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ペーパーナイフ①~骨董屋静海~

『あなたは、次の生でも私のことを探してくれますか?』

いつもよく見る夢。それはいつの時代かわからない。
しかし不思議と覚えていることは、目の前にいる君がいつもこちら側に尋ねてくる。
そして、こちらはこう答える。

『もちろん。どんな姿になろうとも、探し出して見せる』

その言葉に、君はいつもはにかんだ笑顔を見せてくれる。
私はその笑顔を両手で包み込み額を合わせあう。
夢はそこで終わり、現実へといつも引き戻される。
これほどまでに多幸感に包まれたことは、今の人生であったことはない。


ーーあなたは、次の生でも私を殺すの?ーーー

いつも夢の中で問われること。夢の中の状況はわからない。
けれども、わかっているのは目の前の人物に今刃物を向けている。
そして私はこう叫ぶ。

ーーーーお前に幸せになる権利なんてない!
いつだって、私はお前を探し出して不幸にしてやる!ーーーー

アラームによって引き戻さされる現実。寝ていたはずなのに、体には疲労感と緊張感が混ざり合っている。
一体あの夢は何なのか。どうしていつもみてしまうのか。
目の前にいる恋人が心配そうにこちらを見つめてくる。
私は何もないと伝えて微笑む。

その近くには、一つのペーパーナイフが置いてあった。


ペーパーナイフ①~骨董屋静海~


クラクションの音や人ごみから漏れ聞こえる会話が耳の中に洪水のように流れ込んでくる。人ごみの多いこの通りは観光客や修学旅行生でごったがえしている。しかし、みな一様に口をそろえて言っている単語は『暑い』だ。

京都の夏の暑さは異常だとニュースでやっていたが、まさにその通りだと思う。
じりじりと太陽がコンクリートを焼き、自分たちはまるで鉄板の上の食材になった気持ちになる。湿気も重なり余計に不快指数をアップさせる。
しっかりとした快晴の月曜日、繁華街の人ごみの中静海漸は額を伝う汗をハンカチでぬぐった。

普段ならこんな暑い日中出歩くことはない。
なぜなら暑い。昼間に出歩くなどこの真夏に出歩くことなど自殺行為になる。
漸は色々と思うことがあったが、今日は人に呼ばれたので、文句を言うのはその人の前にでもいいか。など、別なことを考えてこの暑さから逃れようとした。

繁華街の中にある雑居ビルのなかにあるカフェが待ち合わせ場所だ。
チェーン店ではなさそうだ。
漸は待ち合わせ場所が書いてあるメッセージを確認し、扉を開く。午前十一時、時間通りに着いた。

カランカラン

ドアベルが鳴る。店内にはコーヒー豆のいい匂いが店内を包んでいる。そして冷気が漸を包み汗を冷やしていく。
客は奥にいる一組のみ。その客がこちらに気づき手を降ってくる。

「店主ー!こっちだよー!」

間延びした声が店内に響く。席から立ちあがりこちらに手を振るのは男性。
緩いパーマを当てた短い髪、そしてライトブラウンの髪。そのふわふわした髪の間から除く耳たぶには黒いピアスがのぞかせる。

半袖のパーカーから伸びる白い腕。立ち上がった際に見えたカーキー色のワイドパンツ。そのポケットからは財布が落ちかけているのが見えた。
見た目とその雰囲気だけなら学生に間違われてもおかしくないその人は、漸を見つけて笑顔を見せている。

その声に反応するように、向かいに座っていた人も立ち上がり漸をみるように身体を向ける。立ち上がってこちらを見たのは女性だった。耳の下で切られている髪、顔には銀縁フレームの眼鏡が目立つ。くっきりとした目には力が宿り、緊張している様子が分かった。

漸はまじめな印象、として彼女を見つめた。席に近づきながら彼女の服装を観察した。外の暑さを気にせずにきっちりとしたグレーのパンツスタイル。ジャケットには一部の皴もない。生真面目な性格なんだろうな、そんなことを暑さで沸騰した頭の中で考えた。身体は冷房で冷えていたが、頭の熱はまだ取れない。そして、自分のことを大声で呼んだ人物を少し睨みつけ恥ずかしい思いを感じながら、呼ばれた席へと向かう。
そして開口一番漸は不機嫌を声に込めて言った。

「大声で叫ぶ癖、いい加減に直らないのか、京本」
京本、と呼ばれた男性は漸に席を譲り、隣の椅子へとスライドする。
そしてへらへらと笑いながら答えた。

「えー、だってー。店主だしいいかなーと思って。
あ、茉莉花さん。この人が僕に言っていた骨董屋の店主、静海さん。
店主、こちらが電話で話をした茉莉花さん。今回の依頼者ね」

『電話で話。あれは絶対にそんな風には言わない』

漸は数日前に突然あった電話を思い出しながら心の中で毒づいた。

②へ続く。


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