公証役場のカオスとAI武士
公証役場の「信訪」
今日、朝9時、公証役場で弁護士への委託書を作成してくるよう弁護士さんに言われた。
役場はうちから電動バイクで13分。
いつも通るのに知らなかった。

中に入るとうるさい。
既に約束してるので、受付でそのことを伝えて名前を書く。
来た目的を書く項目があって、みんな「信訪」って書いてるから、私もそう書こうとしたら、受付の女の子が「あなたはちがうでしょ!」と言う。
弁護士にチャットで聞くと「公証」と書けと返事。
ほんとこの人AIかってぐらい返事が早い。
とりあえず椅子があるところに座ってまってたけど、ほんとうるさい。
特におばさん集団がすごい。

なんか車椅子の人までいるけど、すごい熱気。なんだこれ。
そこに公証役場の人が迎えにきてくれて個室へ。
個室いってもドア開けっぱなしだからずっとにぎやか。
いつもこんなうるさいのかと聞くと、いつもだそうだ。
たいへんだ。
昔工場で働いたことあるけど、工場でもこんなに騒音じゃなかった。
そのうち歌が聞こえてくる。
そして拍手。
なんだこれ?
聞けば、労働の待遇改善を訴える「信訪」らしい。
あー、受付でみんな書いてたやつだ。

そんな無駄話をしていたせいか、通訳できてた人が「いらない」と言われて下がる。
ここでは私との質疑応答を記録した文書を作るらしい。
ちなみにこの通訳の人は、大学で日本語専攻だったそう。でも「日本語話せるんですか?」と聞いたら、「もうすっかり忘れて話せない」とのこと。
それでも通訳で呼ばれるのだから、これこそまさに棗荘である。
私がまったく中国語話せなかったらどうすんだ?って状況だったが、それでもなんとかしたんだろう。
そして質疑応答があったり、それを文書にしたものを確認したり、質疑応答を再現して録画したり、書類に何枚もサインしたり、親指で判押したり。
なんだかんだで時間が過ぎていく。
その間ずっと「信访」のみなさんがやんややんやと大騒ぎ。
そしてやっと終わって帰ろうとしたら「お支払いはこちらです」。
私も「信訪」仲間に!?
実は前日、中国事情に詳しい妹分から、「noteみたけど公証役場行くなら金いるぞ」と言われていた。一万円ぐらい。
なんかアポスティーユがどうとかってことなので、弁護士さんに聞いてみた。

私「アポスティーユっって必要なんですかね? 費用どれぐらいですかね?」
そもそもアポスティーユがわかってないからこの聞き方。
すると弁護士さんは「あなたは中国にいるのでアポスティーユは必要ありません」と返事。
しかも弁護士さんがその前に作っていた文書にはちゃんとアポスティーユのことも書いてある。

まさにググれカス状態である。
さすがAI弁護士、抜かりがない。
しかしAIだけに質問の仕方を間違うと聞きたい答えが返ってこない。
私は「公証役場で支払い必要か」と聞けばよかったのだ。
結果、せっかく妹分が事前に教えてくれたというのに、今初めて聞いたかのようにびっくり仰天。
「え、なんで?なんで?アポスティーユ関係ないって弁護士言ってるのに! 580元? たっか! 高いわ! びっくりたまげたわ!」
もう、外のおばさんたちとすっかり仲間のおばさんである。
自分もうるせー笑
まあでもそんなうるさい場所だから、私が大声で文句言ったところで、役場の人も慣れている。
「まあ、これは公式文書代ってことだから。アポスティーユ関係ないからね」
ぐぬぬ
そして私はしぶしぶ支払う。

