で、しかもアニメーターの方が目指すべきポイントである理由です。結局はアニメーションを見る目が必要なのです。技術的な話だけではなく。


AIの導入には思想の転換が迫られる

AIプロジェクトでは、少なくともAIによる作画に関しては絵コンテを“ゴール”ではなく“仮説”として扱う、という思想の転換が必要になります。
重要なのは「演出意図が伝わるかどうか」であって、「絵コンテに一致しているか」では必ずしもありません。(そうじゃないと完成しません)

その生成のスピードのおかげで、生成してみて、そこから絵コンテを再構築するという逆転のワークフローもありえます。

これは従来の監督・作監にとって受け入れづらい発想だと思います。しかし他の分野(プログラミング・デザインなど)と同じでAIでは「大量に生成して良いものをキュレーションする」方が結果的に品質が上がります。


AI作監はキュレーターである

AIアニメは今後間違いなく議論の的になっていくと思われます。そしてほぼ確実に「うちも導入したほうが良いのか?」という問いに答えなければなりません。

どんなツールでもそうですが、導入すれば解決する、ということはほとんどなく、多くの場合新しい問題を生み出すだけということも多いでしょう。AIに関しては現場の反感も大きいので、少しでもAIが使えないことが露呈すると「ほら、言ったじゃん。手で描いたほうがよっぽど早いよ」となります。

手描きアニメは今後も残ると思いますし、僕も大好きなアニメーターの方々の技が残ってほしいと思っています。だからこそ作画枚数が欲しいところに潤沢に割く、というようなことができるようにAIでできるところはAIに、という風にも思っています。

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最後に、「じゃあどんなモデルがあるの?何から触ったらいいの?」という方もいると思うので、こちらのリンクを張っておきます。


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