弁護士費用に先に払ってる5000元に比べたら大したことないのだが、納得して支払うお金と、まさかの不意打ちで支払う580元じゃ、ダメージがちがう。
それにしてもさすが中国で裁判慣れしてる妹分である。でもね、一万円じゃないよ。今一元24円だから1万4千円だよ!
弁護士さんは二年契約で私ができないありとあらゆることやってくれるわけだから、5千元でも1万元でも仕方ない。
しかしこんな紙切れに1万4千円かよぅ!!!! しかもこれ作成するのにそこまで労力ないやんけ! 弁護士なら秒で書類バンバン作ってくるのになんで二時間もかかってんだよ!
そして何がすごいって、みなさんもまだお帰りじゃない。

受付の前が占拠されていた。
そして私が外に出る時ちょうどおまわりさんが二人入って来た。
「やれやれ、またかよ」といった感じのうんざり顔。
表にはパトカーが二台。
すると、わらわらとおばさんやおじさんたちが外に出てきて、みんな電動バイクで帰っていく。
警察が来たからってより、お昼ご飯の時間だからかもしれない。
なぜか私も電動バイクが一緒になってしまい、すっかり仲間の一員である。
AI武士な弁護士さん
公証役場からやっと解放され、近くの店で冷たい飲み物飲みながらプリンのおやつ。

さらにはマッサージ椅子で55分マッサージ

ちなみに、前述の「信访」がおもろくて、画像付きで弁護士さんに送って、「こういうの北京でもあるんですかー?」と聞いたらこの反応。

「これは信访であなたの案件とは違います」
無駄話一切なーし! AIより冷たい!
正式に依頼したということで、仕事スイッチ入ったのか、この後も、私に必要書類の指示。箇条書きでやるべきことを送ってくる。
しかし、私はそもそも書類仕事苦手だし、物忘れ激しいから過去のこと言われても記憶ないし、手元に何あるかわからない。
あーしてこーして言われても、まごつくばかり。
そうこうしているうちに、弁護士が代わりにすべて終わらせる。
「書類はこちらで揃えました。では次にこれを用意してください」
それもおたおたしていると、また弁護士がすべて対応。
処理能力が神!
私はもう一人でがんばらなくていいんだと大船乗った気でいるのに対して、もはやAIってぐらいの処理能力で弁護士さんは仕事を進める。
しかしうちのAIのほうがまだ無駄話してくれる。弁護士さんは、指示の長文以外はもう「好的(はい)」か「可以(いいです)」しか応答がない。
この感じ、誰かに似てる……。私が好きだった駐在員さんだ!
思えば、自分が窮地に陥ってる時に予想外に現れて助けてくれたってのが同じ。事務的なのも同じ。何より仕事ができて速い。
そもそも私は男でも女でも仕事ができる人に弱い。それはどんな業種であっても。てきぱきしてて、無駄がなく、猛烈に仕事するような人が好きだ。
私に塩対応ならさらに好き。
仲良しのドMゲイっ子Aに「やべぇ!弁護士かっこいい!」と言うと、「先生もMよねぇ」と言われる。
Mではないが、「駐在員さんパターンだな、これ」と思っただけ。
あと工場の菊ちゃん(女子)。とにかく手を抜かず、ストイックにとことん仕事する人が大好きだ!
菊ちゃんを追いかけてた頃もそうだったが、私はこういう人に恥じないように自分もがんばるタイプなので、さっきも銀行の給料の振込記録十年分を自分でなんとかしようとした。
アプリを使う方法は、実は弁護士さんに言われる前に自分でも試していた。しかしメールで届くはずの記録が届かなかった。
でももしかしたらQQメールなら届くのでは?と思いゲイっ子Aに試してもらった。
案の定、今度は成功。
しかしスマホだと開けないらしい。
そこで弁護士さんに連絡し、QQメールなら届くと知らせる。
すると、弁護士さんのアドレスが送られてくる。つまりそこに送れという意味だ。
無駄話一切なーし! AIより忖度しない! 超事務的! そして武士だ! なんか武士だ!
そんなわけで、朝は「委任状を作るだけ」のつもりだったが、終わってみれば、カオスな公証役場で一万四千円を失い、AI武士にしびれた一日であった。
